リスクに応じて乳がん検診を最適化
米カリフォルニア大学サンフランシスコ校などが検証、進行がんを増やさず運用可能性と確認

乳がん検診の受け方を、年齢だけで一律に決めるのではなく、一人ひとりの乳がんリスクに応じて変える「リスクベース検診」は、安全に実施でき、実際の運用も可能であることが示された。
この結果は、米カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)を中心とする研究グループが、2025年12月に発表した研究で示された。
遺伝情報、乳房濃度などから検診頻度を決める

- 研究では、年齢だけでなく、遺伝情報、乳房濃度、健康状態、生活習慣、既往歴などを組み合わせて、個人ごとの乳がんリスクを評価した。
- 参加者はリスクの高さに応じて4 समूहに分けられ、低リスク層は検診間隔を延ばし、高リスク層は年1回のマンモグラフィやMRI併用など、検診内容を変えた。
- 高リスクの層には、運動や食事の改善、リスク低減薬の検討といった予防支援も加え、一人ひとりに合わせた検診と予防の仕組みを検証した。
報告によると、乳がんは米国の女性では、皮膚がんに次いで多いがん。早期発見のため、米国ではこれまで、年齢に応じた頻度でマンモグラフィ検診を受けることが勧められてきた。実際、乳がん検診の方法は長年、主に年齢を基準に組み立てられていた。
しかし、乳がんになるリスクは一人ひとりで大きく異なる。家族歴だけでは把握できない遺伝的な要因もあり、同じ年齢でも、適切な検診の頻度が同じとは限らないという課題があった。
今回、研究グループはこの課題に対し、年齢だけでなく、遺伝情報や体の状態、乳房濃度、健康状態、生活習慣、これまでにかかった病気などを基に、一人ひとりに合った検診計画を立てる方法を調べた。
2016年から、全米50州で参加者を集め、40~74歳の女性2万8372人を無作為に「リスクベース検診グループ」と「年1回マンモグラフィグループ」に分け、両者を比較した。
リスクベース検診グループでは、個人のリスクを評価するために、乳がんに関連する9つの遺伝子の詳しい解析に加え、複数のDNAの違いをまとめてリスクを見積もる「ポリジェニックリスクスコア」、さらに「乳がんサーベイランス・コンソーシアム(BCSC)」のリスクモデルが用いられた。
これらの結果に基づき、リスクベース検診グループの参加者は4つの小グループに分けられた。最もリスクが低い小グループでは、40~49歳で今後5年の乳がんリスクが1.3%未満であれば、50歳になるか、リスクが1.3%以上になるまで検診を行わなかった。
平均的なリスクの小グループでは2年に1回のマンモグラフィ、高リスクの小グループでは年1回のマンモグラフィ、特に最も高リスクの小グループでは、マンモグラフィとMRIを交互に行う、より手厚い検診が行われた。
高リスクの2つの小グループには、運動や食事の改善、リスク低減薬の検討など、予防に向けた個別支援も提供された。
高リスク層ほど手厚い検診と予防対策

- リスクに応じて検診方法を変えても、ステージIIB以上の進行乳がんの発見割合は、毎年マンモグラフィを受ける方法に劣らなかった。
- マンモグラフィの総件数は減った一方、生検率の明確な低下は確認されなかったが、検査やMRIは高リスク層ほど多く行われ、必要な層へ重点配分する形となった。
- 遺伝子変異をもつ女性の3割が家族歴を申告しておらず、家族歴だけでは見つけにくい高リスク者を早期に把握できる点でも、リスクベース検診の意義が示された。
このようにリスクに応じて検診方法を分けたところ、重要な評価項目の一つである「ステージIIB以上の進行した乳がん」が見つかる割合は、リスクベース検診グループでも、毎年マンモグラフィを受けたグループに比べて劣らなかった。
実際、10万人を1年間追跡した場合の発生率は、リスクベース検診グループで30.0、毎年マンモグラフィを受けたグループで48.0だった。この結果からは、一人ひとりに合わせて検診の頻度や方法を変えても、進行がんが増えることはなかったと考えられる。
一方で、マンモグラフィの総件数はリスクベース検診グループで少なかったものの、組織を採取して行う生検の実施率を明確に減らせる効果は確認されなかった。ただし、がん検出率、生検率、マンモグラフィ実施率、MRI実施率はいずれもリスクが高いグループほど上昇しており、限られた医療資源を、より必要性の高い層へ重点配分する方向性が示された。
また、研究グループが注目しているのは、乳がんリスクを高める遺伝子変異が見つかった女性のうち30%が、家族歴を申告していなかった点だ。遺伝的なリスクも調べるリスクベース検診は、従来の仕組みの中でも確かめられる家族歴だけでは判別できない高リスク者を、早い段階で見つけ出せる意義が大きいという。
今回の研究は、乳がん検診を「何歳になったら毎年受けるか」という単純な発想から、「誰に、いつ、どの程度の検診と予防介入が必要か」を見極めるより精密な医療へと転換する可能性を示した。生検を減らせないという点では課題は残るが、進行がんを増やさずに高リスク者への対策を手厚くする方法の可能性が示された。
今後、さらなる研究では、より若い層も含めて、進行の速い乳がんの早期発見と予防につながる仕組みが検討されることになる。
参考文献
UCSF Study Finds a Better Way to Screen for Breast Cancer(University of California, San Francisco)
https://www.ucsf.edu/news/2025/12/431221/ucsf-study-finds-better-way-screen-breast-cancer
Esserman LJ, Fiscalini AS, Naeim A, Van’t Veer LJ, Kaster A, Scheuner MT, LaCroix AZ, Borowsky AD, Anton-Culver H, Olopade OI, Esserman J, Lancaster R, Madlensky L, Blanco AM, Ross KS, Goodman DL, Tong BS, Hogarth M, Heditsian D, Brain S, Lee V, Blum K, Kim MO, Sabacan LP, Fergus KB, Yau C, Park HL, Parker BA, Kaplan C, Rhoads KF, Eder S, Adduci K, Matthews JB, Wenger NS, Shieh Y, Hiatt RA, Ziv E, Tice JA, Eklund M. Risk-Based vs Annual Breast Cancer Screening: The WISDOM Randomized Clinical Trial. JAMA. 2026 Mar 3;335(9):763-774. doi: 10.1001/jama.2025.24784. PMID: 41385349; PMCID: PMC12701531.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/41385349/
この記事の執筆者
星良孝
PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。





