早期発見が難しい膵臓がんを、血液中に出てくる小さな粒子「細胞外小胞」から捉えようとする研究が進んでいる。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)などの研究グループは、膵臓がんを見分ける検査技術について、2025年3月にオンラインで論文発表した。
がん由来の細胞外小胞を選んで測る
検査室で試薬や検体を扱う研究者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
細胞外小胞は、細胞から放出される小さな粒子で、エクソソームもその一種に含まれる。
膵臓がんの血液検査では、血液中に混ざる多数の細胞外小胞の中から、がんに関係するものを見分けることが課題になる。
研究チームは、MUC1、EGFR、TROP2という表面タンパク質に注目し、膵臓がん由来の可能性が高い細胞外小胞を選び出そうとした。
細胞外小胞は、細胞から外へ出される小さな粒子で、エクソソームもその一種に含まれる。内部にはマイクロRNAやタンパク質などが含まれ、表面にも元の細胞を示す手がかりとなる分子が現れることがある。
PREVONOでは、これまでエクソソームを含む細胞外小胞の検査応用を取り上げてきた。膵臓がんでも、血液からがんの情報を捉えようとするとき、難しいのは血液中では、さまざまな細胞に由来する情報が混ざり合っている点だ。細胞外小胞は全身のさまざまな細胞から放出されるため、膵臓がんに関係するものだけを見つけ出す必要がある。
今回の研究が注目したのは、この「表面の目印」だ。細胞外小胞の中身を直接調べるだけでなく、表面に現れる特徴を使って、膵臓がんに由来する可能性が高い小胞を選び出そうとした。
研究チームはまず、公開されている遺伝子やタンパク質のデータを使い、膵臓がんの多くを占める「膵管腺がん」の細胞に目立って現れるタンパク質を探した。タンパク質は細胞の表面にも現れるため、細胞外小胞がどの細胞から出てきたのかを見分ける目印になり得る。
その結果、研究チームは、「MUC1」、「EGFR」、「TROP2」という3つの表面タンパク質に注目した。いずれも、細胞外小胞が膵臓がん細胞に由来するかを見分ける目印になり得る。
さらに、培養した膵臓がん細胞や患者の組織を調べ、これらのタンパク質が膵臓がんと関係していることを確認した。
血液検査として使えるかを検証
顕微鏡を用いて検体を観察する研究者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
研究では、血漿からMUC1、EGFR、TROP2を目印に対応する細胞外小胞を集め、それぞれの量を測定した。
3種類の測定結果を組み合わせた「PDAC EV Score」により、膵臓がん患者とがんではない人を見分けられる可能性が示された。
表面の目印で細胞外小胞を絞り込む方法は、血液検査で膵臓がんの小さなサインを捉える新しい方向性として注目される。
次に研究チームは、この目印を実際の血液検査に使えるかを調べた。
300μL(μ=マイクロは100万分の1)の血漿(けっしょう、血液の液体成分)から、MUC1、EGFR、TROP2を目印に、対応する細胞外小胞を集め、それぞれの量を測定した。血液中の細胞外小胞を一括して調べるのではなく、膵臓がんとの関係が強いと考えられるものに絞って評価した点が特徴だ。
さらに、3種類の測定結果を組み合わせ、「PDAC EV Score」と呼ばれる指標を作った。PDACは膵管腺がん、EVは細胞外小胞を意味する。
この指標を使うと、膵臓がん患者とがんではない人を、高い精度で見分けられた。さらに、指標を作るためのデータだけでなく、別の検証用データでも、良好な結果が得られた。血液中の細胞外小胞から、膵臓がんのサインを拾える可能性を示す結果だ。
先にPREVONOの記事で取り上げた慈恵医大の総説では、膵臓がんの細胞外小胞検査では、血液中に混ざる多数の小胞の中から、がんに関係する情報をどう見分けるかが課題とされていた。
UCLAなどの研究は、細胞外小胞の表面にある目印を使い、膵臓がんに関係する小胞を選び出す方法を示した。細胞外小胞をただまとめて測るのではなく、「どれを測るか」を絞り込む点に意味がある。
今回の研究の焦点は、血液中にある無数の細胞外小胞の中から、膵臓がんに近い情報を持つものをどう選び出すかにある。表面の目印を使って小胞を絞り込む方法は、血液検査で拾える情報の解像度を高める試みといえる。将来的には、膵臓がんの兆候をより早い段階で捉える検査につながる可能性がある。