酒は百薬の長とされ、「少量のお酒は健康によい」と考えられてきた。しかし、その見方を見直す研究が相次いでいる。
米国ハーバード大学などの研究グループは、飲酒量と病気の関係について最新の分析結果を2026年5月に発表した。
「適量なら健康に良い」は見直されつつある
グラスに酒を注ぐ場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
「少量の飲酒は健康によい」という見方は、過去の研究に偏りが入り込んでいた可能性から見直されつつある。
飲酒する人としない人では、生活習慣や収入、健康状態などが異なり、それが結果に影響する場合がある。
今回のレビューでは、従来の疫学研究に加え、遺伝的な違いを利用するメンデルランダム化研究も含めて飲酒の影響が評価された。
ハーバード大学の発表では、これまで広く語られてきた「少量の飲酒は健康によい」という考え方には、見直しが必要だと説明している。特に、少量飲酒が心臓病のリスクを下げるという見方は、過去の研究でたびたび示されてきた。
しかし、今回のレビュー論文では、そうした研究には偏りが入り込んでいた可能性があると指摘している。飲酒する人と飲酒しない人では、生活習慣、収入、健康状態などが違うことがあり、それが結果に影響するためだ。
例えば、飲まない人の中には、病気や体調不良を理由に酒をやめた人も含まれる。この場合、飲まない人の健康状態が悪く見え、結果として「少し飲む人の方が健康」に見えることがある。
今回のレビューでは、飲酒量だけでなく、飲酒頻度や一度に大量の酒を飲む習慣など、さまざまな飲酒パターンと病気との関係を検討した。
また、従来の疫学研究に加え、「メンデルランダム化研究」と呼ばれる手法の結果も検討している。これは、生まれつきの遺伝的な違いを利用して、飲酒が健康に与える影響を調べる研究だ。
例えば、遺伝的にアルコールを分解しにくい体質の人は、飲酒量が少なくなりやすい。一方で、アルコールを分解しやすい人は比較的多く飲むことがある。このような生まれつきの違いを利用することで、生活習慣や収入、教育水準などの影響を受けにくい形で、飲酒そのものの影響を推定しようとする。
研究グループは、こうした複数の研究手法から得られた知見をまとめ、アルコールと病気の関係をあらためて評価した。
飲酒量が増えるほど病気の負担も増加
アルコール飲料で乾杯する場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
少量飲酒による健康上の利益を示す証拠は、以前より弱くなっていると指摘された。
飲酒は肝疾患、外傷、精神疾患、心血管疾患、複数のがんなど、幅広い病気や健康被害と関係する。
少量なら健康に良いと一律に考えるのは難しく、飲酒量を減らすほど健康リスクも小さくなると考えられる。
今回のレビューでは、少量飲酒による健康上の利益を示す証拠は、以前より弱くなっていると指摘された。
飲酒と関係する病気は幅広く、肝疾患、消化器疾患、外傷、精神疾患、心血管疾患、一部の感染症、複数のがんなどが挙げられた。
レビューの図では、飲酒量が増えるほど相対リスクが上がる病気が多く示されている。特に、口腔がん、咽頭がん、食道がん、肝臓がん、喉頭がん、乳がんなどのがんでは、飲酒量の増加に伴ってリスクが高まる傾向が描かれている。肝硬変では、飲酒量が増えるにつれてリスクが大きく上昇する様子も示されている。
外傷や暴力、交通事故などでは、日常的な飲酒量だけでなく、一度に多く飲む飲み方も関係する。飲酒の影響は、病気の種類によって現れ方が異なる。
年齢による違いもある。若い世代では事故やけがへの影響が目立ち、高齢になると慢性疾患との関係が重要になる。
研究グループは、少量なら健康に良いと一律に考えるのは難しいと見ている。飲酒量を減らすほど健康へのリスクも小さくなる、という見方が現在の科学的理解に近いといえる。