国立研究開発法人国立がん研究センターは2025年11月、2012年から2015年の4年間に診断されたがん患者の5年生存率をまとめた報告書を公表した。
純生存率で全国と地域の実態を可視化
今回の報告では、生存率の推定方法として「純生存率」を採用した。これは、がんの死亡率に与える影響をより厳密に計算できる方法となる。
※がん患者は、喫煙率が高かったり、生活習慣病が多かったりする傾向があり、がん以外の原因で亡くなるケースも少なくない。一方、一般人の中にもがん患者は含まれているため、がん患者の生存率と一般人の生存率をそのまま比べることは難しいとされている。その結果、純粋に「がんではない人」と比べた場合よりも、がん患者の生存率が高めに計算される可能性がある。こうした点を踏まえ、がんに限った影響をより適切に調べる方法として、「純生存率」の考え方が考案された。
部位別に5年純生存率を見ると、AYA(Adolescent & Young Adult、思春期および若年成人)・成人(15歳以上、男女計)では、前立腺がん94.3%、女性乳がん88.7%と高かった。一方で、膵臓がんは10%台にとどまった。
男性のがんにおける部位別5年純生存率を示した図。(出典:国立がん研究センター)
女性のがんにおける部位別5年純生存率を示した図。(出典:国立がん研究センター)
男性では前立腺94.3%から膵臓10.7%まで、女性では甲状腺92.7%から膵臓10.2%までと、がん種による差は極めて大きい。
また、限局で診断された場合の生存率は、胃がん92.4%、大腸がん92.3%、肺がん77.8%と高水準であるのに対し、遠隔転移がある場合には多くのがんで一桁台から10%台にまで大きく低下しており、早期診断の重要性が改めて示された。
※限局は、がんが発生した臓器の中にとどまり、他の臓器や遠くには広がっていない段階。
30年で多くのがんは改善、課題残る部位も
1993年から2015年までの約30年間の推移をみると、多くのがん種で生存率は着実に向上してきた。
男性では前立腺がんや多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、女性では悪性リンパ腫、肺がん、白血病などで大きな改善が認められた。治療法の進歩や早期診断率の向上、医療アクセスの改善が背景にあると考えられる。
一方で、膵臓がんや胆のう・胆管がんは長期的にも大きな改善が見られず、依然として生存率が低い水準にとどまっている。
また、膀胱がんでは男女ともに生存率の低下がみられ、女性では子宮頸がんでもわずかながら低下が確認された。
今回の報告は、2016年から始まった全国がん登録に基づく生存率集計に先立つ形で、地域がん登録データを用いて日本のがん生存率の全体像と課題を明らかにしたもの。今後、全国がん登録データによるより網羅的な分析が行われる予定となる。
このような生存率の情報は、がんの対策をどのように強化していくのか検討する上での基礎になる。
※地域がん登録は1951年に宮城県で開始され、2012年に全47都道府県で実施されるに至った。2013年に成立したがん登録推進法の施行に基づき、2016年からは地域がん登録から全国がん登録に移行された。今回の国立がん研究センターの集計は、厚生労働科学研究費補助金による研究の一環で、全国44地域、約254万7000症例の地域がん登録データを用いている。