研究

乳酸菌由来ポストバイオティクス食品で歯ぐきの炎症が改善

東京科学大学が発表

洗面後の女性が歯ブラシを口元に当て、歯みがきをしている様子。
毎日の歯みがきによる口腔ケア。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 乳酸菌由来のポストバイオティクス食品を摂取することで、歯ぐきの炎症が改善する可能性が示された。

 東京科学大学の研究グループが、2026年4月に発表した。

歯ぐきの出血を抑える食品として検証

青色で表現された細菌のイラスト。口腔内の細菌や微生物を示すイメージ。
口腔内や体内に存在する細菌。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 歯肉炎は歯周病の前段階で、早期のケアにより健康な状態へ戻せる可能性がある。
  • 研究では、加熱殺菌した乳酸菌ONRICb0240を含む食品の効果が検証された。
  • ポストバイオティクスは保存性や品質安定性に優れ、日常のオーラルケアを補う選択肢として期待される。

 歯周病は、一般的な慢性炎症性の病気。進行すると歯を失う原因になる。歯周病の前段階に当たる歯肉炎は、炎症が歯ぐきに限られている段階で、早めにケアすれば健康な状態に戻せる可能性がある。

 今回、研究グループが注目したのは、乳酸菌「ラクティプランティバシラス・ペントサス(Lactiplantibacillus pentosus) ONRICb0240」。

 研究では、この乳酸菌を加熱殺菌した成分を含む食品が使われた。生きた菌ではなく、加熱処理した菌体を使うため、保存しやすく、品質が安定しやすいとされる。

 こうした細菌由来の成分は「ポストバイオティクス」と呼ばれる。生きた菌を使うプロバイオティクスとは異なり、加熱死菌などの成分を活用する点が特徴だ。

 ポストバイオティクスは、毎日の歯磨きや歯科でのケアを補う、新しいオーラルケアの選択肢として期待されている。研究では、軽い歯ぐきの炎症や出血がある成人を対象に、2つのグループに分けた。一方にはONRICb0240を含む食品を、もう一方には乳酸菌を含まない食品を摂取してもらい、6週間後の歯ぐきの状態を調べた。

6週間で歯ぐきの出血率が低下

室内で歯ブラシを口元に当てる男性。歯みがきによる口腔ケアを示すイメージ。
歯みがきで口腔ケアを行う男性。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • ONRICb0240を含む食品を摂取したグループでは、歯ぐきからの出血を示すBOPが有意に減少した。
  • BOPは17.6%から12.3%に低下し、乳酸菌を含まない食品のグループとの差も確認された。
  • 歯肉炎指数も改善し、深刻な副作用は報告されなかったため、補助的なセルフケアへの応用が見込まれる。

 研究の結果、ONRICb0240を含む食品を摂取したグループでは、歯ぐきからの出血を示すBOP(プロービング時の出血)が有意に減少した。BOPは、歯ぐきの炎症を見る指標の一つ。

 発表によると、BOPは開始時の17.6%から、6週間後には12.3%に低下。相対的には約30%の減少に当たる。乳酸菌を含まない食品を摂取したグループと比べても、統計的に有意な差が確認された。

 また、歯科医師が歯ぐきの腫れや赤み、出血を見て評価する歯肉炎指数も、ONRICb0240を含む食品を摂取したグループで有意に低下した。試験期間中、乳酸菌入り食品に起因する深刻な副作用は報告されなかった。

 今回の成果は、歯磨きや歯科治療に代わるものではないが、ポストバイオティクス食品が歯ぐきの炎症を抑える補助的な方法になる可能性を示した。食品として続けやすい形であれば、日常的な予防やセルフケアの選択肢が広がる可能性がある。

参考文献

乳酸菌由来ポストバイオティクス食品の摂取で歯ぐきの炎症が改善(東京科学大学)
https://www.isct.ac.jp/ja/news/w4yrlx7j5yrn

Liu A, Ishiguro M, Matsumura Y, Kwak K, Shimizu S, Watabe K, Nagashima H, Maekawa S, Iwata T. Consuming heat-inactivated Lactiplantibacillus pentosus ONRICb0240-containing postbiotics reduces gingival inflammation: A double-blind randomized clinical trial. J Periodontol. 2026 Apr 19. doi: 10.1002/jper.70141. Epub ahead of print. PMID: 42002984.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/42002984/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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