コラム

乳がんのリンパ節転移、DWIBS関連技術で何が見えるか

見落とされやすい内胸リンパ節転移を検証

乳房MRI検査を受けるためMRI装置に入る人物
乳房MRI検査のためMRI装置で撮像を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 PREVONOでは、造影剤を使わずにがんを調べるMRI技術「DWIBS(ドゥイブス)」について見てきた。

 前回は、乳房に疑わしい病変が見つかった後の精密検査への応用を取り上げた。

 今回は、乳がんと診断された後の診療の中で、DWIBSがどのような情報を加えられるかを調べた日本の初期研究を見る。静岡県立静岡がんセンターの研究グループが2025年に報告した。

乳がん診療でリンパ節をどう見るか

胸に手を当てる女性の上半身。乳房の違和感やセルフチェックを示すイメージ。
乳房や胸の違和感を確認する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • DWIBSは造影剤を使わずに、がんやリンパ節のように細胞が密集した部分を強調しやすいMRI技術。
  • 乳がんでは、がんそのものだけでなく、リンパ節への広がりが治療方針を考える上で重要になる。
  • 研究では、胸骨近くの内胸リンパ節をDWIBS-MIPで評価し、転移が疑われた39人を対象に検討した。

 DWIBSは、体内の水分子の動きを利用して病変を描き出すMRI技術だ。がんやリンパ節のように細胞が密集した部分が強調されやすく、造影剤を使わずに広い範囲を見られる点に特徴がある。

 乳がんでは、がんそのものだけでなく、リンパ節に広がっているかどうかも重要な情報になる。リンパ節の状態は、病気の進み具合や治療方針を考える上で重要な参考になるためだ。

 今回の研究で注目されたのは、胸の中央部、胸骨の近くにある「内胸リンパ節」だ。乳がんでは、脇の下のリンパ節だけでなく、この内胸リンパ節に広がることもある。

 ただし、内胸リンパ節は通常の診療で詳しく評価されにくい場所にある。手術で一般的に取り除かれるリンパ節でもなく、画像でどう評価するかも十分に確立されているとはいえない。

 研究グループは、DWIBSで得た画像を見やすく表示する「DWIBS-MIP(Diffusion-weighted imaging with background suppression and maximum intensity projection)」に注目した。DWIBS-MIPは、がんやリンパ節のように信号が目立つ部分を強調し、全体を一覧しやすくする表示法だ。

 研究では、2017年1月から2024年6月までに術前乳房MRIを受けた乳がん患者のうち、内胸リンパ節転移が疑われて生検を受けた39人を対象にした。

生検された内胸リンパ節の約8割が転移あり

検査室に設置されたMRIまたはCT装置と検査台。
画像診断に用いられる大型検査装置。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 内胸リンパ節転移が疑われて生検を受けた39人のうち、31人で病理検査により転移が確認された。
  • リンパ節の大きさや形だけでは、転移の有無を十分に見分けられない可能性が示された。
  • 小規模な初期研究だが、DWIBSが乳がん診療でリンパ節転移の情報を補う手段になる可能性が示された。

 39人のうち、病理検査で内胸リンパ節転移が確認されたのは31人だった。8人では転移が確認されなかった。

 内胸リンパ節転移が疑われて生検を受けた39人のうち、実際に転移があった割合は79.5%だった。大まかに言えば、DWIBS-MIPで転移が疑われたリンパ節の約8割が、病理検査でも転移と確認されたことになる。

 一方で、リンパ節の大きさや形だけでは、転移の有無を十分に見分けられなかった。転移があった人となかった人で、リンパ節の長径、短径、形の比率に明確な差はなかった。

 また、内胸リンパ節転移があった31人のうち3人では、脇の下のリンパ節転移が確認されていなかった。脇の下だけを見ていると、内胸リンパ節の情報を見落とす可能性があることを示す結果だ。

 この研究は39人を対象にした予備的な検討であり、DWIBS-MIPだけで転移を診断できることを示したものではない。ただ、DWIBSが乳がん検診や精密検査にとどまらず、診療の中で追加情報を得る手段になり得ることを示した点は興味深い。

 今後、より大規模な研究で、どの場面で役立つのかを確かめる必要がある。

参考文献

Harada TL, Uematsu T, Nakashima K, Sugino T, Nishimura S, Hayashi T, Tadokoro Y. A preliminary study on diffusion-weighted imaging with background suppression and maximum intensity projection for screening internal mammary lymph node metastasis of breast cancer. Acta Radiol Open. 2025 Jun 12;14(6):20584601251339017. doi: 10.1177/20584601251339017. PMID: 40519659; PMCID: PMC12163280.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40519659/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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