コラム

20mm以下の膵臓がんをAIが高感度に検出

神戸大学など、CT画像から早期発見に挑む

画像検査装置の中で、患者の検査を支援するロボットと医療スタッフの様子。
AIやロボット技術を活用した画像検査を想起させる場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

AIが小さな膵臓がんを高精度で検出
神戸大学、CT画像からの早期発見を支援

 膵臓がんは見つかった時には進行していることが多く、早期発見が難しいがんの一つだ。

 神戸大学などの研究グループは、CT画像から膵臓がんを高精度で検出するAI(人工知能)を開発した。特に20mm以下の小さな膵臓がんで高い検出性能を示し、研究成果は2026年6月にRadiologyへ掲載された。

腫瘍だけでなく「間接所見」もAIが読み取る

腹部の臓器の中で、膵臓付近の病変を明るく強調して示した解剖図。
膵臓付近の病変を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 早期の膵臓がんは腫瘍が小さく、CTでも見つけにくいことがある。
  • 腫瘍がはっきり写る前から、膵臓の萎縮や主膵管の拡張や狭窄などの変化が出る場合がある。
  • 研究では、腫瘍そのものに加え、こうした「間接所見」もAIが読み取り、膵臓がんの可能性を判定する仕組みを開発した。

 膵臓がんの診断ではCT検査が広く使われている。しかし、早期の膵臓がんは腫瘍が小さいため、熟練した医師でも見つけるのが難しいことがある。特に健康診断などで行われる造影剤を使わないCTでは、病変を見つける難しさがさらに増す。

 その一方で、腫瘍そのものがはっきり写る前から、膵臓や膵管には小さな変化が出ることがある。代表的なのが、膵臓の一部がやせる「膵実質萎縮」や、主膵管の拡張、狭窄だ。こうした周囲の変化は「間接所見」と呼ばれ、早期発見の手掛かりになる。

 これまでのAIは、主に腫瘍そのものを見つけることに重点が置かれていた。今回の研究では、腫瘍という直接所見に加え、膵実質萎縮、主膵管拡張、主膵管狭窄といった間接所見も個別に検出し、それらを組み合わせて膵臓がんの可能性を判定する仕組みを開発した。

 研究では、2007年から2022年までに国内9施設と公開データから集めた2251人のCT画像を使ってAIを構築した。さらに、学習には使っていない9施設の外部データを用いて性能を検証した。

20mm以下の小さな膵臓がんで専門医を上回る感度

腹部の臓器の中で、膵臓を赤く強調して示した解剖図。
膵臓の位置を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • AIの診断性能は、造影CTでは専門医と同等、非造影CTでは専門医平均を上回った。
  • 20mm以下の小さな膵臓がんでは、AIが専門医より高い感度で病変を検出した。
  • 腫瘍だけでなく膵管や膵臓の形の変化も同時に評価できたことが、高い検出性能につながったと考えられている。

 開発したAIを、6人の放射線科医と消化器内科医の読影結果と比較した。

 その結果、診断性能を示すAUCは、造影CTでAIが0.99となり、専門医の平均と同等だった。AUCは、がんとそうでない状態をどれだけ見分けられるかを示す指標で、1に近いほど判別性能が高い。非造影CTではAIが0.93、専門医平均が0.91で、AIが有意に高い診断性能を示した。

 特に小さな膵臓がんでは、感度の差が大きかった。感度は、病変がある人を正しく「病変あり」と判定する能力を示す。20mm以下の膵臓がんに対する感度は、造影CTでAIが98%、専門医平均が82.6%だった。非造影CTではAIが86%、専門医平均は41.1%で、AIが2倍以上高い感度を示した。また、早期のステージ1(T1)の膵臓がんでも、AIは専門医より高い感度で検出できた。

 研究グループは、AIが腫瘍だけでなく、膵管や膵臓のわずかな形の変化も同時に評価できたことが、高い検出性能につながったと考えている。研究グループは、臨床現場で医師を支援する「第二の読影者」として活用することで、見落としを減らし、早期の膵臓がん発見につながる可能性があるとしている。

参考文献

AI(人工知能)を用いて造影・非造影CT画像から膵癌を高精度に検出する深層学習モデルを開発(神戸大学)
https://www.kobe-u.ac.jp/ja/news/article/20260623-67915/

Yamaguchi T, Sofue K, Masuda A, Hirahara N, Ogasawara A, Gonda M, Miki M, Ueshima E, Yabe S, Umeno A, Ebisu N, Kobayashi T, Sakai A, Tanaka U, Iemoto T, Kakuyama S, Ezaki T, Ikegawa T, Hirata Y, Tsumura H, Ogisu K, Shiomi H, Fujigaki S, Nakagawa T, Furumatsu K, Yamanaka K, Sato Y, Fujita K, Ashina S, Katoh T, Takei M, Kodama Y, Murakami T. Deep Learning Detection of Direct and Indirect Imaging Findings Associated with Pancreatic Cancer at Contrast-enhanced and Noncontrast CT. Radiology. 2026 Jun;319(3):e253122. doi: 10.1148/radiol.253122. PMID: 42301012.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42301012/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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