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膵臓がんと膵炎をMRIで見分ける研究進む、肝臓の脂肪や硬さも数値で評価 臓器の形だけでなく組織の性質まで調べる

臓器の形だけでなく組織の性質まで調べる 進化するMRI診断の可能性と課題、第54回日本磁気共鳴医学会大会

第54回日本磁気共鳴医学会大会のシンポジウム会場。演台で講演する登壇者と座長、講演を聴く参加者の様子。
第54回日本磁気共鳴医学会大会で開催された「肝胆膵の定量的MRI診断」のシンポジウム。肝臓の脂肪や硬さの測定、膵がんと膵炎の鑑別など、MRIによる診断技術の進歩と課題が紹介された。(写真:編集部)

 MRIによる検査が進化し、肝臓や膵臓の病気について、従来の画像では分かりにくかった情報を調べられるようになってきた。

 MRIでは臓器の形や病変の見え方を調べるだけでなく、脂肪の量、組織の硬さ、水分子の動きなどを数値化する技術が発展している。

 膵臓への脂肪の蓄積と膵臓がんとの関連を示す研究も報告されており、MRIによる膵臓の脂肪量の測定にも関心が高まっている。

 2026年10月16日に鹿児島市で開幕した第54回日本磁気共鳴医学会大会では、「肝胆膵の定量的MRI診断」をテーマにしたシンポジウムが開催された。

肝臓の脂肪や硬さを数値で測定

鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会の会場入口。大会名や開催日程が記された案内看板が設置されている。
2026年10月16~18日に鹿児島市の城山ホテル鹿児島で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会。MRIの画像解析やAI技術などに関する研究成果が発表された。(写真:編集部)
  • MRIで肝臓や膵臓の見た目だけでなく、炎症などによる組織の変化を数値で調べる研究が進む。
  • 肝臓の脂肪をMRIで測定。治療後に脂肪が30%以上減った人では、肝臓の組織も改善していることが多い。
  • MRIで肝臓の硬さも測定。針を刺して組織を採らずに、病気の進み具合を調べる方法として期待。

 座長を務めたのは、群馬大学客員教授の市川智章氏(放射線診断核医学)と川崎医科大学教授の福倉良彦氏(機能・代謝画像診断学)。4人の専門家が、肝臓や膵臓の病気をMRIで数値化して評価する技術と、その臨床応用や課題を紹介した。

 山口大学放射線医学助教の東麻由美氏は、「T1マッピング」「T2マッピング」など、MRIの信号の特徴を数値化し、肝臓や膵臓の炎症や線維化など、通常の画像では分かりにくい組織の変化を調べる技術を紹介した。

 特に注目されるのが、肥満や糖代謝異常などに関連して肝臓に脂肪が蓄積する「MASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)」への応用だ。MASLDの一部では炎症や肝細胞の傷害を伴う「MASH(代謝機能障害関連脂肪肝炎)」が起こり、肝硬変などに進行する場合がある。

 肝臓の脂肪を調べる方法の一つが「MRI-PDFF」で、組織内の脂肪に由来するMRI信号の割合を数値化できる。講演では、MASHの治療後、MRIで測定した肝臓の脂肪割合が治療前より30%以上減少した人では、肝臓の組織にも改善が認められやすいという研究結果が紹介された。

 東氏はこのほか、MRIによって肝臓の炎症や線維化、鉄の蓄積を調べる技術や、慢性膵炎による組織の変化を数値化する研究についても説明した。

 MRI-PDFFは膵臓に蓄積した脂肪の割合も測定できる。膵臓の脂肪については、肥満や糖代謝異常との関連に加え、膵臓がんなどの腫瘍との関係を調べる研究が進んでいる。膵臓の脂肪量については、診断に用いる統一した基準が確立していないものの、MRIによる脂肪の測定が、将来、膵臓の病気の評価に役立つ可能性がある。

 続いて、肝臓の硬さを数値化する技術について、広島大学教授の中村優子氏(放射線診断学)が解説した。

 「MRエラストグラフィ(MRE)」と呼ばれる方法で、体の表面から肝臓に小さな振動を伝え、その波の進み方をMRIで調べる。肝臓が硬くなると波の伝わり方が変化するため、組織の硬さを数値として評価できる。肝臓の線維化が進むと、一般に組織は硬くなる。特に脂肪肝に関連する肝疾患では、線維化の程度が将来の肝硬変や肝がんなどのリスクを考えるうえで重要になる。

