研究

血液検査で「骨折リスク」がわかる?京大と沖縄科学技術大学院大学

骨粗鬆症と身体機能低下を結ぶ代謝物を解明

大腿骨頸部の構造と骨折部位を示した図
大腿骨頸部の位置と骨折しやすい部位を示した図。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 高齢者が転倒した際に骨折しやすい部位の一つである大腿骨頸部で、骨粗鬆症や歩く力の低下に関わる血液中の物質が明らかになった。

 この結果を、京都大学と沖縄科学技術大学院大学の研究グループが2026年2月に発表した。

骨と筋肉、体の衰えを血液から読み解く

大腿骨骨粗鬆症を全血メタボロームで解析した研究の概念図
大腿骨骨粗鬆症を全血メタボローム解析で評価する研究の概念図(出典:京都大学)
  • 大腿骨頸部骨折は要介護の大きな原因で、骨粗鬆症がリスクを高める。
  • フレイルやサルコペニアなど、全身の衰えが骨の弱さと関係している。
  • 血液のメタボロミクス解析で、骨・筋肉・代謝の関係を総合的に調査した。

 高齢化が進む中で、健康寿命を延ばし、要介護の状態にならないことが重要となる。そうした中で、要介護に至るきっかけとして大きな要因とされるのが転倒や骨折。特に大腿骨頸部は足の付け根にある骨で、ここを骨折すると歩くことが難しくなり、寝たきりにつながることも多い。

 こうした骨折のリスクを高める要因の一つが骨粗鬆症だ。

 骨粗鬆症は骨がもろくなる病気であるが、その背景には筋肉量の低下だけでなく、体全体の衰えが進んだ状態である「フレイル」や、筋力や動く力が弱くなる状態である「サルコペニア」も関係している。

 研究グループは、こうした心身の機能低下と骨の関係を明らかにするため、高齢女性を対象に骨密度や筋肉量、歩く力を調べた。

 さらに血液を採取し、血液中に含まれる成分をまとめて調べる「メタボロミクス解析」を行った。多くの代謝物を幅広く調べることで、骨や筋肉、体の代謝の関係を一体として捉えようとした。

骨粗鬆症と歩行低下に共通する血液の変化

採取された血液サンプルを試験管に入れて分析する様子
血液サンプルを用いた検査の様子。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)
  • 骨粗鬆症では筋エネルギー関連物質が低下し、骨分解に関わる代謝物が増加していた。
  • これらの代謝物の組み合わせにより、骨粗鬆症の判別が可能となる可能性が示された。
  • 筋機能の低下も骨折リスクに関与し、血液検査による予防・評価への応用が期待される。

 解析の結果、大腿骨頸部に骨粗鬆症がある人では、「ホスホクレアチン」など筋肉のエネルギーに関わる成分が低下していた。これに対して、骨が分解される働きに関係する「メチル化関連代謝物」は増えていた。

 こうした違いを組み合わせることで、骨粗鬆症の有無を見分けられる可能性も示された。

 さらに、ホスホクレアチンは、歩く力が落ちている人や、体の衰えが進んだフレイルの状態にある人でも少なくなっており、転倒しやすさとの関係も示された。

 このことから、骨の弱さだけでなく、筋肉の働きの低下も、骨折のリスクに深く関わっていることが分かった。

 研究グループは、血液検査で骨折リスクを調べ、予防や治療に役立てることを期待している。

参考文献

骨折リスクや歩行低下を捉える代謝産物 ―大腿骨頸部骨粗鬆症のマーカー代謝物を発見―(京都大学)

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2026-03-10-0

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

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