コラム

尿中エクソソームの「マイクロRNA」でがんを検出

名古屋大学などが「ナノワイヤ」を用いた解析法を報告

尿検査の書類の上に置かれた採尿容器。
尿検査で使用する採尿容器。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 引き続き、尿を用いたリキッドバイオプシーの研究について見ていく。

 尿中の「エクソソーム」に含まれるマイクロRNAを使い、がんを検出する方法の可能性が報告された。

 名古屋大学などの研究グループは、複数のマイクロRNAを解析することで、がん検出に応用できる可能性を示した。研究成果は2024年10月に論文発表された。

微小な情報からがんの可能性を調べる

健康診断の検査結果表の尿検査項目を、虫眼鏡で確認している様子。
尿検査を含む健康診断結果を確認する場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 尿は採取しやすく、体への負担が少ないため、がんの早期発見に向けた検査材料として注目されている。
  • 研究グループは、尿中エクソソームに含まれるマイクロRNAを調べ、がんに関係する変化を読み取ろうとした。
  • 酸化亜鉛ナノワイヤを使い、尿中の小さなエクソソームを効率よく回収する方法が用いられた。

 がんの早期発見では、血液検査や画像検査が広く使われている。一方で、採血や検査設備が必要になるため、より負担が少なく、繰り返し行いやすい検査法も求められている。

 研究グループが目指したのは、尿だけで体内のがんに関係する変化を読み取る方法の開発だ。尿は採取しやすく、体への負担も少ない。ただし、尿の中に含まれるがん由来の情報は多くないため、必要な情報をどう集めるかが課題になる。

 そこで注目したのが、尿中のエクソソームだ。エクソソームは、細胞から放出される小さな粒子で、細胞外小胞の一つに含まれる。中にはマイクロRNAやタンパク質など、細胞の状態を反映する情報が入っている。

 マイクロRNAは、遺伝子の働きを調整する短いRNAだ。がんがあると細胞の状態が変わり、エクソソームに含まれるマイクロRNAの種類や量にも変化が出る可能性がある。

 今回の研究では、「酸化亜鉛ナノワイヤ」という材料を使って尿中のエクソソームを回収した。酸化亜鉛ナノワイヤは、酸化亜鉛でできた細い針状の構造で、表面積が大きい。尿の中に含まれる小さなエクソソームを効率よく捕まえるために使われた。

 その上で、研究グループは、回収したエクソソームに含まれる複数のマイクロRNAを解析した。単一の目印ではなく、複数のマイクロRNAの組み合わせから、がんに関係する変化を読み取ろうとした。

複数のマイクロRNAを組み合わせてがんを判別

住宅のトイレと、横に置かれたトイレットペーパー。
家庭内のトイレ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • がん患者と非がんの人の尿サンプルを比較し、尿中エクソソームに含まれる複数のマイクロRNAが解析された。
  • 複数のマイクロRNAを組み合わせた解析により、がんと非がんを区別できる可能性が示された。
  • 実際の検診に使うには、より多くの人での検証や、がん以外の病気との区別が今後の課題になる。

 研究では、がん患者75人と非がん75人の尿サンプルを比較した。尿中エクソソームを酸化亜鉛ナノワイヤで回収し、その中に含まれる複数のマイクロRNAを調べた。

 その結果、がん患者の尿中エクソソームでは、非がんの人とは異なるマイクロRNAの組み合わせが見られた。1種類だけを見るのではなく、複数のマイクロRNAの増減をまとめて解析することで、がんと非がんを区別しやすくなる可能性が示された。

 尿を使う検査は、体への負担が少なく、繰り返し行いやすい。このため、将来的には健康診断や治療後の経過観察に応用できる可能性がある。

 ただし、今回の研究は、2024年に報告された初期段階の成果だ。実際の検診に使うために、さらに多くの人で確かめることになる。どのがんをどのくらい見つけられるのかなどが課題になり得る。尿中エクソソームを使う検査は、尿からがんの情報を読むリキッドバイオプシーの一つとして、有用性の検証が進む技術として注目される。

参考文献

Yasui T, Natsume A, Yanagida T, Nagashima K, Washio T, Ichikawa Y, Chattrairat K, Naganawa T, Iida M, Kitano Y, Aoki K, Mizunuma M, Shimada T, Takayama K, Ochiya T, Kawai T, Baba Y. Early Cancer Detection via Multi-microRNA Profiling of Urinary Exosomes Captured by Nanowires. Anal Chem. 2024 Oct 29;96(43):17145-17153. doi: 10.1021/acs.analchem.4c02488. Epub 2024 Oct 18. PMID: 39422334; PMCID: PMC11525924.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39422334/

ただし、今回の研究は、2024年に報告された初期段階の成果だ。実際の検診に使うには、さらに多くの人で確かめる必要がある。どのがんをどのくらい見つけられるのか、がん以外の病気と区別できるのかも今後の課題になる。尿中エクソソームを使う検査は、尿からがんの情報を読むリキッドバイオプシーの一つとして、有用性が今後検証されていく技術といえる。<

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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