大腸がんは、がんの前段階である腺腫など「前がん病変」から時間をかけて進むことが知られている。前がん病変の中には、内視鏡で出っ張ったポリープとして見つかるものもあり、必要に応じて切除することが予防につながる。
フランス国立保健医学研究機構(Inserm)などの研究グループは、前がん病変の中で免疫がどのように働いているかを調べ、大腸がんへ進む仕組みの一端を明らかにした。
前がん病変の中で免疫が働いていた
大腸ポリープを表した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
大腸がんの多くは、腸の粘膜にできる腺腫などの前がん病変から時間をかけて進むことがある。
フランスの研究グループは、69人の患者から得られた258個の大腸前がん病変を解析した。
ポリープができにくい患者の病変では、T細胞や三次リンパ構造など、免疫ががん化を抑えようとする特徴が見られた。
大腸がんの多くは、腸の粘膜にできる前がん病変から発生する。こうした病変は最初からがんではないが、時間の経過とともにがんへ進むことがある。
今回の研究では、69人の患者から得られた258個の大腸前がん病変を解析した。研究グループは、ポリープができる頻度の低い患者と高い患者を比べ、病変の周囲で免疫細胞がどのように働いているかを調べた。
結果として、ポリープができにくい患者の病変では、免疫が病変を見張り、がん化を抑えようとしているような特徴が見られた。
特に、がんになりかけた細胞を見つけて排除しようとする「免疫監視機構」が強く働いている可能性が示された。免疫監視は、体内に生じた異常な細胞を免疫が見つけ、排除したり、増殖を抑え込んだりする仕組みとして注目されている。
病変の中には、がんになりかけた細胞を攻撃するT細胞などが多く集まっていた。さらに、免疫細胞が局所で働くための拠点のような「三次リンパ構造」も、より成熟した形で確認された。
これは、前がん病変の段階から、体の免疫が異常な細胞を見つけて抑え込もうとしている可能性を示している。
早期に見つけて対処する重要性を再確認
大腸内視鏡検査に使われるスコープ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
ポリープができにくい患者の病変では、遺伝子の働きを調節する非コードRNAが多く見られ、免疫が活発に働く特徴とも結びついていた。
一方で、ポリープができやすい患者の病変では非コードRNAが少なく、見た目には良性でも、がん化が進んだ状態に近い特徴が示された。
今回の成果は、大腸内視鏡などで前がん病変を早期に見つけ、必要に応じて切除や経過観察を行う重要性を示している。
研究では、免疫の働きとともに、「非コードRNA」と呼ばれる分子にも注目した。非コードRNAは、タンパク質そのものを作る設計図ではないが、遺伝子の働き方を調節するRNAだ。
ポリープができにくい患者の病変では、この非コードRNAが多く見られ、免疫が活発に働く特徴とも結びついていた。がん化を抑える免疫の働きが強い病変には、非コードRNAといういわば「目印」のような特徴も現れていたといえる。
一方、ポリープができやすい患者の病変では、こうした非コードRNAは少なく、見た目には良性でも、遺伝子の働き方はがん化が進んだ状態に近い特徴を示していた。
研究グループは、非コードRNAが、免疫が前がん細胞を見つけやすくする働きに関わる可能性があると見ている。ただし、この仕組みはまだ仮説の段階で、今後さらに実験で確かめる必要がある。
今回の研究は、すぐに新しい検査や治療に直結するものではない。一方で、前がん病変の段階で、既に免疫や遺伝子調節の違いが現れていることを示した点は重要だ。
大腸がんを防ぐ上では、前がん病変を見つけ、早い段階で対応することが基本になる。今回の成果は、大腸内視鏡などによるポリープの確認と、必要に応じた切除や経過観察の重要性をあらためて示すものといえる。
参考文献
From precancerous lesions to colorectal cancer: shedding light on unexpected biological mechanisms(Inserm)
https://presse.inserm.fr/en/de-la-lesion-precancereuse-au-cancer-colorectal-la-mise-en-lumiere-de-mecanismes-biologiques-inattendus/72979/
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https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42268933/