日本

多がん種早期検出検査「キャンサーガード」、日本で提供開始

1回の採血で50種類以上のがんに関連するシグナルを解析、アボットが米国外で初めて自社提供

血管内を流れる赤血球を表した図。
血液中を流れる赤血球を表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 1回の採血で、複数のがんに関連する血液中の変化をまとめて調べる検査の提供が、日本で始まった。

 アボットは2026年7月1日、多がん種早期検出検査「Cancerguard(キャンサーガード)」の国内提供を開始した。米国では2025年に導入されており、日本はアボットが米国外で初めて自社提供する市場となった。

 血液中のがん細胞由来DNAやタンパク質を組み合わせ、50種類以上のがん種やサブタイプに関連するシグナルを解析する。提携医療機関を通じ、自費診療として提供される。

DNAとタンパク質を組み合わせ調べる

医療従事者が患者の腕から採血している様子。
血液検査のために採血を行う場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • DNAメチル化は、DNA配列を変えずに遺伝子の働きを調節し、年齢や紫外線などの影響を反映する仕組み。
  • 成人22人の顔の片側だけに1940nmのフラクショナルレーザーを約4週間隔で3回照射し、反対側を対照とした。
  • 治療前から終了6カ月後まで表皮を採取し、1検体当たり約380万カ所のDNAメチル化と、シミや肌の凹凸を調べた。

 日本では、乳がん、大腸がん、子宮頸がん、肺がん、胃がんを対象とした検診が行われている。一方、膵臓がんや卵巣がんなど、一般の人を対象とした検診法が確立していないがんも多い。

 キャンサーガードは、血液中に含まれるがん細胞由来のDNAやタンパク質を調べ、複数のがんに関連するシグナルを一度に検出する検査だ。がんを画像で見つけたり、組織を採取して確定診断したりするものではない。血液中にがんを疑う変化があるかを調べ、医師が追加検査の必要性を判断するための情報を提供する。

 アボットによると、これまでに2万人以上を対象とした複数の臨床研究が行われてきた。特定の開発研究では、がんのない人を正しく陰性と判定できた割合を示す特異度は97.4%だった。

 また、乳がんと前立腺がんを除く対象がんについて、がんのある人を正しく陽性と判定できた割合を示す感度は64.1%と報告された。

 がん種別の感度は、肝臓がんおよび胆道がんで80%、膵臓がんで78%、胃がんで73%、卵巣がんで71%、食道がんで63%、肺がんで63%だった。いずれも、特定の開発研究で得られた数値となる。

 特異度97.4%は、がんのない1000人を検査した場合、単純計算では、約26人が誤って陽性と判定されることを意味する。一方、感度64.1%なら、対象となるがんがある人のうち約36%は検出されない計算になる。

 このため、陰性でもがんがないとは断定できず、陽性でもがんが確定したわけではない。結果は、年齢や症状、家族歴、既存のがん検診の結果などと合わせて判断する必要がある。

日本では医療機関を通じて自費で提供

赤い液体の入った複数の検体容器が、ラックに並んでいる様子。
検査室で扱われる血液検体。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 3回の治療終了1カ月後から635領域でDNAメチル化が変化し、皮膚の修復やコラーゲン形成などに関わる遺伝子が多く含まれていた。
  • 加齢とレーザー治療の両方に関連する約16万8000カ所のうち83.9%で、加齢とは逆方向の変化が確認された。
  • 照射側では治療終了1カ月後に茶色いシミが中央値で38%、肌の凹凸が15%減少したが、効果の持続には追加検証が必要。

 キャンサーガードは、既存のがん検診に代わる検査ではなく、補完する目的で提供される。胃がん検診や大腸がん検診、マンモグラフィーなど、推奨されている検診を受けなくてよくなるわけではない。

 検査は提携医療機関で申し込み、採取した血液は米国のイグザクト・サイエンシズ・ラボラトリーズ(Exact Sciences Laboratories)に送られる。同施設は、米国病理医協会の認定と、米国臨床検査室改善法に基づく認証を受けている。

 結果が陽性だった場合には、医師と相談しながら、画像検査や内視鏡検査など、がんの有無や、どの臓器のがんである可能性が高いかを詳しく調べる検査へ進むことになる。アボットは、結果の理解や次の受診を支援するケアナビゲーションも提供するとしている。

 キャンサーガードは、検査施設が独自に開発して実施するLDT(Laboratory Developed Test、臨床検査室開発検査)に当たる。日本では自費診療となり、取り扱う医療機関を今後拡大する予定という。

 ただし、今回の発表では、日本人を対象とした感度や特異度は示されていない。また、この検査を受けることで進行がんやがん死亡が減るかについても、現時点では明らかになっていない。

 多がん種早期検出検査は、検診法が確立していないがんを見つける新たな入り口になる可能性がある。一方、偽陽性による追加検査や不安、偽陰性による見逃し、生涯に症状や死亡をもたらさないがんまで見つける過剰診断なども課題となる。

 検査を受ける場合には、調べられる内容と限界、陽性となった後にどのような検査を受けるのか、費用はいくらかを、事前に医師へ確認することが重要になる。

 PREVONOで既に伝えているが、多がん種早期検出の検査は一層注目される可能性がある。

参考文献

アボット、日本において「Cancerguard(キャンサーガード)」の提供開始(アボットジャパン)
https://www.abbott.co.jp/media-center/press-releases/01-07-2026.html

血液などの体液に残るがんの痕跡をAIで読み解く DNA、RNA、タンパク質、免疫反応から複数のがんと発生部位を推定
https://prevono.net/column/2345/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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