英国の国民保健サービス(NHS)イングランドは2025年6月、ヒトパピローマウイルス(HPV)検査の科学的エビデンスに基づき、子宮頸がん検診をより個別化する新たな取り組みを公表している。
検診間隔延長の根拠とは
検査用の綿棒を用いた医療検査の説明を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
子宮頸がんのほぼすべてはHPV感染が原因とされる。
英国のイングランドでは2019年12月以降、すべての子宮頸がん検診で高リスクHPV検査が実施され、従来の細胞診(いわゆるスメア検査)よりも高い精度が確認されている。
研究によれば、HPV陰性の場合、今後10年間に子宮頸がんを発症する可能性は極めて低い。キングス・カレッジ・ロンドンの研究チームが主導し、2022年にBMJに掲載された英国でのパイロット研究でも、5年ごとの検診は3年ごとと同等の安全性を持ち、がんの発見数も変わらないことが示されている。
こうした科学的知見を受け、リスクに応じて検診間隔を調整する「個別化検診」が妥当と判断された。
イングランドでは2025年7月以降、HPV陰性と判定された25~49歳の女性および子宮頸部を有する人を対象に、検診間隔を従来の3年から5年へと延長した。リスクの低い場合に不要な受診を減らすことが、身体的、心理的負担の軽減や医療資源の有効活用につながると考えられている。
この変更は、英国国家スクリーニング委員会(UKNSC)の勧告に基づくもので、既に50~64歳では同様の運用が行われている。
HPV陽性者や最近の感染歴がある人については、従来通り短い間隔での検診や、必要に応じた精密検査(コルポスコピー)が行われる。
がん予防の次の段階へ
スマートフォンのアプリ通知を確認している様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
NHSは、検診の案内やリマインダーをNHSアプリで送信する「ピン・アンド・ブック(ping and book)」サービスを本格導入する見込み。
NHSアプリを通じたデジタル通知は、忙しい生活の中でも検診予約をしやすくし、受診率向上につながるとされる。実際、利用者調査では、アプリから予約できることが受診意欲を高めるとの声も多い。
英国では、イングランドのほか、スコットランド、ウェールズ、北部アイルランドのそれぞれで公的な保険制度が運営されている。今回はイングランドでの決定になるが、これはスコットランドやウェールズと足並みをそろえた形となっている。HPVワクチン普及と相まって、子宮頸がん撲滅に向けた動きとなる。
もっとも、がん検診とは別に、異変を感じたときには医療機関を受診することは大切になる。英国の専門家は、検診間隔が延びても、異変を感じた場合には医療機関に相談する重要性を強調した。