心筋梗塞と見分けにくい「たこつぼ症候群」、血液検査など5項目で早期判別へ
血液中の4指標と性別を組み合わせ、カテーテル検査前の判別性能を検証

心筋梗塞とよく似た症状を示す「たこつぼ症候群」を、血液検査などから早い段階で見分ける新たな診断指標が開発された。
スイスのチューリヒ大学などの国際研究グループが2026年8月、論文で報告した。
心筋梗塞と症状が似る「たこつぼ症候群」

- たこつぼ症候群は心筋梗塞を含む急性冠症候群と症状が似ており、現状では両者の区別に冠動脈造影が必要となる。
- 研究グループは、4つの血液指標と性別を組み合わせた診断指標「BioTAK」を開発した。
- BioTAKにはNT-proBNP、PAM、sLOX-1、LDLコレステロールが用いられ、カテーテル検査前の判別を目指す。
発表資料によると、たこつぼ症候群は、強い精神的または身体的ストレスをきっかけに起こることが多い急性の心疾患で、主に閉経後の女性に見られるという。突然の胸痛や心電図の変化、心臓の障害を示す血液検査値の上昇など、心筋梗塞を含む急性冠症候群と共通する症状が多く、見分けるのが難しい。
また、たこつぼ症候群は、心筋梗塞のように冠動脈の閉塞が原因となる病気ではない。ただ、両者を区別するためには、現状ではカテーテルを使った冠動脈造影によって血管の状態を確認する必要があると説明している。
研究グループは、こうした2つの病気をカテーテル検査の前に見分ける方法を検討した。対象となった3615人のうち1823人のデータを使って診断指標を作り、別の1792人でその性能を確かめた。
研究グループは、冠動脈造影を受ける前に患者から採取した血液を調べ、たこつぼ症候群と急性冠症候群を見分けるのに役立つ項目を機械学習で選び出した。
その結果、心臓への負担やストレス反応、動脈硬化性プラークの不安定さ、脂質の状態を反映する4つの血液指標と性別を組み合わせた診断指標「BioTAK」を作成した。血液指標にはNT-proBNP、PAM、sLOX-1、LDLコレステロールが含まれる。
約9割を検査前に低確率または高確率へ分類

- BioTAKの診断性能を示すAUCは、開発集団で0.97、検証集団で0.93だった。
- 開発集団では約9割を、たこつぼ症候群の可能性が「低い」または「高い」にカテーテル検査前に分類できた。
- BioTAKだけでカテーテル検査を省けるわけではなく、実用化には追加検証や検査体制の整備が必要となる。
BioTAKは、たこつぼ症候群と急性冠症候群を高い精度で見分けた。診断性能を示すAUCは、BioTAKを作った患者集団で0.97、検証用の別の患者集団でも0.93となった。AUCは1に近いほど、2つの病気を見分ける力が高いことを示す。
さらに、BioTAKを作った患者集団では、あらかじめ決めた基準で判定すると、約9割をたこつぼ症候群の可能性が「低い」または「高い」のどちらかにカテーテル検査の前に振り分けることができた。こうした情報を使えば、すべての患者に同じように検査を進めるのではなく、カテーテル検査を急ぐ必要があるかどうかを判断する手がかりになる可能性がある。
ただし、BioTAKだけでカテーテル検査を省けるわけではない。心電図でST上昇が見られる場合や、緊急のカテーテル治療が必要と判断される場合には、これまで通り速やかな冠動脈造影が必要になる。BioTAKは、そうした緊急性の高い患者を除いたうえで、カテーテル検査を急ぐべきかどうかを判断する材料として使える可能性がある。
また、BioTAKで使うsLOX-1とPAMは、現在は一般の病院で日常的に測定されている検査ではない。測定にも約3~5時間かかるため、すぐに広く使える段階ではなく、実際の診療に取り入れるには、さらに検証や検査体制の整備が必要になる。
たこつぼ症候群は、症状だけでは心筋梗塞と見分けにくい。血液検査などで早い段階から可能性を判断できれば、カテーテル検査が必要な患者を見極めやすくなり、不要な検査を減らせる可能性がある。
参考文献
Researchers create clinical tool that can diagnose ‘broken heart’ syndrome(King’s College London)
https://www.kcl.ac.uk/news/researchers-create-clinical-tool-that-can-diagnose-broken-heart-syndrome
Wenzl FA, Schweiger V, Smolle MA, Zech D, Akhmedov A, Wang P, Lapikova-Bryhinska T, Wang Y, Liberale L, Santos K, Ilina Y, Kraler S, Bergmann A, Kaufmann P, Kahles F, von Eckardstein A, Roffi M, Räber L, Cammann VL, Ghadri JR, Di Vece D, Lüscher TF, Templin C; InterTAK and SPUM-ACS investigators. Takotsubo syndrome diagnosis: the biomarker-based BioTAK score. Eur Heart J. 2026 Aug 31:ehag597. doi: 10.1093/eurheartj/ehag597. Epub ahead of print. PMID: 42670759.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42670759/
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。











