歯科健診を受けない後期高齢者、死亡リスクが約1.5倍に
大阪府94万人データが示す口腔ケアと健康寿命の関連、大阪公立大学と大阪大学の研究グループが報告

75歳以上を対象に2018年度から始まった「後期高齢者歯科健康診査事業(歯科健診)」について、大規模データからその意義を裏づける結果が報告されている。
大阪公立大学と、大阪大学の共同研究グループが、大阪府後期高齢者医療保険の加入者約94.7万人のデータを解析し、その結果を明らかにした。
歯科健診も歯科受診もないグループは、歯科健診のみ受けたグループより死亡リスクが約1.5倍高かった。
世界的に例のない「後期高齢者の公的歯科健診」の効果は?

- 口腔の健康は全身の健康と関係が深く、WHOも高齢者にとって重要な要素と位置づけている。
- 日本では2018年度から75歳以上を対象に公的な歯科健診を導入したが、同様の制度は世界的にも珍しく、有益性を示す十分な科学的根拠が課題だった。
- 大阪の「OHSAKA study」では約94.7万人を対象に、歯科健診・歯科受診の有無で4グループに分け、医療・介護データを用いて死亡リスクとの関連を背景要因を調整して検証した。
研究グループによれば、口腔の健康状態が全身の健康と結びつくことは広く知られている。世界保健機関(WHO)も高齢者にとって口腔の健康が重要な要素であると位置づけている。
冒頭の通り、日本では2018年度から健康寿命の延伸を目指し、75歳以上の後期高齢者を対象に歯科健診が導入されたが、高齢者に対する公的歯科健診は世界的にも例が少ない。
そうした中で、健診としてどれほど有益かという問いに十分な科学的な根拠(エビデンス)がそろっていなかった。
大阪での研究は、「OHSAKA study」の枠組みを用い、大阪府後期高齢者医療保険に加入する75歳以上の約94.7万人を対象として、歯科健診結果と医療・介護レセプト(保険請求データ)から、歯科健診が死亡リスクとどう関係するのかを検証した。
解析では、2017年10月~2019年3月に継続して大阪府後期高齢者医療保険に加入していた人を、①歯科健診あり・歯科受診あり、②歯科健診あり・歯科受診なし、③歯科健診なし・歯科受診あり、④歯科健診なし・歯科受診なしの4グループに分類し、年齢や基礎疾患などの背景を調整した上で解析した。
歯科健診は健康寿命と関わる

- 歯科健診のみ受けた群(②)と比べ、健診も受診もない群(④)は死亡リスクが男性1.45倍、女性1.52倍と高かった。
- 歯科健診・歯科受診など口腔ケアにつながる接点がない状態が、より高い死亡リスクと関連することが示唆された。
- 因果関係は断定できないが、健診が高齢者を医療につなぐきっかけになり得る可能性が示された。
結果、歯科健診を受けたが歯科受診はない②のグループと比べて、歯科健診も歯科受診もない④のグループは、死亡リスクが男性で1.45倍、女性で1.52倍となった。
少なくとも、歯科健診や歯科受診といった口腔ケアにつながる接点を持たない状態が、より高い死亡リスクと関連していることが示された。
研究グループは、その背景として、定期的な歯科メンテナンスが歯の喪失予防や口腔衛生の維持に資する可能性に加え、健診に足を運ぶ人ほど健康意識が高く、死亡リスクを下げる行動を取りやすい可能性も挙げている。
観察研究である以上、歯科健診が死亡を直接減らす「因果関係」を断定することはできないものの、歯科健診をきっかけに健康リスクを抱える高齢者を医療につなぐ役割に期待を持たせる結果となった。
成果は国際誌「Journal of Gerontology: Medical Sciences (The Journal of Gerontology series A)」2025年6月10日号に掲載された研究成果となる。
参考文献
歯科健診未受診の高齢者で死亡リスクが約1.5倍に 歯科健診が“命を守る”可能性、大阪府94万人データから判明(大阪公立大学)
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-17795.html
Otsuki N, Mameno T, Kanie Y, Shinzawa M, Ikebe K, Yamamoto R. Dental Checkups and All-cause Mortality in Older Adults Aged ≥75 Years: A Large Retrospective Cohort Study. J Gerontol A Biol Sci Med Sci. 2025 Jun 10;80(7):glaf100. doi: 10.1093/gerona/glaf100. PMID: 40329572.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40329572/
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。





