1回の採血で複数のがんの兆候を調べる「多がん種早期検出(MCED)」の開発が進む中、米国の遺伝子検査企業Natera(ナテラ)は2026年10月9日、開発中のMCED血液検査が、FDAから「ブレークスルーデバイス指定(Breakthrough Device Designation)」を受けたと発表した。
12種類のがんで感度や特異度などを評価
1回の採血で複数のがんの兆候を調べるMCED検査。米国では新たな検査技術の開発や承認に向けた取り組みが進む。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 米Nateraが開発するMCED検査は、血液中の細胞遊離DNA(cfDNA)を分析し、複数のがんの兆候を調べるもの。
- FDAは12種類のがんについて、感度、特異度、がんの発生部位を推定する性能を検討したが、具体的な数値は公表されていない。
- ブレークスルーデバイス指定は開発や審査を優先する制度であり、販売承認を意味するものではない。
MCEDは、血液中に存在するがんに関連したDNAやタンパク質などの変化を調べ、複数のがんの兆候をまとめて検出することを目指す技術だ。
これまでのがん検診は、胃がん、大腸がん、肺がん、乳がんなど、がんの種類ごとに検査を行う仕組みが中心となっている。一方、膵臓がんや卵巣がんなど、無症状の一般集団を対象とした検診方法が確立していないがんも多い。
こうしたがんを含め、1回の採血で複数のがんを調べられる可能性があることから、MCEDの研究が進められている。
Nateraが開発する検査は、血液中の「細胞遊離DNA(cfDNA)」を分析するものだ。cfDNAは、細胞から血液中に放出されたDNA断片で、がんが存在する場合には、がん細胞由来のDNAが含まれることがある。
同社によると、今回のFDAによる指定では、12種類のがんについて、感度、特異度、がんの発生部位を推定する性能が検討された。感度は、実際にがんがある人を陽性と判定できる割合、特異度は、がんがない人を陰性と判定できる割合を示す。ただし、今回の発表では具体的な数値は示されていない。
FDAのブレークスルーデバイス指定は、重篤な疾患の診断や治療に役立つ可能性のある革新的な医療機器について、開発企業とFDAの協議や審査を優先的に進める制度だ。指定された医療機器も、販売承認などを受けるには、通常求められる安全性や有効性の基準を満たす必要がある。
米国では別のMCED検査も承認審査、日本では提供開始と適正利用の議論
血液中のDNAを解析し、複数のがんの兆候を調べる多がん種早期検出(MCED)の研究開発が進んでいる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 米国ではグレイルのMCED検査「ギャレリ」も承認審査が進み、FDA諮問委員会が利益はリスクを上回るとの判断を支持した。
- 日本でもMCED関連検査の提供が広がり、日本癌治療学会は2026年9月に適正な臨床利用に関する見解書の草案を公表した。
- MCEDには既存のがん検診を補完する可能性がある一方、偽陽性や見逃し、過剰診断などの課題があり、長期的な健康への効果の検証が求められる。
MCEDを巡っては、米国で2026年に入ってからも新たな動きが相次いでいる。
例えば、米国のグレイル(GRAIL)が開発した「Galleri(ギャレリ)」は、血液中のDNAのメチル化パターンを解析し、50種類以上のがんに関連するシグナルを調べるMCED検査だ。2026年7月には、米ミシガン州の医療保険会社が、企業向けの自家保険型医療プランに同検査を追加できるようにした。
さらに9月には、FDAの諮問委員会が承認申請について審議し、検査の利益がリスクを上回るとの判断を支持した。ただし、FDAの最終承認には至っていない。
日本でもMCEDの動きは広がっている。新しい検査の広がりを受けて、日本癌治療学会は2026年9月、「多がん種早期検出(MCED)検査の適正臨床利用に関する見解書」の草案を公表し、意見を募集した。
MCEDは従来の検診を補完する可能性がある半面、偽陽性による不要な精密検査や、陰性結果による見逃し、過剰診断などの問題も考慮する必要がある。
今後は、各社の検査性能だけでなく、陽性後の精密検査へのつながりやすさ、進行がんの減少、長期的な健康への影響を含めた研究結果が、MCEDの位置付けを左右することになる。