コラム

DWIBSで小さな乳がんはどこまで見えるのか

画像処理でノイズを低減、がんの描出改善に期待

乳房MRI検査を受ける人物を描いた簡易イラスト
乳房MRI検査のためMRI装置で撮像を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 MRIを利用してがんの発見に役立てる「DWIBS(ドゥイブス)」について連続で見ている。

 今回は、画像処理によってノイズを減らし、小さな乳がんの描出を改善する可能性を報告した日本の研究を取り上げる。

 東海大学などの研究グループが2024年に報告した。

小さな乳がんはDWIBSの課題

乳房MRI検査を受けるためMRI装置に入る人物
乳房MRI検査のためMRI装置で撮像を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • DWIBSは造影剤を使わずに撮影できるMRI撮影法で、乳がん検診への応用でも注目されている。
  • 小さな乳がんを見つけるには病変を強調する撮影条件が必要だが、その条件では画像のノイズが増えやすい。
  • 研究グループは、MRI画像のノイズを減らすEPICSを乳房DWIBSに応用し、小さな病変を見やすくできるかを検証した。

 DWIBSは、体内の水分子の動きを利用して病変を描き出すMRI撮影法だ。造影剤を使わずに撮影できるため、乳がん検診への応用でも注目されている。

 一方で、乳房のDWIBSには課題もある。小さな乳がんを見つけるためには、病変を強調する撮影条件が必要になるが、その条件では画像のノイズが増えやすい。画像がざらつくと、小さな病変が周囲に紛れて見えにくくなる。

 平たく言えば、今回の研究は「MRIで撮った乳房の画像を、より見やすく整えると、小さながんが背景に紛れにくくなるか」を調べたものだ。新しい検査そのものを試したというより、DWIBSで得られた画像の見え方を改善できるかに焦点を当てている。

 研究グループは、この課題を補う方法として「EPICS」と呼ばれるMRI画像のノイズ低減技術に注目した。正式には「Echo-planar Imaging with Compressed Sensitivity Encoding」と呼ばれる技術で、MRI画像のノイズを減らし、画質を高めることを目指す。これまで上腹部や骨盤のMRIでも画質改善が報告されていた。

 今回の研究では、このEPICSを乳房DWIBSに応用した。従来法と比べて画像のざらつきを抑え、小さな病変と周囲組織の違いを見やすくできるかを検証した。

 対象は、病理検査で乳がんと診断された37人だった。浸潤径20ミリ以下の小さな乳がんや非浸潤性乳管がんを含む症例を対象に、乳房DWIBS画像を従来法とEPICSを用いた方法の両方で再構成して比較した。

ノイズ減少で病変が見やすく

検査室に設置された装置と検査台。
画像診断に用いられる大型検査装置。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • EPICSを用いた画像処理を加えたDWIBSでは、従来法より画像のざらつきが少なくなっていた。
  • 画像の鮮明さを示すSNRや、病変と周囲組織の区別しやすさを示すCNRも改善していた。
  • 小さな乳がんが背景に埋もれにくくなる可能性が示されたが、実際の検診で発見率が上がるかは今後の検証が必要になる。

 解析の結果、EPICSを用いた画像処理を加えたDWIBSでは、従来法より画像のざらつきが少なくなっていた。2人の放射線診断専門医による目視評価でも、画像処理を加えた画像ではノイズが有意に少ないと判定された。

 画像の見やすさを示す指標にも改善が表れていた。画像の鮮明さを示す「SNR」、病変と周囲組織の区別しやすさを示す「CNR」は、いずれも画像処理を加えた画像で高かった。小さな乳がんが背景に紛れにくくなり、周囲の正常組織との違いを見分けやすくなったことを示す結果だ。

 ただ、ノイズが減ることと、病変そのものが必ずはっきり見えることは同じではない。病変の見えやすさについては、2人の放射線診断専門医の間で結果が分かれた。1人では有意な改善が確認されたが、もう1人では明確な差までは出なかった。

 ノイズの減少や画質指標の改善は確認されたものの、実際の検診で発見率が上がるかを調べた研究ではない。そのため、「乳がんをより多く発見できる」とまでは言えない。

 今回の結果は、DWIBSの画像を見やすく処理することで、小さな乳がんが背景に埋もれにくくなる可能性を示した。ただし、実際の検診で発見率が上がるかは、今後の研究で確かめる必要がある。

参考文献

Kazama T, Nagafuji Y, Niikura N, Okamura T, Van Cauteren M, Obara M, Takano S, Konta N, Horie T, Takahara T, Kumaki N, Niwa T, Hashimoto J. Utility of Echo-planar Imaging with Compressed Sensitivity Encoding (EPICS) in the Evaluation of Small Breast Cancers Using Diffusion-weighted Imaging with Background Suppression (DWIBS). Magn Reson Med Sci. 2025 Sep 26;24(4):2023-0151. doi: 10.2463/mrms.mp.2023-0151. Epub 2024 Jul 26. PMID: 39069474; PMCID: PMC12557875.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39069474/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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