研究

若い世代ほど「生物学的な老化」が進む傾向、早期発症がんのリスクと関連

英国15万人超を分析、免疫系の老化は肺がん、脂肪組織の老化は大腸がんと関連

日中の横断歩道を多くの人々が行き交う都市の風景。
英国と米国の大規模データから、若い世代ほど生物学的な老化が進んでいる傾向が示された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 実際の年齢は同じでも、体の老化が進んでいる人ほど、若いうちにがんを発症するリスクが高い可能性が示された。

 米ワシントン大学医学部(WashU Medicine)などの研究グループが2026年6月、論文で報告した。

「体が老けている」ほど、早期発症がんリスク高

商店街の通路を多くの人々が歩いている日常の街の風景。
生物学的な老化は、生活習慣や環境など複数の要因が積み重なって表れる可能性がある。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 英国の15万4169人などを分析し、血液検査値から推定した生物学的年齢と早期発症がんとの関係を調べた。
  • 英国と米国のデータでは、より若い世代ほど実年齢に比べて生物学的な老化が進んでいる傾向が確認された。
  • 英国では、生物学的老化が最も進んだグループは、最も進んでいないグループより55歳未満の固形がんリスクが15%高かった。

 50代前半までに診断される早期発症がんが増えており、その背景を探る研究が進んでいる。がんは一般に加齢とともに増えるが、若い世代での増加については、肥満や代謝異常、飲酒、運動不足、食生活など、複数の要因が関係している可能性が考えられている。

 今回の研究では、こうした要因が長年積み重なった結果として現れる「生物学的な老化」に注目した。生物学的年齢とは、実際に何歳かという暦年齢とは別に、血液検査値や代謝の状態などを基に、実年齢に比べて体がどの程度老化しているかを推定する考え方だ。

 研究グループはまず、英国のUKバイオバンクに登録された15万4169人を分析した。血液中のアルブミン、クレアチニン、血糖など複数の指標から算出する「フェノエイジ(PhenoAge)」などを使い、実年齢と生物学的年齢の差を調べた。

 その結果、より後に生まれた世代ほど、生物学的な老化が進んでいる傾向が見られた。英国では1965~1974年生まれの人は、1950~1954年生まれに比べ、生物学的老化の指標が高かった。米国の「All of Us」研究でも同様の傾向が確認され、1990年代生まれは1960年代後半生まれより老化の指標が高かった。

 さらに英国のデータでは、生物学的な老化が進んでいるほど、55歳未満で発症する固形がんのリスクは高かった。老化が最も進んだグループでは、最も進んでいないグループに比べてリスクが15%高かった。

組織の老化が特定のがんと関連

横断歩道を行き交う多くの人々を上から写したモノクロ写真。
若い世代で進む生物学的な老化と、早期発症がんリスクとの関連が調べられている。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 血液中のたんぱく質から組織ごとの老化を推定したところ、免疫系の老化は早期発症の肺がん、脂肪組織の老化は大腸がんと関連した。
  • 研究で用いた指標上の一定の差では、免疫系の老化で肺がんリスクが1.89倍、脂肪組織の老化で大腸がんリスクが1.60倍だった。
  • 今回示されたのは関連であり因果関係ではなく、生物学的老化を将来の予防や早期発見にどう生かせるかが今後の課題となる。

 研究では、体全体の老化だけでなく、臓器や組織ごとの老化についても分析した。

 血液中のたんぱく質から各組織の老化を推定したところ、免疫系の老化が進んでいる人では早期発症の肺がんとの関連が強く、脂肪組織の老化が進んでいる人では早期発症の大腸がんとの関連が見られた。免疫系の老化が進んでいるほど、早期発症の肺がんリスクは高く、研究で用いた指標上の一定の差で比べると1.89倍だった。脂肪組織の老化でも同様に、早期発症の大腸がんリスクは1.60倍だった。

 体全体の老化との関連は、特に肺がん、消化器がん、子宮がんで目立った。喫煙やBMI、飲酒、食事、運動、糖尿病などを考慮した後も関連は残り、遺伝的ながんリスクを加味しても大きく変わらなかった。

 今回示されたのは生物学的な老化と早期発症がんとの関連であり、老化そのものががんの直接的な原因であるという因果関係を証明したわけではない。研究グループは今後、生活習慣や環境、社会的な要因など、何が体の老化と関係し、それが早期発症がんのリスクとどう結びつくのかを調べるとしている。

 生物学的な老化を測ることで、若いうちからがんのリスクが高い人を見つけ、予防や早期発見につなげられるかがこれからの課題となる。

参考文献

Faster aging in younger generations linked to rise in early-onset cancer(Washington University School of Medicine in St. Louis)
https://medicine.washu.edu/news/faster-aging-in-younger-generations-linked-to-rise-in-early-onset-cancer/

Tian R, Zong X, Ren D, Tica S, Hong D, Oduyale O, Buenrostro JD, Govindan R, Cao Y. Biological aging and generational shifts in early-onset cancer risk. Nat Med. 2026 Aug;32(8):2983-2990. doi: 10.1038/s41591-026-04448-w. Epub 2026 Jun 22. PMID: 42332142; PMCID: PMC13472952.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42332142/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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