PREVONOでは、新たな検査技術について取り上げてきた。
新しい連載テーマとして、「AIはがんをどこまで早く見つけられるのか」を掲げ、AI(人工知能)とがん検診や画像診断の研究を継続的に見ていく。
AIはマンモグラフィやCT、MRIなどの画像から、人の目では気づきにくい異常を検出できる可能性があるとして注目されている。
ノルウェー公衆衛生研究所などの研究グループは、乳がんと診断される2〜4年前のマンモグラフィ画像を、AIがどのように評価していたのかを調べ、その結果を2026年6月に報告した。
AIは診断の何年前から気付いていたのか
医療データの解析や管理を表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
AIはマンモグラフィ画像にリスクスコアを付けるだけでなく、疑わしい場所をマークすることもできる。
ノルウェーの研究では、約13万件のマンモグラフィ画像を2種類のAIで解析し、検診発見乳がん749例を含めて調べた。
診断の4年前と2年前の画像でAIが高リスクと判定した症例から、AIのマークと実際に乳がんが見つかった場所が一致するかが検証された。
乳がん検診では、マンモグラフィによって早期発見を目指している。早期に発見できれば、進行した状態で診断される乳がんを減らし、治療の負担を軽くできる可能性がある。
一方で、マンモグラフィの読影は簡単ではない。乳腺の重なりや小さな石灰化、わずかな左右差などの中から、がんを疑う所見を見つける必要があるためだ。実際、後から振り返ると、診断前の画像にわずかな変化が写っていたケースもある。
そこで注目されているのがAIだ。AIは、画像全体にリスクスコアを付けるだけでなく、疑わしい場所をマークすることもできる。ただし、高いリスクを示したとしても、それが本当に将来がんと診断される場所と一致しているのかは重要な問題になる。
研究グループは、ノルウェーの乳がん検診プログラムで撮影された約13万件のマンモグラフィ画像を、2種類のAIで解析した。この中には、検診で発見された乳がん749例が含まれていた。
そのうち、乳がんと診断される前に2回連続で検診を受けており、診断の4年前と2年前の画像のうち、少なくとも一方でAIが高リスクと判定した症例を抽出した。
最終的に、診断時、2年前、4年前の3回分の検診画像がそろった61例を詳しく調べた。研究者は、AIがマークした場所と、実際に乳がんが見つかった場所が一致しているかを確認した。
平たく言えば、約13万件の画像全体から、AIが「診断の数年前から気になる」と判定していた乳がん症例を抽出し、「AIは将来がんになる場所を見ていたのか」を確かめた研究だ。
見えていないのか、それとも人が読めないのか
乳房や胸元の違和感を確認する女性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
診断の4年前の画像でも、AIが示した場所と後に乳がんが見つかった場所が重なる例があった。
AIが後にがんが見つかる場所を示していても、多くは放射線科医から「異常なし」または「がんを疑うほどではない」と評価されていた。
AIは人には読み取りにくい微細な変化を捉える可能性がある一方、高リスク判定だけで精密検査を増やすと偽陽性や過剰検査につながる懸念もある。
結果は興味深いものだった。診断の4年前の画像でも、AIが示した場所と後に乳がんが見つかった場所が重なる例があった。
4年前の段階で、AIのマークが実際のがんの場所と少なくとも一方向の画像で一致していた割合は、2種類のAIでそれぞれ61%と57%だった。2年前になると、それぞれ81%、75%まで高まっていた。
しかし、同じ画像を放射線科医が見直すと、多くは「異常なし」または「がんを疑うほどではないわずかな変化」と判断された。AIが後にがんが見つかる場所を示していた症例でも、約9割は放射線科医から実質的に陰性と評価されていた。
これは、AIが人間には読み取りにくい微細な変化を捉えていた可能性を示している。ただし、「AIが4年前に乳がんを診断できた」という意味ではない。その時点では、明確ながんの所見はまだ現れていなかった可能性もある。
さらに、AIの高リスク判定だけで精密検査を増やせば、偽陽性や過剰検査につながる懸念もある。研究グループも、AIをどのように検診の流れに組み込むかは今後の課題としている。
今回の研究は、AIが乳がん発見の数年前から何らかの兆候を捉える可能性を示した。AIは「今見えるがん」を探すだけでなく、将来のリスクを読む道具にもなるのか。連載では、AIが早期発見にどこまで役立つのか、その可能性と限界を見ていく。