研究

血液中の大腸がんマーカーを基準値の1000分の1の濃度で検出

大阪公立大学、早期診断につながる新技術を開発

手袋を着けた手が、血液の入った採血管を持っている様子。
検査に用いる血液検体。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 大腸がんは、早い段階で見つけて対応できれば治療成績が良くなりやすい。そのため、より早期に見つけられる検査法の開発が求められている。

 そうした中で、血液中の大腸がんマーカーを極めて低い濃度でも検出できる新しい測定技術が開発された。

 大阪公立大学などの研究グループが2026年6月に発表した。

光を利用して超高感度に検出

医療従事者が患者の腕から採血している様子。
血液検査のために採血を行う場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 大腸がん関連マーカーのCEA(CEACAM-5)は、人間ドックなどでも使われる血液中の手掛かりの一つ。
  • 研究グループは、レーザーによる光圧と液体を流す流体圧を組み合わせた「MF-LAC-SYS」という測定システムを開発した。
  • わずかな血液由来の試料から、従来の基準値の約1000分の1にあたる低濃度のCEACAM-5を検出できる可能性が示された。

 大腸がんの検査では、血液中に増えることがあるCEA(CEACAM-5)というタンパク質が手掛かりの一つになる。人間ドックなどでも使われる大腸がん関連のマーカーだ。

 ただし、血液中のマーカーは、早い段階ではごくわずかしか存在しないことがある。従来の方法では、測定までに時間がかかり、非常に低い濃度をとらえるには限界があった。

 そこで研究グループは、レーザーの光で小さな粒子を押す力である「光圧」と、液体を流す「流体圧」を組み合わせた「MF-LAC-SYS」という測定システムを開発した。光と流れを利用して、マーカーである「抗原」とそれを捕まえる「抗体」が出会いやすい状態を作る仕組みだ。

 この方法では、わずか500nL(ナノは10億分の1)という極めて少ない血液由来の試料から、大腸がんマーカーであるCEACAM-5を検出した。測定できた濃度は1~10pg/mL(ピコは1兆分の1)で、人間ドックなどで用いられるCEAの基準値5ng/mLのおよそ1000分の1に相当する。

 研究グループは、光を使って反応を効率よく進めることで、ごく微量のマーカーでも短時間で検出できる可能性を示した。

従来法では見えにくかった大腸がんマーカーか

医療従事者が、血液の入った採血管をラックに入れて持っている様子。
検査室で扱われる血液検体。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 今回の研究では、CEACAM-5が血液中で小さな塊のような状態でも存在する可能性が示された。
  • マーカーがどのような形で存在しているかを調べることが、将来の高感度な検査につながる可能性がある。
  • 現時点では研究段階だが、リキッドバイオプシーや大腸がんの早期診断への応用が期待されている。

 今回の研究では、CEACAM-5が血液中で「小さな塊」のような状態でも存在する可能性が示された。研究グループは、こうした状態のマーカーが、従来法では捉えにくかった可能性があると見ている。

 この点は、血液中のマーカーを単に「あるかないか」で調べるだけでなく、「どのような形で存在しているか」まで見ることが、将来の高感度な検査につながる可能性を示している。

 研究グループは、このナノ粒子化したマーカーが、従来法では見えにくかった新しい大腸がんマーカーの手掛かりになる可能性もあるとしている。

 現時点では研究段階であり、実際の診療で利用するにはさらに検証が必要になる。一方で、将来的には血液からがんの情報を調べるリキッドバイオプシーや、大腸がんの早期診断に加え、認知症や感染症などの検査技術にも応用が期待されている。

参考文献

光圧×流体圧で大腸がんの早期診断に貢献 ~ゴマ粒ほどの血液中のタンパク質を、基準値の1/1000の濃度で計測~(大阪公立大学)
https://www.omu.ac.jp/info/research_news/entry-24709.html

Iida T, Takagi Y, Katsumata M, Isomura H, Komori K, Tamura M, Yamakawa H, Nakamura Y, Hayashi K, Nakase I, Tokonami S, Taguchi A. Light-induced acceleration of specific binding between CEACAM-5 and antibodies for early detection of colorectal cancer. Nanoscale Horiz. 2026 Jun 29. doi: 10.1039/d6nh00017g. Epub ahead of print. PMID: 42367090.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42367090/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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