「AIはがんをどこまで早く見つけられるか」の連載では、マンモグラフィ画像から将来の乳がんリスクを予測する研究を見た。
今回は、肺がんCT検診で使われる肺結節解析AIがどこまで進んでいるのかを見ていく。
オランダのラドバウド大学医療センターなどの研究グループは、欧州で認証を受けた肺がんCT検診向けAI製品を調査し、その機能と臨床エビデンスについて、2026年5月に医学誌で報告した。
肺がんCT検診でAIは何をしているのか
CT検査を受ける患者と対応する医療スタッフ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
肺がん検診では、低線量CTで肺の中の小さな結節を探し、大きさや形、変化を評価する。
AIは結節の候補を自動で検出し、大きさや体積を測定したり、前回検査との変化を比較したりできる。
研究グループは、欧州で医療機器認証を受けた肺結節解析AI製品16種類の機能を調べた。
前回紹介したように、AIは、人の目では分かりにくい画像の特徴を捉え、がんをより早く見つける可能性があるとして期待されている。こうした期待は乳がんだけでなく、肺がん検診でも高まっている。
肺がん検診では、低線量CTで肺の中にできた小さな結節を探す。結節の大きさや形、経時的な変化を評価し、がんの可能性を判断していく。
しかし、CT画像の読影には時間がかかる。肺には良性の結節も多く、小さな病変を見落とさずに評価することは容易ではない。読影医による判断のばらつきも課題とされている。
そこで期待されているのがAIだ。AIは結節の候補を自動で検出し、大きさや体積を測定したり、前回検査との変化を比較したりすることができる。読影医の負担を減らし、見落としを防ぐ補助ツールとして活用が進みつつある。
研究グループは、欧州で医療機器認証を取得し、肺結節の解析を目的として販売されているAI製品16種類を調べた。肺結節とは、肺の中に見つかる小さな影のことで、良性のものもあれば、肺がんの手掛かりになるものもある。
評価したのは、AIが肺結節を見つけられるか、大きさを測れるか、種類を分けられるか、前回検査から大きくなっているかを判断できるか、悪性の可能性を推定できるか、さらに診療方針の判断を支援できるか、という点だった。
AIがあっても解決していない問題とは
CT検査前に、患者の姿勢を整える医療スタッフ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
多くのAI製品は、一般的な肺結節の検出や計測には対応していた。
一方で、気管支内病変や嚢胞性病変など、現在のAIでは対応できない病変も残っている。
患者の診断や治療、検診全体の効率にどのような利益があるかを検証した質の高い臨床研究はまだ少ない。
調査の結果、肺がんCT検診向けのAIは、基本的な作業ではかなり実用化が進んでいた。16製品中14製品が、一般的な肺結節を見つける機能と、大きさを測る機能に対応していた。
また、12製品は前回のCT画像と比べて結節が大きくなっているかを評価でき、9製品は悪性の可能性を推定する機能を備えていた。肺結節を拾い上げ、大きさを測り、経過を見る作業では、多くのAI製品が一定の機能を備えていた。
ただし、AIが得意なのは、主に一般的な肺結節を見つけ、大きさを測る作業だった。論文では、米国のLung-RADS 2022と欧州胸部画像学会(ESTI)の指針では、気管支内病変や嚢胞性病変も評価対象に含まれると整理されている。ところが、今回調査された16製品の中に、これらの病変に対応したものはなかった。
肺がんCT検診では、単に結節を見つけるだけでなく、さまざまな種類の病変を見分け、経過観察や精密検査につなげる必要がある。現在のAIは、その一部を支援できる段階であり、検診全体を任せられる状況にはないと見られる。
もう一つの課題は、実際の効果を示す研究がまだ少ないことだ。研究グループは、これらのAI製品に関する査読付き論文60本を調べた。
その多くは、「AIが結節をどれくらい正確に見つけられるか」を調べた研究だった。一方で、AIを使うことで患者の診断や治療が良くなったのか、検診全体の効率や費用にどのような影響があったのかまで調べた研究はなかった。実際に導入して経過を追いながら検証する前向き研究も、全体の7%にとどまっていた。
さらに、16製品のうち6製品は、医学論文として公表された検証結果が確認できなかった。
今回の調査は、肺がんCT検診向けAIが、結節の検出や計測では実用化が進んでいる一方、対応範囲と臨床的な裏付けにはまだ差があることを示した。
AIを導入する際には、どの病変に対応できるのか、どの指針に沿って使えるのか、実際の検診で医師の作業量や不要な検査にどう影響するのかを確認しながら進める必要がある。