研究

前糖尿病+高血圧に「心筋のダメージ」が加わると心不全リスク約10倍

血液検査で早期発見の可能性、米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが報告

医師が聴診器で男性患者の胸部を診察している様子
医師が聴診器で男性患者の胸部を診察する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 高血圧患者の中でも、前糖尿病を併せ持つ人で、血液検査で測定できる心筋障害や心臓ストレスが確認された場合に、心不全のリスクが上昇すると明らかになった。

 米ジョンズ・ホプキンス大学の研究グループが2026年1月に発表した。

「無症候性の心筋障害」を検査で把握

コレステロールなどの数値が記載された血液検査結果表
コレステロールなどの数値が記載された血液検査結果表。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 前糖尿病は血糖値が正常より高いが糖尿病と診断されない状態で、米国では約1億1500万人が該当すると推定されている。
  • 研究では高血圧患者8234人を対象に、血液検査の高感度トロポニンI(hs-cTnI)とNT-proBNPを用いて無症候性の心筋障害や心臓ストレスを評価した。
  • 研究開始時点で前糖尿病は39.7%、無症候性心筋障害は35.7%、心臓ストレスは43.6%に確認された。

 前糖尿病は血糖値が正常より高いものの、糖尿病と診断されるほどではない状態を指す。米国では2026年時点で約1億1500万人が当てはまると推定され、心臓や腎臓の病気のリスクと関連することが知られている。

 今回の研究では、前糖尿病や高血圧、心臓にダメージが生じている状態が、心不全リスクにどうつながるかを検証した。

 解析対象となったのは、米国国立衛生研究所(NIH)の臨床試験「SPRINT(スプリント)」に参加した50歳以上の糖尿病と診断されていない高血圧患者8234人のデータ。

 研究グループは、前糖尿病を「空腹時血糖100〜125 mg/dL」と定義した。さらに、症状を伴わない「無症候性の心筋障害」は「高感度トロポニンI(hs-cTnI)」、心臓ストレスは「NT-proBNP」という血液検査を用いて評価した。これらは心臓に負担や微細な損傷が生じた際に血液中で増加することが分かっている。

 研究開始時点で、参加者の39.7%が前糖尿病であると判定されたほか、無症候性心筋障害は35.7%、心臓ストレスは43.6%が陽性と判定された。

 研究チームは、これらの検査項目の値とその1年後の変化を追跡し、心不全発症との関連を統計モデルで解析した。

心不全リスクは約10倍

医療従事者が腕から採血している様子
医療従事者が腕から採血する様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 前糖尿病に加えて心筋障害や心臓ストレスの指標が高い人は、心不全を発症するリスクが約10倍高かった。
  • 1年後の再検査でhs-cTnIやNT-proBNPが25%以上増加した場合、前糖尿病の人では心不全リスクがそれぞれ3.05倍、2.39倍に上昇していた。
  • 血液バイオマーカーを測定することで、日常診療でも心不全リスクの高い前糖尿病患者を早期に見つけられる可能性がある。

 中央値3.2年の追跡期間中、前糖尿病に加えて心筋のダメージや心臓への負担を示す指標が高値だった人は、心不全を発症する可能性が約10倍高かった。一方、前糖尿病がない人で同じ指標が高かった場合でもリスクは上昇したが、増加は約3〜4倍にとどまった。

 さらに、1年後の再検査で、hs-cTnI(心筋障害の指標)やNT-proBNP(心臓の負担を示す指標)が25%以上増えていた場合、前糖尿病の人では心不全のリスクがそれぞれ3.05倍、2.39倍に上昇していた。

 なお、前糖尿病だけでは心不全リスクの明確な増加は確認されなかった。

 研究グループは、前糖尿病に伴う代謝の乱れが、心血管疾患の進行を早める可能性があると指摘している。

 血液バイオマーカーを測定すれば、日常診療の中でも心不全リスクの高い前糖尿病患者を比較的簡単に見つけることができ、早い段階での予防につながる可能性があるという。

 研究成果は2026年1月、心臓病分野の医学誌「JAMA Cardiology」に掲載された。

参考文献

New Study Offers Strong Evidence of Elevated Heart Failure Risk in Adults with Prediabetes, Hypertension and Subclinical Heart Injury or Stress(Johns Hopkins Medicine)

https://www.hopkinsmedicine.org/news/newsroom/news-releases/2026/03/new-study-offers-strong-evidence-of-elevated-heart-failure-risk-in-adults-with-prediabetes-hypertension-and-subclinical-heart-injury-or-stress

Kaze AD, Juraschek SP, Cohen JB, Singh S, Ndumele CE, Ballantyne CM, Berry JD, Echouffo-Tcheugui JB. Prediabetes, Subclinical Myocardial Injury or Stress, and Heart Failure Risk for Adults With Hypertension. JAMA Cardiol. 2026 Jan 14:e254927. doi: 10.1001/jamacardio.2025.4927. Epub ahead of print. PMID: 41533355; PMCID: PMC12805490.

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41533355/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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