コラム

がんの「土壌」を調べる新しい選択肢

5-ALAを生かして「見えにくい変化」を予防につなげる、先制医療推進機構の関連講演から

ALAを用いた光線医療に関する講演会で、井上啓史氏が登壇している様子。
「ALAを用いた光線医療」について講演する、高知大学医学部長で泌尿器科学講座教授、光線医療センターセンター長の井上啓史氏。

 PREVONOの運営会社であるプリベントメディシンが関係する講演会が2026年4月に開催され、新しいがんリスク検査について話を聞いた。

 講演会では、「がん予防・早期発見は新時代へ」をテーマに、がんの早期発見や、予防にかかる費用をまかなう共済の考え方などが取り上げられた。

 この記事の内容は、PREVONOの運営会社であるプリベントメディシンと関連する組織の一つ、先制医療推進機構が主催した講演会に基づき、また、講演会で扱われた検査や関連サービスは、冒頭の通りPREVONO運営会社であるプリベントメディシンの事業と関係している。その前提を明らかにした上で、その講演会で述べられた5-ALA(5-アミノレブリン酸)を用いた検査が持つ可能性について、筆者の考えたことについて述べていく。

 今回、特に関心を持ったのは、5-ALAを使って、がんになりやすい状態、いわば「土壌」の状況や、画像では見つかりにくい早期の変化を捉える考え方だった。

 講演では、がんを発症していない人を対象に発症を防ぐ「一次予防」よりさらに前の段階として、いわば「ゼロ次予防」の考え方で高リスクの人を見つけ、追加検査や予防行動につなげる発想が示された。検査結果をきっかけに自分のリスクを知り、必要な検査や生活習慣の見直しにつなげること、それはどういうものだろうか。

医療取材では以前から耳にする「5-ALA」

膀胱内視鏡検査と膀胱内の病変を示した模式図。
膀胱内視鏡による検査・診断を示すイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 5-ALAは、医療や健康分野で以前から研究・活用が進められてきた成分である。
  • がんとの関係では、特に光線力学診断などで医療現場への応用が進んできた。
  • ただし、診断技術としての保険適用と、がんリスク検査そのものの位置づけは分けて考える必要がある。

 講演で取り上げられた「5-ALA」という成分自体は、医療や健康分野を取材していると、以前から耳にする機会があった。

 もともと5-ALAは、日本企業であるコスモ石油が研究を進めてきた成分として知られている。その後、SBIグループが5-ALA事業に加わり、医薬品や健康食品などの分野で用途が研究されてきた。

 医療の分野では、がんとの関係で研究されてきた。今回の講演会に登壇した、高知大学医学部長で、泌尿器科学講座教授、光線医療センターセンター長の井上啓史氏は、長く5-ALAを用いた光線医療について研究に取り組んできた。講演テーマは「最先端の癌治療~ALAを用いた光線医療~ 光による癌のスクリーニング! 診断! そして治療!」であった。

 その中で、確かに5-ALAは、新しいがん医療につながり得ると感じた。分かりやすかったのは、5-ALAを使って、がんを「光らせて見つける」という点で、それが実用化に向けて実績を上げていることだ。

 講演では、膀胱がんを例に、尿道から内視鏡を入れて膀胱の中を観察しながら、通常の白色光では分かりにくい病変を、5-ALAを用いた光線力学診断(PDD)によって見つけやすくする考え方が示されていた。

 膀胱がんの治療では、内視鏡で膀胱の中を見ながら、がんを削り取る経尿道的膀胱腫瘍切除術(TURBT)が行われる。ただ、通常の光では、どこまでががんなのがか見えづらい。これを5-ALAを応用して、がんを光らせることで、小さな病変や、がんの広がりが見えやすくする。そうして手術で取り残す可能性を減らせる。実際、スライドでは、5-ALAを用いたPDD補助下のTURBTでは、術後5年の無再発率が66.7%だったのに対し、白色光で行う従来法では40.4%と示されていた。

 5-ALAを用いた膀胱がんの診断技術は医療現場にも取り入れられており、保険診療で用いられる場面がある。一方で、ここでいう保険適用は、内視鏡を使ってがんを光らせて確認する診断技術についての話。今後、可能性があるのは、5-ALAを用いたがんリスク検査、「ALAPDS(ALA-Photo-Dynamic Screening、5-ALAを利用した光線力学的スクリーニング)検査」で、こちらは保険適用されるものではないが、有望と見られた。

