子宮にできる悪性腫瘍の一つである「子宮肉腫」。良性の子宮筋腫と似た画像を示すことがあり、MRIを使っても手術前に正確に見分けることが難しい場合がある。
肉腫を良性と判断すれば治療が遅れる恐れがある一方、良性の筋腫を悪性と疑いすぎることも避ける必要がある。こうした診断の難しさに対応するため、MRIによる診断方法を改善したり、人工知能(AI)を活用したりする研究が進んでいる。
2026年10月16日から鹿児島市で開催された第54回日本磁気共鳴医学会大会では、「子宮肉腫の鑑別、最新事情」をテーマにしたシンポジウムが開かれた。
良性の筋腫でも肉腫に似る
下腹部に手を当てた女性と子宮のイラスト。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 良性の子宮筋腫でも、内部で出血や組織の変化が起こると、MRIで悪性の子宮肉腫と似た画像になる場合がある。
- 反対に、子宮肉腫が良性の筋腫に見える場合もあり、MRI画像の一つの特徴だけでは正確に見分けられない。
- 良性か悪性かを判断しにくい腫瘍もあるため、MRIで確認できる複数の特徴を踏まえた慎重な判断が重要。
シンポジウムでは、鳥取大学医学部画像診断治療学分野教授の藤井進也氏と、自治医科大学附属さいたま医療センター放射線科の学内准教授、加藤扶美氏が座長を務めた。
信州大学医学部附属病院放射線部准教授の大彌歩氏は、なぜ子宮肉腫の画像診断が難しいのかについて解説した。
子宮筋腫は良性の腫瘍だが、内部で出血したり、組織の一部が変化したりすると、MRIで肉腫と似た画像を示す場合がある。反対に、肉腫であっても、良性の筋腫に見えることがある。
大彌氏は、実際には良性の筋腫だった症例や、画像の特徴が分かりにくい肉腫の症例を紹介した。
MRIでは、水分子の動きや腫瘍内部の状態などを詳しく調べられる。しかし、画像から得られる一つの数値や特徴だけで、良性か悪性かを決めることはできない。
大彌氏の講演では、良性と考えられるもの、悪性が疑われるものだけでなく、良性か悪性かを判断しにくい腫瘍もあることを認識する重要性が示された。
AIによる診断支援も
前立腺MRI検査などに用いられるMRI検査装置。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- MRIに関する12研究の分析では、子宮肉腫を正しく見つける割合が84.2%、良性の筋腫を正しく判定する割合が89.1%。
- 複数のMRI画像の特徴や血液検査の結果を組み合わせ、子宮肉腫の見逃しを減らす診断方法の研究が進む。
- AIを使ってMRI画像から肉腫と筋腫を見分ける研究も進展。診断を助ける技術として期待されるが、さらに検証が必要。
筑波大学医学医療系准教授の齋田司氏は、これまでの研究結果を整理し、子宮肉腫と筋腫を見分けるための診断方法について紹介した。
齋田氏らが2026年に発表した研究では、MRIによる子宮肉腫の診断に関する12研究をまとめて分析した。その結果、子宮肉腫を正しく見つける割合は84.2%、良性の筋腫を正しく良性と判定する割合は89.1%だった。
MRIは子宮肉腫を見分けるために役立つ一方、一定の割合で見逃しや誤った判定が起こることも分かった。
また、研究によって撮影方法や診断基準が異なることも課題になる。齋田氏は、複数のMRI画像の特徴を順番に確認する方法や、血液検査の結果も組み合わせ、肉腫が疑われる例を見落としにくくする研究を紹介した。
ただし、悪性の可能性がある腫瘍を幅広く拾い上げようとすると、良性の筋腫まで疑わしいと判定する場合が増える。見逃しを減らすことと、良性の腫瘍を良性と正しく判断することの両立が課題になっている。
京都大学医学部附属病院放射線診断科助教の倉田靖桐氏は、画像解析やAIを活用して子宮肉腫を見分ける研究の現状を紹介した。
MRI画像の明るさや模様などを数値化して分析する研究や、AIに画像を学習させて肉腫と筋腫を見分ける研究が進んでいる。国内でも、複数の医療機関のMRI画像を使ってAIによる判定を試みた研究が報告されている。
一方、子宮肉腫はまれな病気のため、AIの開発に必要な症例を十分に集めることが難しい。また、特定の施設で高い性能を示しても、別の病院や異なるMRI装置で同じように役立つとは限らない。
子宮肉腫の診断は依然として難しく、AIも含めて研究成果が実際の診療でどこまで役立つか、さらに検証が必要になる。MRI画像から得られる情報をより正確な診断につなげるため、さまざまな方向から研究が進められている。