英国で、便中免疫化学検査(FIT)の導入が進んだことにより、大腸がんの不要な精密検査が減少していることが示された。
英国の医療ガイドラインを担うNICE(National Institute for Health and Care Excellence、英国国立医療技術評価機構)が2026年2月に分析結果を発表した。
FITは、日本の一般向けのがん検診で普及しているが、日常診療でも、症状のある人に大腸内視鏡検査が必要かどうかを見極める手段として注目されている。
英国で症状のある人に「FIT」
腹部を押さえながら医師の診察を受ける女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
英国では、症状のある人に対し、自宅で採取した便を用いるFITで大腸内視鏡検査の必要性を判断する仕組みが広がっている。
NICEは2023年に、症状のある患者の評価にFITを用いる指針を示し、導入を後押しした。
緊急紹介にFIT結果が添付される割合は上昇し、現場での活用が着実に進んでいる。
大腸がんは英国で死亡数の多いがんの一つであり、診断の遅れが課題となっていた。
こうした中で注目されているのが、便に含まれる微量な血液を検出するFIT。
日本では一般向けの大腸がん検診で便検査が行われているが、これにもFITが用いられている。英国では、かかりつけ医などの一次医療を受診した症状のある人に対し、医療機関がFITの実施を促し、患者が自宅で便を採取して提出する。その結果を基に、緊急の大腸内視鏡検査が必要かどうかを判断する仕組みが広がっている。
NICEは2023年、症状のある患者を評価する目的でFITを用いる指針を打ち出し、現場での導入を後押しした。
NICEの公表によれば、大腸がんが疑われて緊急に専門医療機関へ紹介されるケースのうち、FITの結果が添付される割合は、2023年6月の6割未満から2025年6月には約8割まで上昇した。南西イングランドの研究でも、2023年には紹介の87.0%にFIT結果が添付されていた。
今回の研究では、2019年、2022年、2023年の各1カ月分について、紹介を受けた二次医療機関のデータを比較し、紹介の理由、検査に至る経路、待機日数、がんの検出率などをカルテなどの調査により評価した。
不要な紹介を減らしつつ、がん発見数を保つ
医療スタッフが内視鏡機器を手に持ち操作している様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
FIT導入後は、必要な患者を大腸内視鏡検査へ直接進める運用が増え、不要な緊急紹介は減少した。
2024年度の緊急紹介件数は、パンデミック前の傾向より22%少ない約14万件減となった。
紹介数や検査数を抑えても、がんの発見数はおおむね保たれ、診断までの待機改善にもつながった。
その結果、FITの導入後は、便検査の結果を基に精密検査の必要性を判断し、必要な場合には、紹介先の病院でいったん外来診察を受けることなく、大腸内視鏡検査などへ直接進む「ダイレクト・トゥ・テスト」が増加した。
一方で、緊急の精密検査までは必要ないと判断されるケースも増えた。
NICEのデータによると、英国イングランドでは、大腸がんが疑われて緊急に専門医療機関へ紹介される件数が、2024年度にはパンデミック前の傾向より22%少なく、件数にして約14万件減った。
それにもかかわらず、がんの発見数は大きく減少しておらず、FITによって不要な精密検査を減らしながら、緊急対応が必要な患者をより的確に選べていることが示された。
南西イングランドの研究でも、紹介数や内視鏡検査数を絞っても、がんの発見数はおおむね保たれていた。診断までの待ち時間も、パンデミック後の悪化から改善した。
NHSの「28日以内にがんかどうかを判断する」という達成状況も改善した。FITの導入後、この達成率は上昇し、他のがん以上の改善が見られた。
研究では、FITで効率的な振り分けが可能になった一方、機械的に対象を絞り込みすぎることには注意が必要だとしている。ガイドラインから外れる人の中にも、一定数のがんが見つかっているためだ。FITの意義は、検査を単に減らすことではなく、限られた医療資源を、より必要な人に振り向ける点にある。
便検査が大腸がん診療の質と効率の両立に役立つことを、改めて示した研究といえる。