研究

血液でがんの「DNAの乱れ」をAI検出 新しい指標EIIで早期診断に可能性

機械学習でメチル化の不安定性を解析、複数がんに応用期待

医療従事者が手袋を着け、腕から採血している様子。
医療従事者による採血のイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 血液中の無細胞DNAにみられるDNAメチル化パターンの「ゆらぎ」を測ることで、早期のがんを見つけ出せる可能性が示された。

 米ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターの研究グループが2026年1月に報告した。

「DNAの乱れ」を血液から読む

青い手袋を着けた研究者が、採取した血液の入った試験管を手に持ち、複数の検体と並べて確認している様子。
血液検体を用いた検査や解析のイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 腫瘍由来DNAなどを血液から調べるリキッドバイオプシーで、DNAメチル化が有望な手がかりとして注目されてきた。
  • 従来はメチル化の決まった変化を基準にしていたが、年齢や人種、病態の違いで精度が落ちる課題があった。
  • 研究チームは、がん化に伴って増えるDNAメチル化パターンの乱れに着目し、不安定性を機械学習で解析する手法を開発した。

 血液などの体液中に含まれる腫瘍由来DNAなどを調べる検査は「リキッドバイオプシー(液体生検)」と呼ばれる。腫瘍の細胞やDNAを検出することで、がんの可能性を調べる方法などが研究されてきた。

 そうした中で、がんの可能性を調べるために、DNAの「メチル化」が有望な目印になる可能性が考えられてきた。

 DNAメチル化は、DNA上に「メチル基」が付加される化学的変化で、遺伝子発現の調節に関わることが知られており、しばしば遺伝子のスイッチに例えられる。これは正常な細胞の機能の調整に欠かせないものだが、病気の発症とも関連することが分かっている。DNAのメチル化を含めた研究分野は「エピジェネティクス」と呼ばれている。

 従来、このメチル化の「決まった変化」を基準にがんの可能性が調べられることが多かったが、年齢や人種、病態の違いがある場合、性能が落ちる課題があった。

 今回、研究グループは、こうした限界を超えるため、がん化の過程でDNAメチル化パターンのランダムな変動が増す点に着目し、その不安定さからがんの可能性を推定した。

 研究チームは、公開されている2084検体分のデータを解析し、複数のがんでDNAメチル化の変動を捉えやすい269の領域を見いだした。

 これらの領域について、血液中に含まれる無細胞DNA(セルフリーDNA)を解析し、がんと健常者を見分けるための機械学習モデルを構築した。血液中で本来大きなばらつきがないはずの領域に強い変動が見られる場合、それが発がんの兆候になり得るという考え方だ。

 研究グループは、この変動の状況について、「エピジェネティック不安定性指数(Epigenetic Instability Index、EII)」という指標で評価した。これは、がん化の過程で生じる不安定性に注目する指標だ。

肺がんや乳がんを早期の段階で識別

DNAの立体構造を背景に、ピンセットで分子モデルの一部をつまむ様子を表現したイメージ画像。
遺伝子や分子レベルの研究。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • エピジェネティック不安定性指数(EII)により、早期の肺腺がんや乳がんを比較的高い精度で見分けられる可能性が示された。
  • 大腸がん、脳腫瘍、膵臓がん、前立腺がんでも、血液中のシグナルを捉えられる可能性が示された。
  • 現時点では概念実証の段階だが、将来的には既存のがん検診を補う新たな血液検査法として期待されている。

 解析の結果、EIIは複数のがん種で有望な性能を示した。早期の肺腺がんや乳がんを比較的高い精度で見分けられる可能性が示され、大腸がん、脳腫瘍、膵臓がん、前立腺がんについてもシグナルを捉えられる可能性が示された。

 研究チームは、がんのごく初期にはDNAメチル化が揺らぎ始め、その不安定さを拾うことで、従来より早い段階の病変を見つけられる可能性があるとしている。

 今回の成果はコンセプトを実証する段階であり、今後、さらなる大規模な研究により検証が必要であるが、既存のスクリーニング法を補う検査法として期待される。

参考文献

Detecting Early-Stage Cancers with a New Blood Test Measuring Epigenetic Instability(Johns Hopkins Medicine)
https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/2026/02/detecting-early-stage-cancers-with-a-new-blood-test-measuring-epigenetic-instability

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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