大腸がん検診の便潜血検査について、採便回数を2回法から1回法へ見直す案が厚労省の第46回「がん検診のあり方に関する検討会」(2026年3月23日)資料で示された。
同検討会で了承され、読売新聞によると、厚労省は2026年度に関連指針を改正し、2027年度から1回法に変更する予定だ。以下、同検討会の資料を掘り下げる。
より受けやすい検診へ
大腸がん検診で使用する提出書類と検体容器。2回法から変わる方向に。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 国立がん研究センターのガイドライン2024年度版で、便潜血検査の免疫法は引き続き推奨グレードAと評価された。
- 現行指針の基本枠組みは維持しつつ、採便回数は1回法と2回法のどちらも可能と整理された。
- システマティックレビューでは、免疫法の1回法と2回法で検査精度に明確な差は示されなかった。
国立がん研究センターの「有効性評価に基づく大腸がん検診ガイドライン2024年度版」で、便潜血検査免疫法が引き続き推奨グレードAと位置づけられた。その上で、採便回数は1回法でも2回法でも可能と評価された。
現在の国の指針では、大腸がん検診は40歳以上を対象に年1回、問診と便潜血検査で実施することとされている。
今回の検討会資料でも、この基本的な枠組みは保たれている。一方で、採便回数については、最新のガイドラインの評価を踏まえ、見直しの余地があると整理された。
見直しの根拠となったのは、便潜血検査免疫法の1回法と2回法を比較した科学的知見だ。
国立がん研究センターは、1946年から2020年5月22日までに報告された便潜血検査(化学法・免疫法)の感度・特異度が検討された文献を抽出し、35文献を統合してシステマティックレビューを実施した。システマティックレビューは、複数の論文を総合的に分析する手法のこと。
また、便潜血検査には、便に含まれる血液成分を化学反応で調べる「化学法」と、ヒトのヘモグロビンに反応する抗体を用いて調べる「免疫法」がある。化学法は食事や薬の影響を受けやすい一方、免疫法は大腸からの出血をより反映しやすく、現在、公的な対策型検診では免疫法が主流となっている。
免疫法では、便1g中にどれくらいのヘモグロビンが含まれていれば陽性と判断するかという基準値ごとに、便を1回採る方法と2回採る方法の検査精度を比較した。
その結果、便1gあたり10~30μgのどの基準値でも、両者に明確な差はなかった。現在の研究結果からは、採便回数を1回に減らしても、検査精度がはっきり悪くなるとは示されていない。
提出率向上へつなげられる可能性
便検査に使用する採取キットの一式。今後、2本から1本になることに。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 1回法は受診者の負担軽減に加え、検体提出率の向上につながる可能性がある。
- 2014年の研究では、免疫法の検体提出率は1回法43.3%、2回法39.6%で、1回法が有意に高かった。
- 検討会資料では採便は1回法へ見直す一方、検診間隔は引き続き年1回を維持する方向が示された。
今回の整理で注目されるのは、受診者の負担を減らせるだけでなく、検体を出してもらいやすくなる可能性がある点だ。
資料に掲載された2014年の研究では、免疫法を使って比較した結果、検体の提出率は1回法で43.3%、2回法で39.6%となり、1回法のほうが有意に高かった。採便回数を減らすことで、受診者が検査を完了しやすくなる可能性がある。
これを受けて、検討会資料の「対応(案)」では、1回法と2回法で進行腫瘍性病変(Advanced Neoplasia)や大腸がんを見つける精度に統計学的な差は示されておらず、1回法のほうが受診率の向上も期待できるとして、検査を1回法に変更する案が示された。より多くの住民が検査を完了しやすい仕組みに見直そうという考え方だ。
一方、検診の間隔については慎重な判断が示された。ガイドライン2024年度版では、検診間隔を1年から2年に延ばすことも可能と評価されたが、検討会資料では、免疫法で1年ごとと2年ごとの死亡率減少効果を直接比較した研究はないと説明している。
その上で、化学法を対象としたメタ解析では、1年ごとの検診のほうが2年ごとの検診より大腸がん死亡を有意に減らしたとされており、対応案では検診間隔を引き続き「1年に1回」とする方向が示された。
今回の見直し案は、便を採る回数は1回に減らして受けやすくする一方で、検診を受ける間隔は変えずに維持するという、現実的な調整といえる。
便潜血検査は大腸がん検診の入口に当たるため、その手間を減らせば、検体未提出を減らせる可能性がある。
今後、大腸がん検診の運用が見直される見通しだ。