 中村氏は、2026年に公表された「MASLD診療ガイドライン」でも、実施できる施設ではMREによる肝線維化の評価が強く推奨されたと説明。肝臓の組織を針で採取する肝生検を行わずに、線維化の状態を繰り返し調べられることが利点となる。今後、肝臓の線維化を調べるためにMRIの出番が一層増える可能性がある。

膵臓がんと膵炎を見分ける

MRI検査装置のそばで、検査台に横たわる患者に医師が対応している様子。
MRI検査を受ける患者と対応する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • MRIで水分子の動きを調べ、画像が似ている膵臓がんと自己免疫性膵炎を見分ける研究が進む。
  • MRI画像から、膵臓がんの手術後に肝臓への転移が見つかる可能性を手術前に予測する研究も。
  • 新しいMRI技術で、膵臓がんと周囲の組織の違いを調べる研究も進展。撮影方法によって検査結果が変わることが判明。

 膵臓の診断については、岐阜大学放射線科准教授の野田佳史氏が、組織内の水分子の動きに着目したMRIの活用を紹介した。

 「拡散強調画像(DWI)」と呼ばれる技術で、組織の中で水分子がどの程度動きやすいかを画像に反映させる。細胞が密集している場所などでは水分子の動きが制限されるため、病変の内部がどのような状態になっているかを推測する手掛かりになる。

 この技術の応用例として取り上げられたのが、膵臓がんと自己免疫性膵炎の鑑別だ。

 自己免疫性膵炎は、免疫の異常などによって膵臓に炎症が起こる病気で、膵臓の一部が腫れると、画像上で膵臓がんと似たように見えることがある。両者では治療方法が異なるため、正しく見分けることが重要になる。

 野田氏が紹介した2021年の研究では、膵臓の一部が腫れるタイプの自己免疫性膵炎40人と、膵臓がんの代表的な種類である膵管がん71人のMRI画像を比較した。その結果、自己免疫性膵炎の方が、水分子の動きやすさを示す数値が低い傾向にあった。さらに、ほかのMRI所見を組み合わせると、膵臓がんを自己免疫性膵炎ではないと正しく判定する割合を示す「特異度」が96.3%となった。

 ただし、水分子の動きに関する数値だけで膵臓がんと膵炎を確実に区別できるわけではない。炎症や線維化によっても数値が変化するため、複数の画像所見や血液検査などと合わせて判断する必要がある。

 野田氏はこのほか、MRIの画像情報を利用し、膵臓がんの手術後に肝転移が明らかになる可能性を術前に予測する研究も紹介した。画像から病気の有無を調べるだけでなく、治療後の経過を予測する方向にも研究が広がっている。

 さらに、川崎医科大学講師の神吉昭彦氏(放射線診断学)は、膵臓がんの内部の特徴を詳しく調べる新しいMRI技術について説明した。

 「APTイメージング」と呼ばれる方法で、組織内のタンパク質やペプチドに含まれる特定の水素原子に関連する情報を、水のMRI信号の変化から間接的に調べる。通常のMRIとは異なる情報が得られる可能性があり、膵臓がんへの応用が研究されている。

 神吉氏は、川崎医科大学と鹿児島大学などによる共同研究を紹介した。膵臓がんの72例を解析し、撮影方法によって、がんの部分と周囲の膵臓の信号の違いがどのように変わるかを調べた。2種類のMRI撮影方法を比較したところ、一方では、がんの部分の信号が周囲より高い傾向にあったが、統計学的に明確な差はなかった。これに対し、脂肪の影響を抑える別の方法では、がんの部分の信号が周囲より低く、統計学的にも明確な差が認められた。

 膵臓がんを詳しく調べるうえで、MRIの撮影方法が検査結果に影響することを示す研究結果だ。

参考文献

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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40062724/

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第54回日本磁気共鳴医学会大会

  1. 1 MRIなどの画像の特徴を数値化、病気の発見や予測に役立てる「ラジオミクス」の研究進む
  2. 2 膵臓がんと膵炎をMRIで見分ける研究進む、肝臓の脂肪や硬さも数値で評価 臓器の形だけでなく組織の性質まで調べる
星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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