乳がんのリスクを、良性の乳腺疾患の段階から見分けられる可能性があることが分かった。
乳房の組織を支える部分に現れる変化が、将来の乳がんの発症や経過の悪化と関係していた。
米国国立衛生研究所(NIH)の研究グループが2025年5月に発表した。
良性病変の段階から分かる
鏡を見ながら乳房の変化を確認するセルフチェックのイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 乳房の組織を支える「間質」の乱れが、進行しやすい乳がんと関係する可能性が調べられた。
- 最近は、がん細胞だけでなく、その周りの環境も重要だと考えられるようになっている。
- 研究では、機械学習を使って「間質」の細かな変化を解析した。
これまで乳がん研究では、主にがん細胞そのものの特徴が調べられてきた。
一方、報告によれば、最近では、がん細胞のまわりにある組織や細胞など、周辺の環境も重要だと考えられるようになっている。
今回の研究は、乳房の組織を支える部分である「間質」に注目し、その乱れが進行しやすい乳がんと関連する可能性が検証された。
研究では、健康な乳房組織4023検体、良性乳腺疾患974検体、周辺組織に広がった乳がん4223検体を対象に、機械学習を使って乳房の組織を支える部分「間質」の細かな変化を調べた。
予後予測や再発リスク評価にも広がる可能性
脇の下から胸の周辺を触れて確認するセルフチェックのイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 間質の乱れが大きい人は、進行しやすい乳がんになりやすい傾向がみられた。
- すでに乳がんがある場合も、間質の乱れが大きいほど病状が重くなりやすかった。
- 比較的低コストで調べやすく、予防や治療方針を考える材料になる可能性がある。
その結果、若いこと、2人以上の出産歴、黒人であること、肥満、家族歴といった、これまで進行しやすい乳がんと関係するとされてきた要因があると、健康な乳房組織でも間質の変化が認められやすいことが分かった。
研究グループは既に知られているリスク要因が、乳房の組織を支える部分である「間質」に共通した変化を起こしている可能性があるとみている。
さらに、良性乳腺疾患の女性では、間質の乱れが大きい場合、乱れがほとんどない場合に比べて、周辺組織に広がった乳がんを発症するリスクが高く、発症までの期間も短い傾向が見られた。
また、周辺組織に広がった乳がんの女性では、間質の乱れが大きいほど、より病態が悪化しやすく、生存率も低下しやすいという関連性が認められた。
特に最も一般的な「エストロゲン受容体陽性乳がん」で、こうした関係が目立った。
研究グループは、慢性炎症や創傷治癒の過程が、この間質の乱れに関与している可能性にも言及している。
今回の指標は比較的低コストで調べることができるので、予防や治療を考える際の手掛かりとなる可能性がある。生活習慣の改善や抗炎症薬の活用によって、こうした組織変化を抑えられるかどうかは、今後の検証課題になる可能性がある。
良性疾患の段階から、乳がんのリスクを調べるなどの新しい方法として期待される。