5-ALAで「がんになりやすい状態」をどう見るのか

講演会でマイクを前に話す井上啓史氏。
ALAを用いた光線医療について解説する井上啓史氏。
  • 5-ALAは、がん細胞にポルフィリン関連物質がたまりやすい性質に着目した診断や検査に応用されている。
  • ALAPDS検査は、尿中のポルフィリン関連物質を測り、がんに関連する代謝変化の可能性を探る検査である。
  • がんの有無を確定するものではなく、画像では見えにくい早い段階の変化やリスクを考える手がかりとして位置づけられる。

 ALAPDS検査を理解する上で重要なのが、がん細胞の代謝だ。5-ALAは、体の中にも存在するアミノ酸の一種に当たる。体内に入った5-ALAは、細胞の中でいくつかの段階を経て、ポルフィリン関連物質に変わる。正常な細胞では、この物質はさらに別の物質へと変わる。

 一方、がん細胞では、この代謝の流れが通常とは異なり、ポルフィリン関連物質がたまりやすいとされる。光線力学診断(PDD)は、この性質を利用して、がんの部分を赤く光らせる技術だ。

 前述の「ALAPDS検査」も、この考え方の延長線上に位置づけられる。ただし、PDDのように光を当てて直接がんを見つける検査ではない。尿の中に出てくるポルフィリン関連物質を測ることで、体の中でがんに関連する代謝の変化が起きていないかを見ようとする発想だ。

 ALAPDS検査は「尿の中にがん細胞があるか」を直接調べるのではなく、尿に出てくる成分を通じて、体の中にがんを疑う変化や、がんになりやすい状態がないかを推測する検査と考えると分かりやすい。講演で説明されたのは、細胞のがん化もつながる異常な細胞は常に発生しており、通常であれば、免疫細胞などによって排除されるが、がんになりやすい状況では、がん細胞を排除しきれずに、増加していくということだ。

 ALAPDS検査は、数値が高いからといって、がんがあると決まるわけではない。数値が低いから絶対に安心というわけでもない。それでも、画像検査ではまだ見つかりにくい段階で、がんに関連する代謝の変化や、がん細胞が増えやすい状態を捉える手がかりになる可能性がある。いわば「ステージ0」に近い段階の変化を考える補助線になり得る点に、予防医療の中での意味があると感じた。

リスクを知り、次の行動につなげる

チェックマークの入った白いキューブの中に、注意マークの黄色いキューブが並ぶ様子。
リスクを示すイメージ。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 5-ALAを用いた検査は、結果を見て終わるものではなく、次の検査や予防行動につなげてこそ意味がある。
  • リスク検査には不安や過剰受診につながる可能性もあるため、結果の受け止め方が重要になる。
  • 精密検査に進みやすい仕組みや費用面の支援と組み合わせることで、早期発見を支える選択肢になり得る。

 こうしたリスクを察知する仕組みを、うまく生かすことができれば、がん予防は一歩進められる可能性があると感じた。

 画像検査などで、まだはっきり見えない段階で、体の中でがんに関連する変化が起きている可能性を捉えられるなら、より早い段階で対策を考えられる。

 もちろん、リスクを拾い上げる検査には、過剰な受診や検査、無用な不安につながる恐れもある。数値が高いからといって、必ずがんがあるわけではない。反対に、数値が低いから絶対に安心というわけでもない。そのため、検査結果をどう受け止め、どの追加検査を受け、どのような予防行動につなげるかが重要になる。

 講演会では、検査でリスクが示された後に、精密検査へ進みやすくする仕組みとして、予防費用保障付き共済についても説明があった。共済の制度そのものについては別途コラムで扱いたいが、このような利用しやすい仕組みと、デメリットを抑える方法を取り入れながら、がんの予防をよりやりやすくすることだろう。

 例えば、リスクの評価結果をきっかけに、画像検査、内視鏡検査、生活習慣の見直しなど、次の行動につながる可能性がある。5-ALAを用いた検査には、がんの早期発見や予防行動を支える利用価値があると感じた。

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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