同じ年齢でも、体の老化が進む人はがんリスクが高いのか
生物学的年齢をDNAメチル化から推定、ドイツ高齢者研究が関連を報告

実際の年齢だけでなく、体の老化の進み方が、がんのリスクと関係する可能性が示された。
ドイツの研究グループが、2026年3月に発表した。
同じ年齢でも、体の老化の進み方は異なる

- がんは年齢とともに増えるが、同じ年齢でもがんになりやすさには個人差がある。
- 研究では、DNAメチル化の変化を使い、体の老化状態を示す「生物学的年齢」を推定した。
- ドイツの50〜75歳の1916人を対象に、血液データとがん発症の情報を長期的に調べた。
がんは年齢とともに増える病気。高齢化が進む中で、がんをどう予防し、どのように早く見つけるかは大きな課題になっている。
ただし、同じ年齢の人でも、がんになりやすさは同じではない。生活習慣、体質、過去の病気などによって、体の老化の進み方には違いがあると考えられる。そこで注目されているのが「生物学的年齢」だ。暦の年齢ではなく、体がどの程度老化しているかを示す指標である。
今回の研究では、ドイツの長期調査に参加した50〜75歳の1916人を対象にした。このうち894人では、約8年後にも同じように血液を調べ、生物学的年齢の変化を追跡した。
さらに、がんの発症については、がん登録などの情報と照合し、長期にわたって確認した。
生物学的年齢の推定には、「DNAメチル化」と呼ばれる変化を使った「エピジェネティック時計」が用いられた。DNAメチル化とは、DNAにメチル基という化学的な目印が付く変化で、加齢や病気、生活習慣などと関連して変わることがある。研究グループは、この変化を基に、体の老化の状態を数値化した。
老化が速く進む人でがんリスクが高い傾向

- 追跡期間中に513人が新たにがんと診断され、生物学的年齢が高い人ほどがんリスクが高い傾向が見られた。
- 喫煙、飲酒、肥満、運動習慣などを考慮しても、生物学的年齢とがんリスクの関連は残った。
- 8年間で老化の進み方が速い人では、その後のがんリスクが33〜37%高いという結果が示された。
研究では、追跡期間中に513人が新たにがんと診断された。
解析の結果、研究開始時点で生物学的年齢が高い人ほど、その後にがんを発症するリスクが高い傾向が見られた。
特に、長期的ながんリスクとの関係が目立った。がんのリスクは、年齢だけでなく、性別、喫煙、飲酒、肥満、運動習慣、がんの家族歴などにも左右される。そこで研究グループは、こうした影響を統計的に取り除いたうえで、生物学的年齢とがんリスクの関係を調べた。
その結果、生物学的年齢を示す複数の指標で、これらの要因を考慮しても、生物学的年齢が高い人ほど、その後にがんを発症するリスクが高い傾向が示された。
このことは、生物学的年齢が、喫煙や肥満といった既に知られているリスクとは別に、がんになりやすさを示す手がかりになる可能性を示している。
さらに注目されるのは、8年間で生物学的年齢がどのくらい進んだかを調べた点である。研究では、老化の進み方が速い人ほど、その後のがんリスクが高い傾向が見られた。複数の生物学的年齢の指標で、老化の進み方が速いほど、がんリスクが33〜37%高いという結果が示された。
これは、がんリスクを見るうえで、1回だけの検査よりも、時間をおいて体の老化の変化を追うことに意味がある可能性を示している。健康診断のように定期的にデータを集める仕組みと組み合わせれば、将来、がんのリスク評価や予防の判断材料になる可能性がある。
一方で、この研究は、参加者の健康状態を長期的に追跡したものであり、生物学的な老化が直接がんを引き起こすと証明したものではない。現時点では検診に使える段階ではないが、体の老化の速さを調べることが、将来のがんリスク評価や予防に役立つ可能性を示した成果といえる。
参考文献
Yin Q, Stevenson-Hoare J, Holleczek B, Ben Schöttker, Brenner H. Epigenetic aging and cancer incidence in a German cohort of older adults. NPJ Aging. 2026 Mar 9;12(1):41. doi: 10.1038/s41514-026-00356-y. PMID: 41803162; PMCID: PMC12992613.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41803162/
Higher Biological Age – Higher Cancer Risk
https://www.dkfz.de/en/news/press-releases/detail/higher-biological-age-higher-cancer-risk
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。





