コラム

MRIで前立腺がん検診の過剰診断を減らせるか

PSA検査の「見つけすぎ」を抑え、治療が必要ながんを見分ける試み

患者が検査台に横たわり、MRI検査装置に入っている様子。
前立腺MRI検査などの画像検査を受ける患者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 前立腺がん検診では、血液中のPSA(前立腺特異抗原)を測る検査が広く行われている。しかし、PSA検査は進行しにくい前立腺がんまで見つけてしまうことがあり、過剰診断や過剰治療が課題となってきた。

 こうした中、MRIを組み合わせることで、治療が必要ながんを見つけやすくし、不要な生検や過剰診断を減らそうとする取り組みが進んでいる。

 オーストリアのウィーン医科大学、英国ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンなどの国際研究グループは、MRIを前立腺がん検診に組み込む効果について、これまでの研究を総合的に分析し、2024年に報告した。

 今回は、この研究を基に、過剰診断を減らす方法としてのMRI活用を考える。

PSA検査は早期発見に役立つが、見つけすぎも起こる

検査室に設置されたMRI検査装置と検査台。
前立腺MRI検査などに用いられるMRI検査装置。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • PSA検査は前立腺がんの早期発見に役立つ一方、治療の必要性が低いがんまで見つける過剰診断が課題になる。
  • PSA値だけでは、治療が必要ながんなのか、進行しにくいがんなのかを見分けにくい。
  • PSA検査の後にMRIを組み合わせることで、生検が必要な人を絞り込み、不要な検査を減らせる可能性がある。

 PSAは前立腺で作られるタンパク質で、血液中の値が高い場合、前立腺がんの可能性が疑われる。前立腺がんを早く見つける手掛かりになる一方で、PSA値だけでは、治療が必要ながんなのか、進行しにくいがんなのかまでは見分けにくい。

 このため、PSA検査をきっかけに精密検査として前立腺に針を刺して組織を採取する生検が行われると、悪性度の低い前立腺がんまで見つかることがある。前立腺がんの中には、すぐに治療しなくても長く問題にならないものが存在するとされ、こうしたがんの発見は過剰診断につながるとして課題になってきた。

 今回の研究グループは、PSA検査だけを手掛かりに生検へ進む従来の方法ではなく、PSA検査の後にMRIを組み合わせる方法に注目している。

 MRIを用いることで、前立腺の内部を画像で確認し、がんが疑われる部位や、生検の対象とすべき病変があるかを判断しやすくなる。MRIは、前立腺がんをより多く見つけるためだけの検査ではなく、PSA検査で拾い上げられた人の中から、生検が必要な人を絞り込む役割を担う。

 研究グループは、MRIを組み込んだ検診では、治療が必要と考えられる前立腺がんの発見を大きく損なわずに、悪性度の低いがんの発見や不要な生検を減らせる可能性があるとみている。

 前立腺がん検診では、早期発見の利益と、過剰診断・過剰治療の不利益とのバランスが長く問題になってきた。今回の研究は、PSA検査の後にMRIを加えることで、そのバランスを改善できる可能性を示したものといえる。

MRIで治療が必要ながんを見分ける

MRI検査装置の内部から検査台を見た様子。
MRI検査装置の内部と検査台。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 約8万人分のデータを統合した分析で、MRIを組み込んだ検診は、治療が必要ながんの検出率を大きく損なわないことが示された。
  • 一方で、悪性度の低い前立腺がんの検出や、生検を受ける人は少なくなっていた。
  • MRIの活用は、治療が必要ながんを見つけつつ、過剰診断や過剰治療を減らす方法として期待される。

 研究グループは、前立腺がん検診にMRIを組み込んだ研究10件、約8万人分のデータを統合して分析した。

 その結果、治療が必要と考えられる前立腺がんの検出率は、PSA検査だけに基づく従来の方法とほぼ同じだった。一方で、悪性度が低い前立腺がんの検出は少なくなっていた。研究では、MRIを用いる方法で、悪性度の低いがんの検出が大きく減ることが示された。

 具体的には、MRIを用いた検診では、臨床的に重要な前立腺がんの検出率は、PSAのみの検診と比べてオッズ比1.02だった。オッズ比は1に近いほど差が小さいことを示す指標で、この結果からは両者に大きな違いは認められなかった。

 一方で、悪性度の低い前立腺がんの発見は大きく減っていた。オッズ比は0.34で、PSAのみの検診より低い水準だった。これは、MRIを組み込むことで、治療の必要性が低いがんを拾いすぎることを抑えられる可能性を示している。

 生検を受ける人も少なくなった。MRIを組み込んだ検診では、生検実施のオッズ比は0.28で、PSAのみの検診より大きく低かった。PSA値だけで判断せず、MRIで疑わしい病変がある人に絞ることで、生検を避けられる人が増える可能性がある。

 さらに、生検を行った場合に、治療が必要と考えられる前立腺がんが見つかる割合は高くなっていた。陽性的中率のオッズ比は4.15で、PSAのみの検診より高かった。MRIで疑わしい人に絞って生検することで、生検が「空振り」になりにくく、治療が必要ながんを見つけやすくなる可能性がある。

 前立腺がん検診で重要なのは、がんを多く見つけることだけではない。治療が必要ながんを見つけつつ、治療の必要性が低いがんを拾いすぎないことだ。

 今回の分析は、MRIを組み合わせることで、不要な生検や悪性度の低いがんの発見を減らしながら、治療が必要ながんを効率よく見つけられる可能性を示した。

 PSA検査の弱点を補い、過剰診断や過剰治療を減らす方法として、MRIの活用は重要な選択肢になりそうだ。

参考文献

Fazekas T, Shim SR, Basile G, Baboudjian M, Kói T, Przydacz M, Abufaraj M, Ploussard G, Kasivisvanathan V, Rivas JG, Gandaglia G, Szarvas T, Schoots IG, van den Bergh RCN, Leapman MS, Nyirády P, Shariat SF, Rajwa P. Magnetic Resonance Imaging in Prostate Cancer Screening: A Systematic Review and Meta-Analysis. JAMA Oncol. 2024 Jun 1;10(6):745-754. doi: 10.1001/jamaoncol.2024.0734. PMID: 38576242; PMCID: PMC10998247.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38576242/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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