研究

禁煙は「本数を減らす」だけでは不十分、完全な禁煙こそ心血管リスク低減の最善策

米ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームが大規模研究で示す

医師が聴診器を当てて、患者の胸部の音を確認している診察の様子。
医師による聴診で心音や呼吸音を確認する診察の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 たばこをどのようにやめると良いのか?

 米国ジョンズ・ホプキンス大学医学部の研究グループが2025年11月、喫煙量を減らすだけでは心臓や血管の病気(心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患)のリスクは十分に低下せず、完全な禁煙こそが健康を守る最も有効な方法であると報告した。

少量喫煙でも残る心血管リスク、大規模データで検証

白い背景の上に立てられた、吸い殻になった1本のたばこ。
吸い殻になったたばこ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 喫煙が心血管疾患リスクを高めることは知られていたが、喫煙本数など量的影響は十分に解明されていなかった。
  • 研究では、喫煙の量・強度・禁煙後の期間と、心血管疾患や死亡との関連を詳細に検証した。
  • 22の国際的コホート研究、約32万人を最大20年間追跡し、死亡や心血管疾患のデータを多因子調整して再解析した。

 研究チームによれば、従来の研究では、喫煙が心血管疾患のリスクを高めることは知られていたものの、喫煙の本数がどれくらい影響を与えているかについては十分に分かっていなかったという。

 研究では、喫煙の「量」「強度」「禁煙後の期間」と心血管疾患や死亡との関係が詳細に検証された。

 研究グループは、22のコホート研究の国際的なデータを束ねて再解析した。対象となったのは約32万人の成人で、最大約20年間の追跡データとなる。コホート調査は将来に向けて集団を追跡調査する研究だ。

 このデータに基づいて、12万5千件を超える死亡と5万4千件の心血管疾患の情報が得られた。年齢、性別、人種、教育歴に加え、BMIのほか、糖尿病などの心血管リスク因子、飲酒習慣などを調整した統計解析が行われた。

完全禁煙と禁煙期間の長さが健康改善の鍵

両手でたばこを折り、禁煙を決意する様子を表したイメージ。
たばこを折って禁煙を決意する。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 1日2~5本程度の少量喫煙でも、心血管疾患や全死亡のリスクが有意に高まることが示された。
  • 禁煙した人では、禁煙後の期間が長くなるほど心血管疾患や死亡リスクが低下する傾向が確認された。
  • 自己申告や電子たばこの未評価といった限界はあるものの、少量喫煙でも健康への悪影響があることを示す重要な研究成果とされた。

 解析の結果、1日に2~5本しか吸わない人でも、心血管疾患や全死亡(原因を問わない)のリスクは有意に高いことが示された。

 具体的には心房細動のリスクは1.26倍、心不全は1.57倍、心血管疾患による死亡は1.57倍、全死亡のリスクは1.60倍。

 喫煙数が多ければさらにリスクは高まった。

 一方で、完全に禁煙した人では、禁煙後の期間が長くなるほどリスクが低下する傾向が認められた。

 なお研究では喫煙状況がベースライン時の自己申告に限られている点や、電子タバコのデータがない点などの限界も指摘している。

 ただ、病気を防ぐ意味で、数本程度のたばこでも悪影響があると示されたことは大きい。たばこをやめるきっかけとしてこのような研究は参考になるだろう。

 研究は米国立心肺血液研究所(NHLBI)などの支援を受けて行われ、2025年11月18日付で国際学術誌「PLOS Medicine」に掲載された。

参考文献

Study Shows Quitting Smoking Completely Is Best Way to Protect Your Health(Johns Hopkins Medicine)
https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/2025/12/study-shows-quitting-smoking-completely-is-best-way-to-protect-your-health

Tasdighi E, Yao Z, Dardari ZA, Jha KK, Osuji N, Rajan T, Boakye E, Matsushita K, Simonsick EM, Lima JAC, Lloyd-Jones DM, Cohen DL, Appel LJ, Khera A, Hall ME, Rodriguez CJ, Judd S, Cole SA, Ramachandran VS, Benjamin EJ, Lotufo PA, Bittencourt MS, El Khoudary SR, Thurston RC, Derby CA, Psaty BM, Eaton CB, LaMonte MJ, Cawthon PM, Orwoll ES, Bhatnagar A, DeFilippis AP, Blaha MJ. Association between cigarette smoking status, intensity, and cessation duration with long-term incidence of nine cardiovascular and mortality outcomes: The Cross-Cohort Collaboration (CCC). PLoS Med. 2025 Nov 18;22(11):e1004561. doi: 10.1371/journal.pmed.1004561. PMID: 41252354; PMCID: PMC12626310.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41252354/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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