米国ミシガン州で、企業が従業員向けの医療保険に、多がん種早期検出の血液検査を追加できるようになる。
医療保険を提供するプライオリティ・ヘルス(Priority Health)と検査を開発したグレイル(GRAIL)が2026年7月16日に発表した。
企業向けの医療保険に追加
米国では、企業向け医療保険の福利厚生として多がん種早期検出検査を組み込む動きが出ている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 米ミシガン州で、企業が従業員向け医療保険の福利厚生として、多がん種早期検出検査「ギャレリ」を追加できるようになる。
- 1回の採血で血液中のDNAメチル化を分析し、50種類を超えるがんに関連するシグナルと、その由来となる臓器を推定する。
- 対象者や費用負担は企業ごとの契約で異なり、プライオリティ・ヘルスは高齢者向け保険に続いて企業向け保険にも対象を広げる。
今回、企業向けの医療保険に追加できるようになるのは、多がん種早期検出検査「ギャレリ(Galleri)」だ。
グレイルによると、1回の採血で、膵臓がん、卵巣がん、肝臓がん、胆道がんなどを含む50種類を超えるがんに関連するシグナルを調べられる。
検査では、血液中に含まれるDNAを分析する。がん細胞では、DNAに「メチル化」と呼ばれる特徴的な変化が現れることがある。ギャレリは、その変化の組み合わせを調べ、がんに関連するシグナルがあるかどうかを判定する。
シグナルが見つかった場合には、その由来とみられる体の部位を推定し、画像検査や内視鏡検査などの詳しい検査につなげる。グレイルは、由来部位を90%を超える精度で推定できると説明している。また、これまでに計38万人を超える参加者を含む複数の研究で検証してきたとしている。
今回の対象は、プライオリティ・ヘルスが扱う自家保険型の企業向け医療プランだ。企業が従業員の医療費を実質的に負担し、保険会社が制度の運営を支える仕組みで、ギャレリを給付内容に追加できるようになる。
プライオリティ・ヘルスは、ミシガン州などで約140万人に医療保険を提供している。2025年には、高齢者向けの2つの医療保険プランでギャレリを給付対象としており、今回、その対象を企業向けプランにも広げる。
企業は、従来のがん検診を補う選択肢として、ギャレリを従業員向けの福利厚生に組み込める。対象となる従業員や費用の負担方法などは、企業ごとの契約内容によって異なる。
既存の検診に追加して使う検査
ギャレリは、血液中のDNAメチル化を分析し、がんに関連するシグナルと由来部位を推定する検査。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- ギャレリは乳がんや大腸がんなどの既存検診に追加して使う検査で、従来の検診に代わるものではない。
- 陽性でもがんの確定診断ではなく、陰性でもがんを否定できないため、画像検査や内視鏡検査などによる確認が必要。
- 米食品医薬品局の承認は受けておらず、死亡率を下げる効果や、追加検査による身体的・心理的・経済的負担の検証が課題となる。
グレイルは、ギャレリを乳がん検診や大腸がん検診、子宮頸がん検診、肺がん検診などに追加して使う検査と説明している。ギャレリを受けても、従来のがん検診が不要になるわけではない。
検査には医療従事者の処方が必要で、主に50歳以上など、がんになる危険性が高い成人への使用が想定されている。妊娠中の人、21歳以下の人、がんの治療中の人には推奨されていない。
結果が「がんシグナルなし」でも、がんがないとは言い切れない。一方、「がんシグナルあり」と判定されても、がんが確定したわけではない。画像検査や内視鏡検査、組織検査などで詳しく調べる必要がある。
がんがないのにシグナルが見つかる「偽陽性」や、がんがあってもシグナルが見つからない「偽陰性」も起こり得る。
ギャレリはグレイルが開発し、同社の検査施設で実施する検査だが、米食品医薬品局の承認や認可は受けていない。
米国では、検査施設が自ら開発し、その施設内で実施する検査が、米食品医薬品局の個別承認を受けずに提供される場合がある。ギャレリを実施する施設は、CLIA(臨床検査室改善法)に基づく認証を受けている。
CLIAは、検査施設の人員や設備、検査手順、品質管理などが一定の基準を満たしているかを確認する制度だ。同施設は、米国病理医協会の認定も受けている。
ただし、CLIA認証は、検査そのものの安全性や有効性を米食品医薬品局が審査したことを意味しない。検査施設の品質管理に関する認証と、検査自体に対する米食品医薬品局の承認は別の仕組みとなる。
グレイルは、無作為化比較試験の初年度には、従来の検診にギャレリを追加した場合、ステージ4で見つかるがんが20%超少なかったと説明している。
一方、3回の検査を通じた主要な解析では、ステージ3と4を合わせた進行がんの減少に、統計的に明確な差は確認されなかった。現時点では、ギャレリを受けることで、がんによる死亡を減らせるかも明らかになっていない。
グレイルは、米国で推奨される検診があるがんは限られており、がん死亡の約70%は、一般向けの推奨検診がないがんによるものだと説明している。
今回の動きは、多がん種早期検出検査が、企業の福利厚生や医療保険を通じて広がる可能性を示す。一方、陽性後の追加検査による身体的、心理的、経済的な負担も含め、検査の効果と課題を引き続き検証する必要がある。