自覚症状が乏しいまま進行し、失明につながり得る緑内障。
そんな緑内障を見つけ出すAI(人工知能)が開発されている。
これは東北大学の研究チームが2025年2月に発表したもので、医療情報分野のnpj Digital Medicineに掲載された。
「眼底写真」を読影して異常を判定
正常な眼と緑内障の違いを示している。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 緑内障は初期症状が出にくく、気づいたときには視野障害が進行していることが多いため、早期発見・早期治療が重要とされている。
- 検診の眼底写真は早期発見の入口となるが、初期変化は小さく、専門医不足や読影時間の制約から見落とされる課題がある。
- 研究チームは、判断根拠を数値で示す説明可能なAI「AI-GS」を開発し、専門医の読影に近い方法で緑内障の判定精度向上を目指した。
緑内障は日本で失明原因第一位の目の病気で、発症する人が年々増えているとされる。一方で、初期の段階では症状が出にくいために、症状が出始めて気づいたときには視野障害が進んでいることも少なくない。緑内障による視野障害は基本的に回復できないため、早期発見と早期治療が進行を抑えるためには重要になる。
その入口となるのが検診や健康診断で撮影される眼底写真となる。
問題となるのは、初期段階の緑内障では変化が小さく、緑内障の診療に習熟した眼科医でなければ見落とす可能性があること。検診では大量の画像を限られた時間で読影せざるを得ないため、眼科医が不足する地域では専門医の判定自体が受けにくい。
今回、研究チームは緑内障を見つけ出すAI「AI-GS」を開発した。この特徴は、従来のAIで課題とされてきた「ブラックボックス性」を一定程度軽減している点にある。判断に用いた要素ごとの評価結果を数値として示すことで、AIの判断根拠を理解しやすくした設計としている。
具体的に、AI-GSでは、「視神経乳頭出血」「網膜神経線維層欠損」「視神経乳頭陥凹拡大」といった緑内障に特徴的な状態をそれぞれ専用のAIで判定し、その結果を統合して最終的な緑内障の有無を判断している。これは専門医の読影のプロセスに近いアプローチで、精度と説明可能なプロセスを両立する仕組みに作り上げた。
※「視神経乳頭出血」は、視神経乳頭(視神経が眼球から出る部分)周囲に見られる小さな出血。「網膜神経線維層欠損」は、網膜の神経線維層が局所的に薄くなったり欠損した状態。神経線維の障害を反映している。「視神経乳頭陥凹拡大」は、視神経乳頭の中央部にある「陥凹」が拡大した状態。視神経線維の減少により生じる
「根拠が見えるAI」実用化を目指す
目に違和感や症状を感じている様子。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- AI-GSは約8000枚の眼底写真で検証され、感度93.52%、特異度95%と高い性能を示し、特に初期緑内障の検出に優れていた。
- 判定結果に加え、特徴ごとの判断確信度を数値で示すことで、読影医がAIの判断根拠を理解しやすい設計となっている。
- 軽量モデルで高速処理が可能なため、専門医が不足する地域や大規模検診において、緑内障スクリーニングの質向上に貢献する可能性がある。
AI-GSを8000枚の眼底写真を用いて検証したところ、見逃しを減らす感度93.52%、健康な人を誤って陽性としない特異度95%となった。
特に初期段階の緑内障の検出性能が優れていた。
もう一つの特徴は、AIの出力が「判定」だけで終わらず、特徴的な状態からの判断の確信度などを数値として示したこと。読影医はAIがどのような根拠で判断したのかを把握しやすくなる。
さらにモデルは軽量で、画像1枚あたり1秒未満で結果を出力できる。携帯型デバイスへの搭載も視野に入れ、眼科専門医が限られる地域や大規模な眼底写真検診で、専門医の読影を支援する形で、スクリーニングの質を底上げする足場になる可能性がある。
緑内障は早期発見の価値が大きい病気であり、AIの役割は期待される。