研究

新生児のSMA、唾液で出生当日にスクリーニング 1.5時間以内に判定する新しい方法を検証

1312人の新生児で検証、偽陽性ゼロ 従来検査を補う「早期判定」の仕組みへ

母親が白い服を着た新生児を腕の中で抱いている。
出生当日にSMAリスクを把握し、精密検査や治療へ早くつなげる仕組みが期待される。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)

 重い運動障害につながる遺伝性疾患「脊髄性筋萎縮症(SMA)」を、出生直後の唾液からSMAのリスクを調べる新たなスクリーニング方法の実証結果が発表された。

 ベッドサイドで検査でき、出生後1.5時間以内にリスクを判定できるという。

 クライフ(Craif)と名古屋大学などの研究グループが、第53回日本マススクリーニング学会学術集会で2026年9月に発表。クライフが10月に研究成果を報告した。

治療は「症状が出る前」が重要

母親が新生児を抱き、顔を近づけて見つめている。
唾液を使い、出生後1.5時間以内にSMAリスクを判定する新しいスクリーニング方法が検証された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 脊髄性筋萎縮症(SMA)は運動神経が失われる遺伝性疾患で、症状が出る前のできるだけ早い治療開始が重要とされる。
  • 従来の新生児スクリーニングでは結果が出るまでに時間がかかり、重症型では治療開始前に発症するケースが課題となっている。
  • 研究グループは、出生後1.5時間以内に唾液からSMAのリスクを判定できる方法を開発し、新生児1312人で検証した。

 脊髄性筋萎縮症(SMA)は、体を動かすために必要な運動神経の細胞が失われていく遺伝性の病気だ。治療薬が登場しているが、一度失われた運動神経は元に戻らないため、症状が出る前のできるだけ早い段階で治療を始めることが重要とされる。

 現在の新生児スクリーニングでは、採取した血液を検査施設に送り、結果を確認するまでに時間がかかる。クライフによると、従来の方法では検体の輸送などに1~3週間かかることがあり、重症型では約3分の1が治療を始める前に発症してしまうことが課題だという。

 そこで研究グループは、唾液を使い、出産した医療機関でそのまま調べられる新しい検査方法を開発した。出生後1.5時間以内にSMAのリスクを判定できるのが特徴だ。

 今回の研究では、保護者の同意を得た新生児1312人から唾液と臍帯血を採取した。唾液を新しい方法で調べ、その結果を、対照となる臍帯血を使った「MLPA法」の検査結果と比較した。

1312人で結果が全て一致、偽陽性はゼロ

母親に抱かれた新生児が、手をそっと握られている。
出生直後の新生児で、脊髄性筋萎縮症(SMA)のリスクを早く調べる方法が検証された。画像はイメージ。(出典:Adobe Stock)
  • 新生児1312人の検証では、唾液による検査と臍帯血による検査の結果が全例で一致し、偽陽性はゼロだった。
  • 過去のSMA患者検体を使った別の評価では感度100%を示し、看護師や助産師でも短時間で操作できることが確認された。
  • 研究グループは、従来の新生児スクリーニングを補い、出生直後のリスク判定から早期の精密検査や治療につなげることを目指している。

 検証の結果、1312人全員で、唾液を使った新しい方法と臍帯血による検査の結果が一致した。

 SMAではない新生児を誤って陽性とする「偽陽性」は1例もなく、特異度は100%だった。

 また、過去にSMA患者の検体を使って行った別の評価では、患者を正しく陽性と判定する感度も100%だったという。

 ただし、この感度100%は今回の新生児1312人の前向き試験ではなく、過去に得られたSMA患者検体を使った別の評価で示された結果だ。

 実際の医療現場で使いやすいかどうかも調べた。検査を専門としない看護師や助産師が操作した場合でも、主な作業にかかる時間はそれぞれ10秒未満で、手を動かす時間は合計約20秒だった。結果の判定も熟練した技師と全て一致した。

 研究グループは、今回の方法を、現在の新生児スクリーニングを補い、SMAのリスクを早く見つけて精密検査や治療につなげる仕組みとして想定している。

 SMAでは治療を始める時期が重要になる。出生当日にリスクを判定できれば、症状が現れる前の精査や治療につなげられる可能性があり、今回の研究はその仕組みを実際の産科医療で運用できる可能性を示した。

参考文献

Craif、脊髄性筋萎縮症(SMA)スクリーニングツールを用いた前向き実証試験に関する研究成果を発表〜第53回日本マススクリーニング学会学術集会にて〜(Craif)
https://craif.com/news/20261008-2

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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