MRIを利用して肝臓の働きや腫瘍の特徴を詳しく調べる研究が進んでいる。また、人工知能(AI)を活用し、胆管や膵管の検査時間を短くする技術も登場している。
2026年10月16日から鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会から、肝臓や膵臓などの新しい研究成果を伝える。
肝臓の働きをMRIで数値化、肝腫瘍の判別にも活用
MRI検査装置の内部と検査台。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- MRIで肝臓全体の大きさを測定し、脂肪の蓄積や肝臓が硬くなる変化との関係を、病気の原因別に調べる研究。
- 造影剤を使って肝臓の働きを数値化。撮影方法が異なっても測定結果を比較できるようにする研究が進む。
- 造影剤の広がり方を約4秒間隔で撮影し、肝細胞がんと良性腫瘍を見分ける研究も。65人の75病変を分析。
座長を務めたのは、神戸大学医学部附属病院放射線診断・IVR科准教授の祖父江慶太郎氏と、国立国際医療センター放射線診断科診療科長の渡谷岳行氏。
虎の門病院放射線部の時森貴央氏は、慢性肝疾患で肝臓全体の体積を左右する要因が、病気の原因によってどのように異なるかをMRIで調べた研究を発表した。肝臓への脂肪蓄積と、肝組織の線維化に着目し、それぞれが肝臓全体の体積にどのように関係するかを病因別に解析した。
慢性肝疾患では、脂肪の蓄積や線維化に伴って、肝臓の大きさや形が変化することがある。2017年には虎の門病院などの研究グループが、脂肪性肝疾患の130人を対象にMRIで肝容積を解析し、肝臓の左右の体積比と線維化の程度に関連があることを報告した。一方、肝臓全体の体積と線維化の程度には有意な相関が認められなかった。今回の研究では全肝容積に着目し、その体積に関係する要因を慢性肝疾患の病因別に検討した。
なお、時森氏の演題は大会で「臨床系・疾患部門」の最優秀大会長賞を受賞した。
続いて、信州大学医学部画像医学教室助教の吉澤恵理子氏は、肝疾患の経過観察や肝臓の手術前の検査などに役立てることを視野に、MRIで肝臓の働きを評価する方法を紹介した。
肝臓の病気では、臓器の形や大きさだけでなく、実際にどの程度働いているかを調べることが重要になる。特に肝臓の一部を切除する手術では、残った肝臓が十分に働くかを判断する必要がある。
今回の研究で利用するのは、肝臓の細胞に取り込まれる性質を持つ造影剤だ。造影剤を注射してMRIで撮影すると、肝細胞への取り込まれ方によって画像の明るさが変わる。この違いを利用して、肝臓の働きを数値で評価する研究が進んでいる。
MRIには脂肪の信号を抑える撮影方法が複数あり、同じ肝臓を調べても、撮影方法によって画像の明るさや測定値が変わる場合がある。そのため、異なる方法で得られた数値をそのまま比較することが難しかった。
吉澤氏は、2種類の撮影方法で得られた数値を比較し、その差を計算によって補正する方法を検討した。撮影方法が異なっても、測定結果を比較できる可能性を示した。
虎の門病院放射線部の鈴木秀郷氏は、MRIで肝細胞がんと良性腫瘍を見分ける研究を紹介した。65人の75病変を対象に、造影剤が腫瘍に広がる様子を約4秒間隔で撮影し、その変化を分析した。
その結果、肝細胞がんでは良性腫瘍より造影剤の広がり方に関する数値が低く、良性か悪性かを判断する手掛かりになる可能性が示された。3種類の分析方法を比較したところ、腫瘍の判別には従来の比較的単純な方法が最も良好だった。一方、腫瘍のない肝臓では、造影剤の動きを再現する精度が別の分析方法で高かった。
AIで胆管や膵管の撮影時間を6割短縮
AIを活用した医療データ解析を表す場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- AIを使った新しいMRI撮影技術で、胆管や膵管の撮影時間を約6割短縮。総合的な画質は従来法と明確な差なし。
- 12秒の息止めで胆管や膵管を撮影する研究も。AIによる画像処理で画質が改善し、診断に使える水準の画像を取得。
- 画像の邪魔になる部分をAIで自動的に取り除く技術も開発。画像処理は約0.4秒で完了し、検査画像を見やすくする可能性。
胆管や膵管の検査では、AIを使って撮影時間を短縮する研究が相次いで報告された。
胆管は肝臓で作られた胆汁を運ぶ管、膵管は膵臓で作られた消化液を運ぶ管だ。これらをMRIで調べる方法は「MRCP(Magnetic resonance cholangiopancreatography、磁気共鳴胆管膵管撮影)」と呼ばれ、管の内部にある液体が明るく写る性質を利用して、胆管結石や管の狭窄、膵管の異常などを調べる。
詳しい立体画像を得るため、呼吸のタイミングに合わせて撮影する方法が使われているが、時間がかかることが課題だった。また、呼吸が不安定な場合には画像が不鮮明になることもある。
神戸大学大学院医学研究科の吉田直基氏は、AIを活用した新しい高速撮影技術の有用性を検証した。
60人を対象に、従来の高速撮影方法と新しい方法を比較したところ、新しい方法では撮影時間を約60%短縮でき、医師が画像を見て評価した総合的な画質にも統計学的に明確な差は認められなかった。一方で、さらに高速化して撮影時間を約74%短縮すると、画質が低下し、限界も示された。
九州大学大学院医学系学府保健学専攻の廉田悠人氏は、短時間の息止めで胆管や膵管を撮影する方法を検討した。
健常なボランティア12人を対象に、18秒、16秒、14秒、12秒という異なる息止め時間で撮影し、AIによる画像処理を加えた場合と加えない場合を比較した。その結果、AIを利用すると画像の質が改善し、最短の12秒でも、研究で設定した診断可能な水準の画像が得られた。ただし、肝臓の内部にある細い胆管の一部は従来法より見えにくく、実際に病気のある人でも同じ画質が得られるかは今後の検証が必要になる。
また、仙台オープン病院診療放射線室の診療放射線技師、星英樹氏は、胆管や膵管のMRI画像をAIで見やすくする技術を紹介した。
MRCPでは、胆管や膵管だけでなく、周囲の臓器や消化管内の液体なども明るく写る場合がある。こうした不要な部分が重なると、胆管や膵管が見えにくくなるため、従来は手作業で取り除くことがあった。
星氏の研究では、242例のMRI画像を利用し、不要な部分を自動的に除去するAIを開発した。特徴は、単に明るい部分を消すのではなく、臓器の位置などの情報を利用して、胆管や膵管の必要な部分を残すようにしたことだ。
AIで作成した画像は、手作業で不要な信号を除去した画像に近づき、胆管や膵管の形も比較的良好に保たれていた。AIによる画像処理自体は約0.4秒で完了。臓器の位置を特定する前処理などを含めると、全体では約100秒かかったという。
ただし、AIが画像の不要な部分とともに、必要な胆管や膵管の信号まで消してしまう可能性もある。今後は、画像の正確性や実際の病気の発見に役立つかを検証する必要がある。
なお、この演題は、今回の大会で「臨床系・技術部門」の最優秀大会長賞を受賞した。