膀胱がんの一部では、内視鏡手術でがんを取り切れた後、追加治療を行わず、定期検査で慎重に経過を見る方法(以下、無治療経過観察)が選択肢になり得ることが示された。
富山大学、筑波大学、国立がん研究センター、日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)などの研究グループが2026年4月に発表した。
再発予防として行われてきたBCG治療の負担
泌尿器系の構造を示した画像を用いて、医師が患者に説明する診療場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- T1膀胱がんは、がんが粘膜下まで広がる一方で筋層には達していない状態だが、再発リスクが高いとされる。
- 従来は再発予防のため、BCGを膀胱内に注入するBCG膀胱内注入療法が広く行われてきた。
- BCG治療には頻尿、排尿痛、血尿などの副作用や、通院・処置に伴う負担が課題としてあった。
膀胱がんは、血尿などをきっかけに見つかることがある。診断後は、内視鏡を使って膀胱内のがんを切除し、がんの広がりや取り残しの有無を確認する。その結果をもとに、再発を防ぐ治療を行うか、定期検査で経過を見るかが判断される。
今回の試験で対象となったのは、T1膀胱がんの患者。T1とは、腫瘍の広がりを示す分類の一つで、膀胱がんでは、がんが膀胱の粘膜下まで広がっているものの、筋層には達していない状態を指す。筋層には達していないため早期の段階に含まれるが、高悪性度の場合は再発リスクを考慮する必要がある。
このため従来は、再発予防を目的にBCG膀胱内注入療法が広く行われてきた。これは、結核予防に用いられるBCGを膀胱内に注入する治療だ。膀胱がんの再発を抑える効果が期待される一方で、頻尿、排尿痛、血尿などの副作用が起こることがある。通院や処置そのものの負担もあり、日常生活への影響が課題とされてきた。
そこで研究グループは、2回目の内視鏡手術でがん細胞の残存が認められなかった高悪性度T1膀胱がんの患者を対象に、BCG膀胱内注入療法と無治療経過観察を比較した。ここでいう無治療経過観察とは、追加治療を行わず、定期検査で慎重に経過を見る方法である。
試験は国内の複数施設で行われたランダム化比較第3相試験だ。これは治療法の有効性や安全性を比べるための試験で、評価されたのは、がんが再発せずに生存している期間である無再発生存期間や、副作用などだった。
定期検査で慎重に経過を見る方法が有望か
泌尿器科などの外来で、患者の症状や検査結果について確認する診察場面。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 無治療経過観察は、無再発生存期間についてBCG膀胱内注入療法に劣らないことが示された。
- 全生存期間でも明らかな差は認められず、条件を満たす患者では追加治療をしない選択肢が検討できる可能性がある。
- 無治療経過観察により副作用や通院・処置の負担を減らせる可能性があるが、対象は慎重に見極める必要がある。
試験の結果、無治療経過観察のグループでは、がんが再発せずに生存している期間が、BCG膀胱内注入療法を受けたグループに劣らないことが示された。全生存期間についても、2つのグループの間で明らかな差は認められなかった。
この結果は、2回目の内視鏡手術でがん細胞が残っていないと確認された高悪性度T1膀胱がんの一部では、必ずしも全員に追加のBCG治療を行う必要はなく、定期検査で慎重に経過を見る方法も選択肢になり得ることを示している。
副作用についても、無治療経過観察のグループでは少ない傾向が確認された。BCG膀胱内注入療法では、頻尿、排尿痛、血尿など、排尿に関わる症状が起こることがある。追加治療を行わずに済む患者を適切に見極められれば、再発に注意しながら、身体的な負担や通院・処置に伴う負担を減らせる可能性がある。
今回の研究の意義は、「治療をしない」という選択を放置ではなく、条件を満たした患者に対する計画的な経過観察として検証した点にある。膀胱がんでは、検査で見つけることに加えて、切除後の再発をどう防ぎ、どのように経過を見ていくかが重要になる。今回の結果は、診断後や治療後の選択肢を考える上で、新たな根拠を示すものといえる。
ただし、今回の結果はすべての膀胱がん患者に当てはまるわけではない。がんの深さ、悪性度、残存の有無、再発リスクなどによって適した方針は異なるため、治療後の対応は定期検査の計画も含めて慎重に決める必要がある。
適切な経過観察により、がん診療をより良くできる可能性が注目される。