MRIを使って肝臓や心臓など複数の臓器の状態を数値で示し、病気の予防や治療後の経過観察に役立てる取り組みが、シンガポールの医療機関で始まった。
英国の医療技術企業パースペクタム(Perspectum)は2026年10月、シンガポールの医療機関が同社の定量MRI技術を、予防医療やがん治療後の長期的な健康管理に導入したと発表した。
1回のMRIで肝臓・心臓・膵臓・腎臓を数値で評価
MRI検査を受ける患者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 診察や血液検査などに定量MRIの数値を組み合わせ、症状が出にくい生活習慣病や肝臓の異常などの評価に役立てる。
- 1回のMRIで、肝臓の脂肪や鉄の蓄積、体脂肪・筋肉量、心臓・膵臓・腎臓を含む複数の臓器の状態を評価できる。
- 肝臓の病気の状態や代謝リスクなどを数値化し、病気のリスク評価や治療への反応、全身の健康状態の把握につなげる。
生活習慣に関わる病気や肝臓の異常は、初期には症状がほとんどなく、進行するまで気づきにくいことがある。そこでシンガポールの医療機関タッカー・メディカル(Tucker Medical)では、診察や血液検査、遺伝情報などに加えて、MRIから得られる数値を組み合わせて健康状態を評価する。
導入されたのは、「カバースキャン(CoverScan)」「リバーマルチスキャン(LiverMultiScan)」「ボディー・コンポジション(Body Composition)」という3つの検査および評価だ。いずれも1回のMRI検査で実施でき、造影剤は使わない。
リバーマルチスキャンは、肝臓の病気の活動性や脂肪、鉄の蓄積などを数値で評価する。病気の状態の把握やリスク評価、今後の見通し、治療への反応を追う際の参考になる。
ボディー・コンポジションでは、体脂肪や筋肉量をMRIで測定する。体重だけでは分かりにくい脂肪と筋肉のバランスを把握し、代謝や身体の状態を評価する手掛かりにする。
カバースキャンはさらに、肝臓だけでなく、心臓、膵臓、腎臓まで一度に評価する。複数の臓器の状態を一つのレポートにまとめることで、全身の健康状態や代謝リスクを総合的に見ることを目指す。
症状や血液検査だけでなく「臓器で何が起きているか」を追う
MRI検査を受ける患者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
- 定量MRIを診察や血液検査、遺伝情報などと組み合わせ、病気のリスクや健康状態の変化を継続的に確認する。
- 予防医療に加え、がん治療後の患者にも活用し、臓器や体組成の変化、治療や介入の効果を数値で追跡する。
- 電離放射線や造影剤を使わないため、長期的に繰り返し健康状態を確認する検査としての活用が期待される。
タッカー・メディカルでは、この定量MRIを「アサップ(ASAP)」と呼ぶ予防医療の仕組みの中で活用する。診察、血液検査、遺伝情報などと組み合わせ、病気のリスクを早い段階で捉えたり、健康状態の変化を継続的に確認したりする。
対象は予防医療だけではない。がん治療を終えた患者の長期的な健康管理にも使い、治療後に臓器や体組成がどのように変化しているかを追う。
タッカー・メディカルによれば、心臓や代謝のリスクを管理する場合も、がん治療後の患者を診る場合も、「何が変化しているのか」「治療や介入が効果を上げているのか」を確認することが重要と説明。定量MRIを使えば、症状や一度の血液検査だけでなく、臓器そのものの状態を数値で追跡できるとしている。
また、MRIはX線やCT検査のように電離放射線を使わず、今回の検査では造影剤も必要としない。繰り返し健康状態を確認する目的で使いやすい点も特徴になる。
定量MRIを予防医療や治療後の経過観察に組み込み、臓器や体組成の変化を長期的な健康管理にどこまで役立てられるかが注目される。