がん検診を「受けてもらう」だけでなく、職場と自治体に分かれた検診情報を連携させ、科学的根拠が蓄積してきた新しい検査を、自治体で実際に運用できるか検証する──。
がん検診の受診を増やすために、どのような国の施策が求められているのか。
第67回日本人間ドック・予防医療学会学術大会のシンポジウムでは、厚生労働省の担当官が国のがん対策と検診政策の最新動向を説明した。
受診率60%、精密検査90%へ 職域も含めて対策
厚生労働省や環境省が入る中央合同庁舎の外観。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 国は2028年度までに、がん検診受診率60%、精密検査受診率90%の達成を目標としている。
- 自治体と職場で別々に管理されてきたがん検診情報を、本人の同意などを前提に一体的に把握する仕組みの整備が進んでいる。
- 職場での受診勧奨や事業者・保険者の連携、データの可視化や地域ごとの課題分析などを通じて受診率向上を図る。
講演では、厚労省が現在進めている施策が説明された。
国の第4期がん対策推進基本計画では、がん検診受診率60%、精密検査受診率90%を目標としている。さらに「攻めの予防医療」では、2028年度までの達成を目指し、自治体だけでなく、職場での受診勧奨や事業者と保険者の連携を強める方針が示されている。
大きな課題の一つが、職場で受けたがん検診の情報を自治体が把握しにくいことだ。会社員などでは職域で検診を受ける人も多いが、自治体検診とは制度やデータ管理が分かれている。担当官によれば、国は、本人の同意などを前提に、職域を含めたがん検診情報を一体的に把握する仕組みの整備を進めている。2026年7月の「がん検診のあり方に関する検討会」でも、独立した議題として「がん検診情報の一体的な把握」が取り上げられた。
職場で受けたがん検診の情報を自治体側でも把握できるようにするため、自治体の健康管理システムの標準仕様も2026年1月に改定され、胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮頸がんの職域検診情報を扱うための項目が追加された。
2026年度からは「がん検診受診率向上推進事業」も始まり、ポータルサイトによる情報発信、データの可視化、都道府県ごとの課題分析などを進めている。
低線量CTは5自治体で実証、新しい検診も「実際に使えるか」を検証
画像検査を受ける患者と対応する医療スタッフ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 重喫煙者を対象とする低線量CT肺がん検診について、2026年度から小樽市、柏市、横浜市、小諸市、飯山市の5自治体で実証事業が始まった。
- 対象者の選定や受診勧奨、CTの撮影・読影、要精密検査者の管理など、自治体検診として実際に運用できるかを検証する。
- 国の指針にない検査についても、死亡率減少効果や偽陽性・過剰診断などの不利益を含めて評価し、社会実装につなげる仕組みが検討されている。
もう一つの動きが、新しいがん検診を実際の地域で検証する取り組みだ。
肺がんでは、喫煙本数が多い、あるいは喫煙歴の長い重喫煙者を対象とする低線量CT検診について、死亡率を減らす効果を示す研究が蓄積してきた。2026年度には厚労省が、小樽市、柏市、横浜市、小諸市、飯山市の5自治体で実証事業を開始した。
低線量CTについては死亡率減少を示す研究が蓄積しており、今回の実証では、自治体の検診として実際に運用できるかが大きな焦点となる。対象者をどう選ぶか、受診をどう勧めるか、CTの撮影や読影、要精密検査となった人の管理をどう行うかなどを検証する。
PREVONOで伝えた、マンモグラフィに超音波を加える乳がん検診を検証するJ-STARTについても言及された。J-STARTでは超音波を加えることで乳がんをより多く見つけられることなどが示されているが、死亡率減少効果はまだ確立していない。
国の対策型がん検診では、単に「がんが多く見つかる」だけでは不十分で、そのがんによる死亡を減らせるか、偽陽性や過剰診断などの不利益を上回る利益があるかが重視される。
一方で、現在の国の指針に入っていない検査を一律に排除するのではなく、有望な検査については学会や企業と自治体をつなぎ、効果や不利益を検証する仕組みも検討されている。
自治体の対策型検診と、人間ドックや職域で行われる任意型検診は、これまで別々に扱われる面が大きかった。今後は、実際のデータを集めながら、新しい検査をどのように評価し、社会実装につなげるかが一段と重要になりそうだ。