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MRIの撮影方法を工夫し、これまで分かりにくかった病気の特徴を捉える研究が進む

脳腫瘍の悪性度や乳がんの治療による変化にも注目 第54回日本磁気共鳴医学会大会

第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。演台で講演する登壇者と、座長席で話を聞く2人の座長、参加者の様子。
2026年10月16~18日に鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の講演会場。専門家による研究発表や討論が行われた。(写真:編集部)

 MRIの撮影方法を工夫することで、これまでの画像では分かりにくかった病気の特徴や、治療による変化を捉えようとする研究が進んでいる。

 注目されているのは、体内の水分子の動きを利用する「拡散強調画像(DWI)」と呼ばれる技術だ。水分子の動きを測る時間や方向を変えることで、腫瘍の内部にある細胞の状態や、病気によって生じる組織の変化を、より詳しく調べられる可能性がある。

 2026年10月16日から鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会では、「Advanced Diffusion MRI(高度な拡散MRI)」をテーマとしたハイライト講演が行われた。

脳腫瘍の悪性度を調べる

脳のMRI画像が並ぶ画面を、手に持ったペンで指し示している様子。
脳のMRI画像を確認する医療現場。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • MRIで水分子の動きを測る時間を変えることで、脳腫瘍の内部の特徴をより詳しく調べる研究が進む。
  • 脳腫瘍の102人を対象とした研究では、撮影方法を工夫することで、従来よりも腫瘍の悪性度を見分ける性能が向上。
  • 乳房の腫瘍についても、細胞の大きさや密度を推定し、良性か悪性かを見分ける研究が進展。

 講演では、東邦大学医療センター大森病院放射線科教授の堀正明氏と、東京科学大学脳神経機能外科学分野講師の原祥子氏が座長を務めた。

 水分子の動きは、周囲にある細胞の密度や構造などによって変わる。拡散強調画像は、この性質を利用して病変を調べる。さらに、水分子の動きを測る時間を変えることで、従来とは異なる情報を得ようとする研究が進んでいる。

 ここで変えるのは検査全体の長さではなく、水分子の動きを調べる時間だ。

 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科先進画像診断学共同研究講座特任准教授の上村清央氏は、こうした撮影方法の臨床応用について紹介した。

 上村氏らが、脳腫瘍の一種である神経膠腫の成人102人を対象に実施した研究では、水分子の動きを2種類の時間条件で測定し、その違いを分析した。その結果、従来の方法で得られる数値よりも、時間による変化を表す数値の方が、腫瘍の悪性度を良好に見分けられた。がん細胞の増殖の活発さを示す指標とも関連していた。

 脳腫瘍では、同じ種類の腫瘍でも悪性度によって治療方針や見通しが異なる。MRIから得られる情報を増やすことで、腫瘍の性質をより詳しく調べられる可能性がある。

 また、乳房の腫瘍についても、異なる条件で水分子の動きを測り、細胞の大きさや密度を推定する研究が紹介された。38人の45病変を調べた研究では、こうした情報が良性と悪性を見分ける手掛かりになる可能性が示されている。

乳がん治療後の変化にも応用

乳房MRIの複数の断面画像を並べて表示した読影画面。
乳房MRIでは、乳房の内部を複数の画像で詳しく確認し、乳がんが疑われる病変の有無や広がりを調べる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • MRIで水分子の動きを測る方向や組み合わせを工夫し、組織の細かな構造の違いを調べる新しい技術が進歩。
  • 脳梗塞では、正常な脳の組織が明るく写る影響を抑え、病変を見つけやすくする研究も。
  • 乳がんでは、抗がん剤による治療前後の変化をMRIで調べる研究が進む。腫瘍の大きさだけでなく、内部の変化から治療効果を評価する可能性。

 スウェーデン・ルンド大学医学放射線物理学部門准教授のフィリプ・シュチェパンキェヴィチ(Filip Szczepankiewicz)氏は、水分子の動きを測る方向や、その組み合わせを変える新しい手法の研究について紹介した。

 体内の組織には、細長い構造が一定の方向にそろっている部分や、さまざまな方向に入り組んでいる部分がある。従来の方法では、構造そのものの特徴と、その向きのばらつきを区別しにくい場合があった。新しい方法では、水分子の動きを測る方向の組み合わせ方を工夫し、こうした違いを捉えようとしている。

 講演では、脳腫瘍や脳梗塞、乳がんなどへの応用例が紹介された。脳梗塞では、正常な脳の組織が明るく写る影響を抑え、病変を見やすくする研究が進められている。乳がんについては、抗がん剤による治療前後の変化を調べる研究も紹介。腫瘍内部の細かな構造を反映するMRIの数値に変化が認められた。

 がんの治療効果を調べる際には、腫瘍の大きさがどの程度変わったかが重要になる。これに加えて、腫瘍内部の組織の変化をMRIで評価できれば、治療の影響をより詳しく把握できる可能性がある。

 脳腫瘍や乳がん、脳梗塞など、さまざまな病気の診断や治療効果の評価への応用が期待される。

参考文献

Kamimura K, Nakano T, Nakajo M, Kamizono J, Hasegawa T, Tobo D, Mukai A, Kamimura Y, Ejima F, Nagano H, Takumi K, Nakajo M, Higa N, Yonezawa H, Hanaya R, Kirishima M, Tanimoto A, Otsuka H, Hirahara D, Imai H, Feiweier T, Yoshiura T. Time-dependent diffusion-weighted imaging assessment of tumor grading and isocitrate dehydrogenase genotypes in adult-type diffuse gliomas. Jpn J Radiol. 2026 May;44(5):882-894. doi: 10.1007/s11604-025-01936-w. Epub 2026 Jan 5. PMID: 41489694; PMCID: PMC13144230.
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https://doi.org/10.21037/gs-24-124

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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