世界

2050年には世界の新規がん患者数が約3500万人に増加する見通し

WHO、予防と早期発見、治療格差の解消を各国に要請

世界保健機関(WHO)のロゴが掲げられた看板。
世界保健機関(WHO)のロゴが入った看板。(写真:Adobe Stock)

世界では、高齢化や人口増加などを背景に、新規がん患者が増え続けている。

WHO(世界保健機関)は2026年7月、世界の新規がん患者数が、現在の年間約2060万人から、2050年には約3500万人へ増える見通しであることを示した。

WHOは、予防や早期発見、治療への投資をさらに進める必要があるとしている。

約4割は予防できる可能性

地球の模型を囲むように、さまざまな色のがん啓発リボンが並んでいる。
世界的ながん対策では、予防、早期発見、治療格差の解消が重要になる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 世界では年間約2060万人が新たにがんと診断され、約1000万人が死亡している。
  • がん症例の約4割は、喫煙や飲酒、肥満、運動不足、HPVや肝炎ウイルスなどの予防可能な要因に関連する。
  • 禁煙対策やワクチン接種、感染予防、生活習慣の改善を広げることで、がんの発症を減らせる可能性がある。

WHOによると、現在、世界では年間約2060万人が新たにがんと診断され、約1000万人が命を落としている。がんは心血管疾患に次いで世界で2番目に多い死亡原因となっている。

今回の報告では、世界のがん症例の約4割は、予防可能な危険因子に関連しているとされた。主な要因として、喫煙、飲酒、肥満、運動不足に加え、ヒトパピローマウイルス(HPV)、B型・C型肝炎ウイルス、ヘリコバクター・ピロリ菌などの感染が挙げられている。

実際に、たばこ対策を進めた国では肺がんが減少し、ワクチン接種の拡大や衛生環境の改善、感染予防対策によって、感染に関連するがんも減少している。

WHOは、がん対策は治療だけでなく、禁煙やワクチン接種、感染対策、生活習慣の改善など、予防への取り組みをさらに強化する必要があるとしている。

治療格差の解消も大きな課題

治療中とみられる女性が、窓の外を見つめている様子。
がん患者や治療中の人にとって、医療へのアクセスや生活支援も大きな課題となる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 乳がんの5年生存率は高所得国で約87%、低所得国で約42%と、診断や治療へのアクセスに大きな格差がある。
  • がん患者の少なくとも45%が経済的困難を経験し、半数超が精神的な問題を抱えるなど、生活面の支援も課題となっている。
  • WHOは、予防から早期発見、治療、緩和ケアまでを切れ目なく提供し、所得や居住地に左右されない体制整備を求めている。

一方で、がん医療へのアクセスには大きな地域格差が残っている。

例えば乳がんでは、高所得国では診断から5年後に約87%が生存しているのに対し、低所得国では約42%にとどまる。また、がん医療を公的な医療保障の給付対象に含めている国は、3分の1未満にとどまる。

WHOが初めて実施した、がんの影響を受けた人々を対象とする調査では、少なくとも45%が経済的な困難を経験し、半数を超える人が精神的な問題を抱えていた。介護者についても、ほぼすべての人が無償のケアや社会的孤立などの負担を訴えていた。

WHOは、がん対策を「病気だけを見る医療」ではなく、患者や家族の生活全体を支える仕組みに変えていく必要があると提言している。その上で、各国に対し、予防、早期発見、治療、緩和ケアを切れ目なく提供できる体制づくりと、所得や居住地によって受けられる医療が左右されない環境の整備を求めている。

世界のがん患者は今後さらに増えると予測される。将来の負担を減らすためには、新しい治療法の開発だけでなく、予防や検診を通じて、がんを防ぎ、早く見つける取り組みを着実に広げていくことが重要になりそうだ。

日本でも、がん検診の受診率向上や、検診で異常を指摘された人を精密検査につなげることが課題となっている。

参考文献

WHO calls for urgent action as new cancer cases are projected to nearly double by 2050(WHO)
https://www.who.int/news/item/08-07-2026-who-calls-for-urgent-action-as-new-cancer-cases-are-projected-to-nearly-double-by-2050

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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