研究

ビタミンDの「抗がん効果」はビタミンAが鍵を握る 世界初の発見、東京慈恵会医科大学の研究が明らかに

濃度次第では再発や死亡リスク69%減少

手のひらに複数の錠剤やカプセルを載せ、水を手にして服用しようとしている様子。
サプリメントを服用。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 ビタミンのサプリメントを定期的に飲んでいる人は少なくないだろうが、その効果の個人差の背景に別のビタミンが影響する可能性がある。

 東京慈恵会医科大学の研究グループは、食道から直腸までの消化器がんの患者を対象とした研究に基づいて、ビタミンDサプリメントによる再発および死亡抑制効果(抗がん効果)が、血液中のビタミンA濃度によって大きく左右されることを世界で初めて明らかにした。

ビタミンDとビタミンAは共に働く

医療従事者が腕から血液を採取している様子。
医療機関で血液検査のための採血を行っている様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • ビタミンDが細胞内で機能するには、ビタミンA受容体(RXR)と結合してヘテロ二量体を形成する必要があり、ビタミンAの存在が重要と考えられた。
  • 研究グループは、消化器がん患者を対象にビタミンDを投与した「AMATERASU試験」のデータを用い、ビタミンDの効果とビタミンAの影響を解析した。
  • これまでの解析では全体で有意差はなかったが、血清ビタミンDが中等度の群で予後改善が認められており、今回の解析は血清ビタミンA濃度の観点からその背景を検証した。

 従来、ビタミンDはがんになった人の予後改善につながることが示されてきたが、不明点もあった。というのも、臨床試験ではビタミンDの効果は、その試験によって結果がばらついていたからだ。

※予後とは、病気になった場合のその後の経過のこと。今回の場合はがんの再発や死亡の状況を指している。

 慈恵医大の研究グループはその背景に、ビタミンDが体内で働くメカニズムが関係していると考えた。

 そこで着目されたのがビタミンAの存在だ。なぜならば、ビタミンDが細胞内で機能するには、ビタミンD受容体(VDR)がビタミンA受容体(RXR)と結合し、「ヘテロ二量体」を形成する必要があるとされるためだ。このためビタミンDが十分に働くには、パートナーとなるビタミンAが欠かせないという仮説が立つ。

 そこで研究グループは、2010年から2018年に実施された「AMATERASU試験」のデータに基づいて、ビタミンDの効果と、その背景にあるビタミンAの影響について解析した。

 なお、AMATERASU試験は、手術を受けたステージ1~3の消化器がん患者417人(平均66歳)を、ビタミンD3(1日2000IU)を投与されたグループと、ビタミンDの含まれないプラセボ(偽薬)のグループにランダムに割り付け、再発や死亡を長期追跡した研究だ。

 主な解析結果は2019年に『JAMA』誌に掲載され、全体では有意差は認めなかったものの、血清ビタミンD濃度が中等度(20~40ng/mL)のグループで有意な予後改善の効果が示された。

 今回の解析は、さらなる詳しい効果の背景にある理由を血清ビタミンA濃度の観点から検証したものとなる。

ビタミンA次第でリスク69%減

消化管や肝臓などの臓器を可視化した人体の消化器系イラスト。
消化器系の構造を示した人体イメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 血清ビタミンAが中~高値の患者では、ビタミンDサプリメント摂取により再発・死亡リスクが69%減少した。
  • 一方でビタミンAが極端に低値または高値の場合はビタミンDの抗がん効果が十分に発揮されず、血中ビタミンのバランスが重要であることが示唆された。
  • 本研究成果は『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』に掲載され、現在は対象がん種を拡大したAMATERASU試験の第二弾も進行中である。

 研究の結果、血清ビタミンA濃度が「中~高値」の患者では、ビタミンDサプリメントの摂取により再発および死亡リスクが69%減少することが確認された。

 一方で、ビタミンA濃度が極端に低値あるいは高値の場合には、ビタミンDの抗がん効果が十分に発揮されない可能性が示唆された。

 これは、ビタミンD単独の補給ではなく、血中ビタミンのバランスが重要であることを示す結果といえる。

 慈恵医大附属病院を中心に、消化器がんに加え頭頸部がん、肺がん、乳がん、肝臓がん、膵臓がん患者を対象としたAMATERASU試験の第二弾が進行中だという。

 今回の研究報告ではビタミンAが低い場合だけではなく、高すぎる場合にもビタミンDの効果は不十分となる可能性がある。このためビタミンは多ければ多いほどよいわけではないと考えられる。今後の研究で、ビタミンの適度なバランスがより詳しく理解できることが期待される。

 今回の成果は米国がん学会(AACR)の公式誌『Cancer Epidemiology, Biomarkers & Prevention』に掲載された。

参考文献

ビタミンDによるがんの抑制効果に「ビタミンA」が関与 ~適度な濃度で消化器がんの再発・死亡リスクが69%減少~(東京慈恵会医科大学)
https://www.jikei.ac.jp/press/detail/?id=42684

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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