研究

MRIで多発性硬化症を高精度に判別

若年層で診断精度向上、九州大学が新たな画像指標を報告

脳の画像を確認する医師の手元
脳画像を確認する医師の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 若い世代に多く見られる多発性硬化症を、MRI画像からより正確に見分ける手掛かりが報告された。

 九州大学病院などの研究グループによる成果で、2026年2月に論文が掲載された。

若い世代で発症しやすい多発性硬化症

CT装置で検査を受ける女性
CT装置で検査を受ける様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 多発性硬化症は、脳や視神経、脊髄が傷つく神経の病気で、若い成人に発症しやすい。
  • 似た症状を示す病気も多く、診断の遅れや誤診が起こりやすいことが課題となっている。
  • 研究では192人を対象に、高精度MRIで中心静脈サインや皮質病変などの特徴を詳しく調べた。

 多発性硬化症は、免疫の異常によって脳や視神経、脊髄に異常が起こる神経の病気で、若い成人で発症しやすいことが知られている。

 この病気になると、体の動きや脳の働きに影響が出ることがある一方で、似た症状を示す病気も少なくなく、診断の遅れや誤診が起きやすいことが課題となってきた。

 報告によれば、MRI技術の進歩によって、脳や神経などの病変の中心に小さな静脈が見える「中心静脈サイン」、病変の縁に鉄の沈着を伴う「パラマグネティックリム病変」、さらに脳の表面にできる「皮質病変」といった新たな画像の手掛かりが注目されている。

 欧米ではこれらが多発性硬化症を見分けるのに役立つとされ、2024年に改訂された国際診断基準にも取り入れられた。

 一方で、日本人を含むアジア人で、こうしたMRIの手掛かりがどれくらい役立つかは十分に調べられていなかった。

 そこで研究グループは、多発性硬化症や似た病気を調べるのに向いた高精度のMRI撮像法を整え、合計192人を対象に調べた。

 それぞれの患者について、中心静脈サイン、パラマグネティックリム病変、皮質病変がどれくらい見られるか、また、その数を詳しく調べた。

組み合わせで診断精度が上昇

検査装置の内部から見た患者の様子
検査装置内から見た検査中の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 新しいMRI画像の手掛かりは、いずれも多発性硬化症を見分けるのに役立つことが示された。
  • 1つずつではなく複数を組み合わせることで、診断の正確さがさらに高まった。
  • 特に若い世代で有用性が高く、早期診断や適切な治療につながることが期待される。

 その結果、これらの新しいMRI画像の手掛かりはいずれも多発性硬化症を見分けるのに役立ち、1つずつ見るだけでなく組み合わせて調べることで、より正確に見分けられることが分かった。

 特に若い世代では、その役立ち方がよりはっきりしていた。若い世代に多い病気だけに、この年代で早く正確に見つけやすくなる意義は大きい。

 今回の研究は、欧米で注目されてきたMRIの手掛かりが、アジア人の患者でも役立つことを示したもので、今後は多発性硬化症の早期診断や、よりよい治療につながることが期待される。

参考文献

多発性硬化症の診断精度を向上させる新たなMRI画像指標──組み合わせや若年層対象でさらに診断精度が向上、早期診断に期待──(九州大学)
https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/researches/view/1437

Shinoda K, Matsuyoshi A, Takeuchi H, Watanabe M, Masaki K, Igeta E, Kamano H, Yamashita K, Togao O, Isobe N. Diagnostic performance of central vein sign, paramagnetic rim lesion and cortical lesion in Asian patients with multiple sclerosis. Mult Scler. 2026 Feb 26:13524585261420650. doi: 10.1177/13524585261420650. Epub ahead of print. PMID: 41755542.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41755542/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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