研究

電子たばこ、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性

世界の研究を総合評価、DNA損傷や発がん物質への曝露などを確認

室内で電子たばこを手に持ち、口元に近づけている人。
電子たばこ使用では、DNA損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんにつながり得る変化が報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 電子たばこは、肺がんや口腔がんを引き起こす可能性が高い――。世界各地で行われた研究を幅広く検討した結果から、こうした結論が示された。

 オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW Sydney)などの研究チームが、ニコチンを含む電子たばこの発がん性について総合的に評価し、2026年3月に報告した。

「エアロゾル」から発がん物質、DNA損傷も

電子たばこを口にくわえ、煙状のエアロゾルを吐き出す人の口元。
電子たばこのエアロゾルには、発がんに関係する可能性のある化学物質や金属が含まれることが報告されている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 電子たばこのエアロゾルからは、発がんに関係する化学物質や金属などが確認されている。
  • 人を対象とした研究では、DNA損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんにつながり得る変化が報告された。
  • 動物実験や細胞実験も含めた総合評価から、ニコチンを含む電子たばこは肺がんや口腔がんの原因となる可能性が高いと判断された。

 電子たばこは、液体を加熱して発生する微粒子を含んだ煙状の「エアロゾル」を吸い込む製品だ。紙巻きたばこより安全な代替品とされて広まってきた面もあるが、研究チームは、電子たばこそのものががんにつながる可能性に注目した。

 今回の研究は、一つの新しい実験ではなく、これまで世界で報告されてきたさまざまな研究をまとめて評価したものだ。

 その検討によると、電子たばこのエアロゾルからは、揮発性の化学物質や、加熱部分から放出される金属など、発がんに関係する複数の物質が確認されている。

 人を対象にした研究でも、電子たばこの使用者では、DNAの損傷や酸化ストレス、口や呼吸器の炎症など、がんの発生につながり得る変化が報告されている。

 さらに、マウスに電子たばこのエアロゾルを吸わせた実験では、肺に腫瘍ができたとの報告も認められた。細胞を使った研究でも、DNAの損傷やがんの発生に関わる細胞の変化が確認されている。

 研究チームは、こうした異なる種類の研究で同じ方向の結果が積み重なっていることから、ニコチンを含む電子たばこは、人でも肺がんや口腔がんの原因となる可能性が高いと判断した。

長期的ながんリスクはまだ数字で示せず

屋外で電子たばこを手に持つ若い女性。
電子たばこは紙巻きたばこの代替品として広がっているが、長期的ながんリスクはまだ十分に分かっていない。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 電子たばこの普及からの期間が短く、長期使用でがんリスクが何倍になるかはまだ明らかになっていない。
  • 紙巻きたばこと電子たばこの併用では肺がんリスク上昇が報告されているが、電子たばこ単独の影響とは分けて考える必要がある。
  • 長期的な疫学データを待つだけでなく、現在得られている人・動物・細胞・化学物質の研究を踏まえて健康影響を評価する必要がある。

 一方で、「電子たばこを使うと、がんになる危険性が何倍になるのか」という具体的な数字は、今回の研究からは明らかではなかった。

 電子たばこが広く使われるようになったのは2000年代以降で、がんが発生するまでには長い年月がかかる場合がある。そのため、長期間使用した人を追跡して、非使用者とがんの発症率を比べる研究には、さらに時間が必要となるという。

 研究チームは今回、そうした長期データがそろうのを待つだけでなく、既に得られている人の体の変化、動物実験、細胞実験、電子たばこに含まれる化学物質などを総合して発がん性を評価した。

 特に注意が必要なのは、電子たばこと紙巻きたばこの両方を使うケースだ。電子たばこへ切り替えても紙巻きたばこを完全にはやめず、両方を使い続ける人がいることも問題視された。

 研究チームのメンバーが別に発表した解説では、2024年に米国で報告された研究も紹介されている。肺がん4975例と対照2万7294人を比較したところ、紙巻きたばこ使用では約14倍、紙巻きたばこと電子たばこの併用では約58倍の肺がんリスクが報告された。両方を使う人では、紙巻きたばこのみの場合と比べてもリスクが約4倍高かった。

 ただし、この数字は電子たばこだけを使った場合のリスクを示したものではない。この研究では電子たばこ使用者の97%が紙巻きたばこも使用しており、電子たばこ単独で長期間使用した場合のがんリスクは、まだ十分に分かっていない。

 研究チームは、長期的な疫学データがそろうまで待つのではなく、現在得られている科学的な根拠を踏まえて、電子たばこの健康影響を考える必要があるとしている。

参考文献

Vaping likely to cause cancer: new findings(UNSW Sydney)
https://www.unsw.edu.au/newsroom/news/2026/03/vaping-likely-to-cause-cancer-new-findings

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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