研究

標準検査で見つけにくい精巣がんを血液から検出へ

免疫反応を手掛かりに93%を判定 米国メイヨークリニックが発表

下腹部に両手を当てる男性の上半身。排尿トラブルや下腹部の不調を示すイメージ。
下腹部の違和感や排尿に関する不調を抱える男性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 標準的な血液検査では見つけにくい精巣がんを、血液中の免疫反応から検出する新しい方法が示された。

 米国メイヨークリニックの研究グループが、2026年4月に発表した。

従来の腫瘍マーカーでは限界があった

医療従事者が血液検体の入った試験管をラックに入れて持つ検査室の様子。
血液検体を用いた検査を行う検査室。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 精巣がんは若い世代に多く、早期発見できれば治療しやすいがんとされる。
  • 従来の腫瘍マーカーは、すべての精巣がんで上がるわけではなく、見逃しの課題があった。
  • 新しいGCT-iSIGNは、血液中の免疫反応を調べることで、従来法では見つけにくい症例も検出できる可能性を示した。

 精巣がんは、思春期から若い成人に多いがんの一つ。早く見つかれば治療しやすいがんでもあり、早期発見が重要になる。

 精巣がんでは、血液中の腫瘍マーカーを調べることがある。腫瘍マーカーとは、がんがある場合に血液中で増えることがある物質。しかし、すべての精巣がんで腫瘍マーカーが上がるわけではない。腫瘍が十分な量のマーカーを出さない場合、標準的な血液検査では見つけにくくなる。

 今回、研究グループは、がんそのものが出す物質ではなく、体の免疫ががんにどう反応しているかに注目した。

 対象としたのは、精巣がんで最も多いタイプとされる「胚細胞腫瘍」。胚細胞腫瘍は、精子や卵子の元になる生殖細胞から発生する腫瘍を指す。

 この方法によって開発されたのが、「GCT-iSIGN」で、研究では427件の血液サンプルを使って検証した。

 その結果、GCT-iSIGNは胚細胞腫瘍のある人の93%を検出し、胚細胞腫瘍ではない対照群の99%を正しく陰性と判定できた。

 特に注目されるのは、従来の腫瘍マーカーでは検出しにくかった24例のうち、23例を検出した点。従来の腫瘍マーカーが陰性でも、免疫反応を調べることで、見逃されやすい精巣がんを見つけられる可能性が示された。

がんの種類を見分け、治療方針に役立つ可能性

青い手袋を着けた手が、血液検体の入った採血管を持っている様子。
血液検体を確認する検査現場。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 研究グループは、胚細胞腫瘍の有無を調べるGCT-iSIGNに加え、タイプ判別用のSem-iSIGNも開発した。
  • 胚細胞腫瘍は主にセミノーマと非セミノーマに分けられ、タイプによって治療方針が変わることがある。
  • Sem-iSIGNは将来、精巣がんの種類を見分け、治療方針を決める補助検査になる可能性がある。

 さらに、研究グループは、GCT-iSIGNとは別に、「Sem-iSIGN」という検査法も開発した。

 GCT-iSIGNが胚細胞腫瘍の有無を調べるための検査であるのに対し、Sem-iSIGNは胚細胞腫瘍のタイプを判別するための検査である。

 胚細胞腫瘍は、精巣がんの多くを占める腫瘍で、大きくセミノーマと非セミノーマに分けられる。どちらに当てはまるかによって、治療の考え方が変わることがある。そのため、がんの有無だけでなく、がんのタイプを見分けることも重要になる。

 Sem-iSIGNは、精巣がんの主な2つのタイプを見分けるために作られた。タイプによって治療の考え方が変わる場合があるため、将来、治療方針を決める際の補助になる可能性がある。ただし、実際の診療で使うには、さらに検証が必要となる。

 精巣がんの早期発見に貢献する検査として注目される可能性がある。

参考文献

Blood test shows promise for detecting testicular cancer when standard markers miss(Mayo Clinic)
https://newsnetwork.mayoclinic.org/discussion/blood-test-shows-promise-for-detecting-testicular-cancer-when-standard-markers-miss/

Hammami MB, Knight AM, Kherbek H, Costello BA, De Lorenzo SB, Leibovich BC, Cheville JC, Guo Y, LaFrance-Corey RG, Paramasivan NK, Hinson SR, Sagen J, Olson JE, Algeciras-Schimnich A, Pittock SJ, Mills JR, Dasari S, Dubey D. Whole-proteome phage immunoprecipitation sequencing reveals germ cell tumor-specific immunosignature. Nat Commun. 2026 Apr 1. doi: 10.1038/s41467-026-71174-9. Epub ahead of print. PMID: 41922334.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41922334/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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