日本

学校心臓検診ガイドラインを8年ぶり改訂、DXと地域格差是正も提言

心室肥大やQT延長などの判定見直し、日本循環器学会と日本小児循環器学会がフォーカスアップデート

青空の下に建つ学校校舎の外観。
学校施設の外観。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 小1・中1・高1を中心に心電図検査を行う学校心臓検診のガイドラインが8年ぶりにアップデートされた。

命に関わる不整脈を効果的に見つける

胸部に電極を装着し、心電図検査を受けている様子。
心電図検査を受けている様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 日本の学校心臓検診ガイドライン(2016年版)が、心電図自動診断の普及や体格変化、遺伝性不整脈・心筋症の診断進歩などを背景に「フォーカスアップデート」として改訂された。
  • 目的(早期発見・突然死予防)は保ちつつ、1次検診で精密検査対象者を選ぶ判定の考え方を見直し、心室肥大・QT延長・ST上昇の判定方法を更新した。
  • QT延長は自動判定に頼らず再確認する方針や心拍数補正の整理、ST上昇は正常でも異常に見える例を踏まえた判定の考え方を提示し、加えて遺伝性疾患など医療進歩に合わせた内容も整理した。

 心電図検査では、心臓の異常を見つけ出すための検査。日本の学校心臓検診は1970年代から制度化され、1995年に小・中・高校の1年生全員の心電図検査が義務化されるという、世界的にも特異な仕組みとなっている。

 日本循環器学会と日本小児循環器学会は「2016年版 学校心臓検診のガイドライン」を発行しているが、このたび2016年版からの診断や治療などの進歩を受け「フォーカスアップデート」として改訂した。

 背景にあるのは、心電図自動診断の普及、児童生徒の体格変化、遺伝性不整脈や心筋症の診断進歩など。

 今回の改訂は、心疾患の早期発見や心臓突然死予防などの学校心臓検診の目的を保ちつつ、精密検査の対象者を見つけ出す1次検診の判定ロジックを見直した。

 今回のアップデートでは、心臓の壁が厚くなる「心室肥大」、心臓の電気活動の異常である「QT延長」と「ST上昇」という3つの所見の判定方法が見直された。

 例えば、「心室肥大」を見つける基準では、健康なのに「異常かもしれない」と言われる人が多すぎる問題があった。

 そこで、5万人以上の健康な子どもの心電図のデータを集めて、正常や異常の基準を調べ直して、2次検診に回す目安を1000人~2000人に1人くらいに調整した。

 このほか「QT延長」や「ST上昇」も、異常として見つけ出すことが難しいという課題があった。QT延長は自動判定だけに頼らず、再確認して判断する方針が示された。心拍数による補正法の使い分けが整理された。また、ST上昇は健康でも異常のように見えるケースがあり、判定の考え方が示された。

 さらに、今回の改訂では医療の進歩を踏まえた内容の見直しも行われた。

 一つには、生まれつき起こりやすい危険な不整脈や心筋の病気について、より正確な診断が可能となり、治療の考え方も進歩している。肺の血管に強い負担がかかる病気である特発性肺動脈性肺高血圧症も、治療法が発展してきた。

 また、生まれつきの心臓病である「ファロー四徴症」や、心臓病に対する手術である「フォンタン術」後の合併症への対応も整理された。

 このほか全身の血管に炎症を引き起こす「川崎病」の後に冠動脈に異常が残る場合の管理についても、新しい方針が示されている。

地域格差の改善も課題に

心電図波形やバイタルデータを表示したデジタル医療ダッシュボードのイメージ。
デジタル化された医療データ管理画面のイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 今回の改訂では、学校心臓検診の「運用の質」を高めるための考え方も整理された。
  • 全国調査や2020年の委員会調査で、心電図検査の実施状況に地域差が大きく、判読体制・精度管理の標準化が十分でないこと、抽出率や判読体制にも差があることが示された。
  • 学校での心停止データから、女子がPAD(公共アクセス除細動)を受けにくい傾向が示され、救助時の躊躇を減らす教育の重要性や、心電図のデジタル化・遠隔判定など医療DXに合わせた将来像が提示された。

 学校心臓検診の運用の質についても考え方がまとめられた。

 全国調査では、心電図検査の実施状況に地域差が大きく、判読体制や精度管理の標準化が十分でない実情がある。2020年の委員会調査でも、地域によって抽出率や判読体制に差があることが示された。

 また、学校で起きた心停止のデータでは、女子が男子より公共アクセス除細動(PAD)を受けにくい傾向が示され、救助時の躊躇を減らす教育(服をすべて脱がさずともパッド装着は可能、など)が重要だと整理された。

 今後、心電図検査のデジタル化を行い、遠隔で判定できるようにするなど、医療DXの流れにも合わせていく将来像も示された。

参考文献

2025 年JCS/JSPCCSガイドライン フォーカスアップデート版 学校心臓検診
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2025/03/JCS2025_Iwamoto.pdf

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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