連載でDWIBS(ドゥイブス)について見ていく。
DWIBSは乳がん検査への応用で注目されているが、経緯を見ると、乳房だけでなく、全身のがんを調べるMRI技術として研究されてきたことが分かる。
2008年に欧州の放射線医学の専門誌に掲載された、オランダ・ユトレヒト大学の研究者と、DWIBS考案者である高原太郎氏らによる論文では、DWIBSの特徴と、がん分野で応用される可能性が整理された。
日本の高原太郎氏らが2004年に報告した技術を踏まえ、DWIBSが腫瘍の広がり、治療効果、再発の確認などに使える可能性があると報告している。
全身のがんを調べるMRI
画像診断に用いられる大型検査装置。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- DWIBSは、MRIの拡散強調画像を応用し、全身の中でがんや転移、リンパ節病変を見つけやすくする方法として研究された。
- 自然呼吸のまま撮影でき、脂肪など背景の信号を抑えることで、病変が周囲から浮かび上がるように見える場合がある。
- 大腸がんや膵臓がんなどで高い感度や特異度が報告されたが、病変の位置や臓器との関係を知るには通常のMRI画像との組み合わせも重要とされた。
前回見たように、DWIBSは、MRIの「拡散強調画像」と呼ばれる撮影法を応用したものだ。体の中の水分子の動きに注目し、がんなどで水分子の動きが制限される場所を見つけやすくする。
がんでは、細胞が密に集まっていることがある。細胞が多い場所では、水分子が自由に動きにくくなる。そのため、拡散強調画像では病変が目立って見えることがある。DWIBSは、この性質を利用して、全身の中でがんや転移、リンパ節病変を探す方法として研究された。
前回の記事で説明したように、2008年の論文でも、DWIBSの主な特徴として、自然に呼吸したまま撮影できること、脂肪など背景の信号を抑えること、全身を立体的に見やすい画像として示せることを挙げた。
2008年の論文では、DWIBSのがん領域での応用として、がんの広がりを調べる「病期(ステージ)診断」、治療効果の確認、再発や残った腫瘍の検出が挙げられている。
病期診断では、原発巣だけでなく、離れた臓器への転移やリンパ節病変を見つけることが重要になる。DWIBSは、病変の背景にある脂肪による信号を抑えることで、病変が周囲から浮かび上がるように見える場合がある。そのため、小さな病変の検出を助ける可能性があると説明されている。
初期の臨床研究も紹介されている。大腸がんの研究では、内視鏡で確認された大腸がん患者と、内視鏡で異常がなかった対照群を調べ、DWIBS画像を視覚的に評価したところ、がんが存在するときに陽性と判定される割合である「感度」、がんがないときに陰性と判定される割合である「特異度」がいずれも高いことが報告された。
一方で、膵臓がんの研究でも、膵臓がん患者と、慢性膵炎や、「膵管内乳頭粘液性腫瘍」と呼ばれる膵臓の病気の患者の患者を対象に、DWIBSにより検出を試験したところ、高い感度と特異度が示された。
また、腹部の悪性腫瘍を見つける研究では、DWIBS単独よりも、通常のT2強調画像と組み合わせた融合画像の方が、悪性腫瘍を検出しやすいことが報告された。これは、DWIBSが病変を目立たせる一方で、正確な場所や臓器との関係を知るには、通常のMRI画像も重要であることを示している。
大腸がんや膵臓がんなどで検出の可能性を報告
検査画像を確認する医師。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- DWIBSで高信号に見える場所がすべてがんとは限らず、膿瘍などの良性病変や正常な組織も目立つことがある。
- 心臓や横隔膜に近い部位では動きの影響を受け、小さな病変が見えにくくなるなどの限界も指摘されている。
- DWIBSは単独で診断を確定する検査ではなく、CT、通常のMRI、PET、内視鏡、病理検査などと組み合わせて判断する検査と考えられる。
一方で、DWIBSには限界もあるという。
論文では、DWIBSで目立つ場所がすべてがんとは限らないと指摘されている。膿がたまった状態である「膿瘍(のうよう)」などの良性病変のほか、正常なリンパ節、脾臓、腸管、前立腺、子宮内膜、神経や骨髄なども高信号に見えることがある。また、心臓や横隔膜に近い場所では、動きによる影響で小さな病変が見えにくくなることもある。
そのため、DWIBSは単独でがんを確定する検査というより、全身の中で注意すべき場所を見つけ、CTや通常のMRI、PET、内視鏡、病理検査などと組み合わせて判断する検査と考えるべきだと説明されている。
もっとも、当時の臨床研究はまだ少数例が中心で、診断にどの程度役立つのかを確かめるには、より大規模な研究が必要だとも述べている。
さらに、今後も、DWIBSに関連した論文を見ていく。