研究

早期膵臓がん、血液で見つける新手法 4項目で高精度判別

米ペンシルベニア大学などが新たな検査アプローチを報告

血液の入った試験管を確認する研究者
血液の入った試験管を確認する研究者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 早期膵臓がんの手掛かりを血液から見つけ出すための新たな手法が示された。

 米国ペンシルベニア大学ペレルマン医学部とメイヨー・クリニックの研究グループが、2026年1月に研究成果を発表した。

新しいがんの指標を見つける

腕から血液を採取する採血の様子
腕から血液を採取する採血の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 膵管腺がんは進行してから見つかることが多く、早期発見法の確立が課題となっている。
  • 早い段階で診断して治療できれば、生存率の改善が期待されている。
  • 研究グループは保存血液検体を使い、早期膵臓がんで増える新たなバイオマーカー候補を探索した。

 「膵管腺がん」は、膵臓がんの中でも特に予後不良なタイプとされる。診断された時には既に進行していることが多く、5年生存率はおよそ10人に1人にとどまる。

 一方で、より早い段階で発見して治療できれば、生存率の改善が見込まれると考えられている。それにもかかわらず、現時点では早期発見のための確立したスクリーニング法は存在しない。

 こうした課題に対し、研究グループは血液中の「バイオマーカー」に着目した。これは、血液中に含まれる成分のうち、がんの可能性を示す指標となるものだ。

 解析では、膵臓がん患者と、がんではないが類似した背景を持つ患者の保存血液検体を用い、早期膵臓がん患者の血液中で上昇する新たなタンパク質を、段階的にバイオマーカー候補として探索した。

早期のケースでも高い識別性能

手袋をした手で血液サンプルの試験管を持つ様子
手袋をした手で血液サンプルの試験管を持つ様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 既存のCA19-9、THBS2に加え、ANPEPとPIGRという新たなタンパク質が見いだされた。
  • 4つの血液マーカーを組み合わせることで、全病期で約92%、早期ステージI/IIでも約88%を識別した。
  • 膵炎などの良性疾患とも区別できる可能性が示され、高リスク群を対象とした実用化研究が期待される。

 結果として、既に知られている膵臓がんのバイオマーカーである「CA19-9」と「THBS2」のほか、「ANPEP」と「PIGR」というタンパク質を見いだした。

 CA19-9は膵炎や胆管閉塞など、がんとは異なる良性疾患でも高値となることがあり、遺伝的要因によって産生されない人もいるなど、単独でのスクリーニングには限界があった。これに対し、新たなバイオマーカーを加えることで、既存の指標だけでは取りこぼしていたがんを検出できる可能性が示された。

 4つの血液マーカーを組み合わせたこの検査は、膵管腺がんの有無を高い精度で判別した。全ての病期を通じて、がん患者と非がん患者を約92%の確率で見分け、がんではない人を誤って陽性と判定する割合は5%にとどまった。さらに、より重要な早期のステージI/IIでも、約88%の患者を捉えた。

 また、重要なのは、健康な人との区別だけでなく、膵炎のような非がん性の膵疾患を持つ人とも識別できた点だ。膵臓がんの検査では、良性疾患との判別が実用化における大きな壁となっており、この結果は臨床応用を考えるうえで意味が大きい。

 今後は、症状が出る前の人々を対象にしたより大規模な検証が行われる見通しだ。膵臓がんの早期発見に向けた有望な手段として注目される。

 研究成果は2026年1月29日付で「Clinical Cancer Research」に掲載された。

参考文献

Researchers identify new blood markers that may detect early pancreatic cancer(National Institutes of Health)
https://www.nih.gov/news-events/news-releases/researchers-identify-new-blood-markers-may-detect-early-pancreatic-cancer

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

胸を押さえ、心臓付近の痛みを示す男性。
心筋梗塞や脳卒中などのリスク評価では、通常のリスク計算に加え、対象を選んで冠動脈カルシウム検査を使うことの有用性が検討された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

心臓CTの「カルシウム検査」、全員には必要ない可能性

心臓の血管にたまったカルシウムをCTで調べる「冠動脈カルシウム検査」は、将来の心筋梗塞や脳卒中のリスクを見極める方法として利用が広がっている。しかし、すべて…

第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会の大会テーマと熊本城のイラストが表示された会場スクリーン。
「人生のそばに予防医療を」をテーマに開かれた第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会。(写真:編集部)

がん検診、職場と自治体の情報を一体把握へ 厚労省が第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会で最新動向を説明

がん検診を「受けてもらう」だけでなく、職場と自治体に分かれた検診情報を連携させ、科学的根拠が蓄積してきた新しい検査を、自治体で実際に運用できるか検証する──…

日本人間ドック・予防医療学会学術大会で、健診から肝疾患を拾い上げる方法について議論する肝臓関連シンポジウムの様子。
第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会で開かれた、日本肝臓学会との共催シンポジウム。健診を入口に、MASLDやアルコール関連肝疾患をどう見つけるかが議論された。(写真:編集部)

肝疾患の拾い上げ、健診は「ALT30超え」を入口に次の行動へ

健診で「肝機能の数値が少し高い」と言われても、そのままにしている人は少なくない。一方で、血液検査の数値が大きく外れていなくても、脂肪肝や肝臓の線維化が進んで…

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す