日常診療で使われる心電図をAIで解析し、まだ診断されていない「僧帽弁逆流」を見つける手掛かりとする新たな方法が米国で認可された。
米テンプスAI(Tempus AI)は2026年9月、標準的な12誘導心電図から、中等度または重度の僧帽弁逆流に関連する兆候を検出する「Tempus ECG-MR」について、米食品医薬品局(FDA)の認可を取得したと発表した。
症状が乏しい僧帽弁逆流
12誘導心電図に含まれる情報をAIで読み取り、心臓弁膜症の兆候を拾い上げる取り組みが進んでいる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- 僧帽弁逆流は初期に症状が乏しいこともあり、進行するまで診断されない場合がある。
- Tempus ECG-MRは、一般的な安静時12誘導心電図をAIで解析し、中等度または重度の僧帽弁逆流に関連する特徴を検出する。
- 対象は65歳以上で、冠動脈疾患、高血圧、肥満、糖尿病などの心血管リスクや心疾患を疑う症状がある人。
僧帽弁逆流は、心臓の左心房と左心室の間にある「僧帽弁」が十分に閉じず、血液が逆流する心臓弁膜症の一つ。初期には症状がないこともあり、息切れなどが現れても他の病気と区別しにくいため、進行するまで診断されない場合がある。
今回認可されたTempus ECG-MRは、医療機関で記録した安静時の12誘導心電図をAIで解析する。中等度または重度の僧帽弁逆流に関連する特徴があるかどうかを判定し、結果を二つの区分で示す。
対象となるのは65歳以上で、冠動脈疾患、高血圧、肥満、糖尿病などの心血管リスクがある人や、息切れ、胸痛、足のむくみなど心疾患を疑う症状がある人だ。既に中等度または重度の僧帽弁逆流と診断されている患者や、僧帽弁の治療を受けたことがある患者は対象外となる。
一般的な心電図は心臓の電気的な活動を記録する検査だが、Tempusは、通常の心電図には従来十分に活用されてこなかった情報が含まれており、AIによって心血管疾患に関わる兆候を読み取れる可能性があるとしている。
画像検査など精密検査につなげる
AIによる心電図解析は、僧帽弁逆流が疑われる患者を精密検査につなげるための補助として使われる。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
- Tempus ECG-MRは心電図だけで僧帽弁逆流を確定診断するものではなく、精密検査が必要な患者を拾い上げるために使う。
- AIの結果は、心電図や症状、病歴、ほかの検査結果と合わせて医師が判断し、必要に応じて画像検査などにつなげる。
- 広く使われている心電図から見つけにくい弁膜症の兆候を捉えることで、より早い精密検査につながる可能性がある。
Tempus ECG-MRの役割は、心電図だけで僧帽弁逆流を確定診断することではない。
AIが中等度または重度の僧帽弁逆流に関連する兆候を検出し、詳しい検査が必要な患者を見つけるために使う。
結果は、元の心電図や患者の症状、病歴、ほかの検査結果と合わせて医師が判断する必要がある。継続的な患者の経過観察に使うものではなく、ペースメーカーを用いて心臓が動いている場合の心電図なども対象外となる。
僧帽弁逆流の詳しい評価には、心臓の構造や血液の流れを確認する画像検査などが必要になる。症状が乏しい段階では見つかりにくい患者を、普段から広く行われている心電図から拾い上げられれば、必要な精密検査へ早くつなげる手掛かりになる可能性がある。
Tempusによると、今回の製品は同社にとって4つ目のFDA認可済み心電図AI製品となる。心電図という一つの検査から、不整脈や心機能、肺血管、心臓弁膜症など、複数の心血管疾患に関わる情報を引き出す取り組みを進めている。
普段の診療で広く使われる心電図から、これまで見つけにくかった疾患の兆候を拾い上げ、必要な精密検査につなげる新たな使い方として注目される。