コラム

DWIBSは、PET検査にどこまで迫ったのか?

1067人のメタ解析でがん検出能を比較、感度はほぼ同水準 連載「DWIBSという検査」③

白い検査室に設置された大型の画像診断装置と検査台。
がんの発見や精密検査では、目的に応じてCTやMRIなどの画像検査が選択される。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 引き続き連載でDWIBS(ドゥイブス)について見ていく。

 前々回と前回では、DWIBSが乳房だけでなく、全身のがんや転移、リンパ節病変を探すMRI技術として研究されてきたことを見た。では、この方法は、がんの全身検索で広く使われてきたPET検査(PETとCTを組み合わせたPET/CT)と比べて、どの程度の力を持つのだろうか。

 2014年に欧州の放射線医学の専門誌に掲載された論文では、すでにDWIBSを含む「全身拡散強調MRI」と、全身のPET検査(PET/CT)を比較した研究を集め、原発性および転移性悪性腫瘍の検出性能が検討された。ここから、DWIBSを含む全身拡散強調MRIは、PET検査に近い良好な診断性能を示すことが報告された。

PET検査と比べてDWIBSはどこまで使えるのか

大型の画像診断装置の中で、検査台に横たわって検査を受ける患者。
全身を対象とした画像検査は、がんの有無や広がりを調べる手段の一つとして用いられる。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • DWIBSは拡散強調画像を応用し、がんなどで水分子の動きが制限される場所を見つけやすくする。
  • 高信号に見える場所がすべてがんとは限らず、良性病変や正常組織も目立つことがある。
  • 2014年の研究では、DWIBSを含む全身拡散強調MRIとPET検査の診断性能が13研究で比較された。

 DWIBSは、MRIの「拡散強調画像」を応用した検査法だ。体の中の水分子の動きに注目し、がんなどで水分子の動きが制限される場所を見つけやすくする。がんでは細胞が密に集まることがあり、その場所では水分子が自由に動きにくくなる。そのため、拡散強調画像では病変が目立って見える場合がある。

 前回見た2008年の論文では、DWIBSの特徴として、自然に呼吸したまま撮影できること、脂肪など背景の信号を抑えることで病変が浮かび上がるように見えること、全身を見やすい画像として示せることが整理されていた。

 一方で、DWIBSで高信号に見える場所がすべてがんとは限らず、膿瘍(のうよう)などの良性病変や正常な組織も目立つことがある。そのため、単独で診断を確定する検査ではなく、通常のMRI、CT、PET、内視鏡、病理検査などと組み合わせて判断する必要があるとされていた。

 こうした特徴と限界が見えてくると、次に問題になるのは、実際のがん診療で広く使われてきた検査と比べて、どの程度役立つのかという点である。特に、全身のがんや転移を調べる検査としては、PET検査が重要な比較対象となる。

 DWIBSが2004年に報告されてから約10年が経過した2014年の時点で、既にPET検査との比較がまとめられていた。今回の研究は、DWIBSだけを対象にしたものではないものの、DWIBSに代表される全身の拡散強調画像を撮影するMRI(以下、全身拡散強調MRI)が、PET検査と比べてどの程度の診断性能を持つのかを整理したものである。

 最終的に解析対象となったのは13研究、計1067人。「感度」「特異度」「ROC曲線下面積」などが計算された。

 感度は、がんがある場合に検査で陽性と判定できる割合。特異度は、がんがない場合に陰性と判定できる割合だ。ROC曲線下面積は、検査の総合的な診断性能を示す指標で、1に近いほど診断性能が高いと考えられる。

 この研究は、DWIBSなどの全身拡散強調MRIが、PET検査にどこまで迫るのかを数字で確かめたものといえる。

感度はほぼ同等、通常MRIとの組み合わせが鍵に

医療従事者が複数のモニターに表示された脳や胸部の画像診断データを確認している。
画像診断では、撮影された画像を専門医が確認し、病変の有無や追加検査の必要性を判断する。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 全身拡散強調MRIの感度は約90%で、PET検査とほぼ同じ水準だった。
  • 特異度は全身拡散強調MRIが約95%、PET検査が約98%で、PET検査がやや高い可能性が示された。
  • DWIBSは病変を目立たせる一方、場所や臓器との関係を判断するには通常MRIとの組み合わせが重要になる。

 結果として、全身拡散強調MRIは、がんの原発巣や転移を見つける力で、PET検査と大きく変わらない水準にあることが示された。検査全体の診断性能を示す指標では、全身拡散強調MRIが0.966、PET検査が0.984で、統計的に明らかな差は認められなかった。

 特に、がんがある場合に見つけられる割合である「感度」は、全身拡散強調MRIが約90%、PET検査も約90%で、ほぼ同じだった。つまり、がんの有無を拾い上げる力という点では、全身拡散強調MRIはPET検査にかなり近い性能を示したといえる。

 一方で、がんではないものを正しく「がんではない」と判断する力である「特異度」は、全身拡散強調MRIが約95%、PET検査が約98%だった。差は大きくないものの、がんではない病変を除外する点では、PET検査の方がやや優れている可能性がある。これは、DWIBSでは炎症や良性病変、正常な組織も目立って見えることがあるという、前回見た注意点ともつながる結果である。

 研究によって結果に差が出る理由も検討された。重要なのは、DWIBSだけで判断したのか、それとも通常のMRI画像も組み合わせて判断したのかという点である。DWIBSは病変を目立たせることに強みがある一方で、その場所がどの臓器にあるのか、周囲とどう関係しているのかを知るには、通常のMRI画像も必要になる。

 そのため、DWIBSを単独で見るよりも、他のMRI画像と組み合わせた方が、診断性能が高まる可能性がある。これは前回見た、DWIBSは「病変の候補を浮かび上がらせる検査」であり、診断確定には他の情報との組み合わせが重要だという考え方とも一致する。

 今回の研究は、DWIBSを含む全身拡散強調MRIがPET検査に近い性能を示す一方で、より確かな評価には、さらに質の高い比較研究が必要であることも示している。

 DWIBSの大きな利点は、放射線被ばくを伴わずに全身を調べられる可能性があることだ。今回の研究は、DWIBSを含む全身拡散強調MRIが、PET検査と比較される検査として早い段階から注目されていたことを示している。

 引き続きDWIBSに関する論文を見ていく。

参考文献

Li B, Li Q, Nie W, Liu S. Diagnostic value of whole-body diffusion-weighted magnetic resonance imaging for detection of primary and metastatic malignancies: a meta-analysis. Eur J Radiol. 2014 Feb;83(2):338-44. doi: 10.1016/j.ejrad.2013.11.017. Epub 2013 Dec 4. PMID: 24355655.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24355655/

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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