研究

CTで「胃カメラ」のような観察を再現 低線量で胃内部を立体可視化

名古屋市立大学と金沢大学、次世代胃がん検診へ新手法を開発

CT装置で検査を受ける患者と、そばで装置を操作する医療従事者
CT検査を受ける患者と、そばで装置を操作する医療従事者。画像はイメージ。(写真:Adobe Stock)

 内視鏡を挿入せずに胃の内部を立体的に観察できる「バーチャル内視鏡検査法」が開発された。胃X線検査よりも放射線量の低い検査法として開発が進んでいる。

 名古屋市立大学と金沢大学の共同研究グループが2026年3月31日に公表した。

負担の少ない胃がん検診の選択肢に

発泡剤を用いたX線CT撮影から画像処理を経て、VRゴーグルで胃内部を観察するPRVG検査システムの流れを示した図
発泡剤を用いたX線CT画像を専用ソフトで処理し、VRゴーグルで胃内部を立体的に観察するPRVG検査システムの概要。(出典:名古屋市立大学、金沢大学)
  • 胃がん検診ではバリウム検査や内視鏡検査が主流だが、体への負担や専門医不足が課題となっている。
  • 今回の新手法は、動きのある胃でもぶれにくく撮影できる高性能CTを使い、被ばくも抑えるよう工夫した。
  • 撮影した画像を3D化することで、胃の内側を「胃カメラ」のように立体的に見やすくした。

 胃がん検診では、これまでバリウムを用いた胃X線検査や内視鏡検査が主な手法として実施されている。

 しかし、バリウム検査には誤嚥や便秘のリスクがあり、内視鏡検査は身体的、心理的負担に加え、専門医の確保という課題も抱えている。今回の研究は、こうした従来法の弱点を補い、より受診しやすい検診の形を提示するものと位置づけられる。

 胃は動きが大きい上に内部に空洞を持つため、CTで鮮明に撮影するのが難しい臓器である。今回の研究では、愛知県内では2台のみとなる、最新の2管球CT装置「SOMATOM Force」を用いた。2つのX線管による超高速撮影で胃の動きによるブレを抑え、さらに胃と空気が混在する高コントラスト領域の撮影に適した技術によって、不要なX線を減らしながら被ばくも抑えた。

 加えて、撮影したCT画像を、実物に近い立体感が伝わるように3次元化する独自技術で再構成し、胃壁の質感や形状をより直感的に把握しやすくした。

低線量と高精細を両立

通常の胃内視鏡画像と、写真的仮想胃内視鏡(PRVG)画像を並べて比較した図
通常の胃内視鏡画像(左)と、写真的仮想胃内視鏡(PRVG、右)の比較。(出典:名古屋市立大学、金沢大学)
  • 低い放射線量でも、診断に使える高精細な画像を得られることが示された。
  • 胃の内面だけでなく、肝臓や膵臓など上腹部の臓器も同時に確認でき、1回の検査で得られる情報が多い。
  • 実用化されれば、遠隔診断やAI診断と組み合わせて、受診しやすい次世代の胃がん検診につながる可能性がある。

 今回の手法では、日本の診断参考レベル(DRL)14.0mGyを下回る低線量条件でも、診断に耐えうる高精細な画像を取得できることが示された。従来の胃X線検査よりも被ばくの低減を目指しながら、死角の少ない3D画像で胃壁を観察できるのが特徴となる。

 さらに、胃の内面だけでなく、肝臓や膵臓など上腹部の臓器も同時に確認できるため、1回の検査で得られる情報量が多い。

 この技術が実用化されれば、対策型胃がん検診の選択肢が広がり、受診率の向上につながる可能性がある。

 内視鏡専門医が不足する地域では、CT撮影と遠隔診断を組み合わせることで、地域差の少ない検診体制を構築しやすくなる。さらに今後はAI診断技術との融合により、見落としを減らしつつ迅速かつ高精度に読影する次世代型の検診体制への発展も視野に入る。

 名古屋市立大学医学部附属みどり市民病院では、すでに関連診療部門によるワーキンググループが立ち上がり、早期の実臨床導入に向けた取り組みが始まっている。

参考文献

CTで「胃カメラ」を再現。次世代の低線量・胃がん検診へ 愛知県唯一のX線CT専門技師と大学病院が挑む、AI時代を見据えた新画像技術(名古屋市立大学・金沢大学)
https://www.kanazawa-u.ac.jp/wp/wp-content/uploads/2026/03/20260331.pdf

星良孝

この記事の執筆者

星良孝

PRENOVO編集長。東京大学農学部獣医学課程卒。日経BPにて「日経メディカル」「日経バイオテク」「日経ビジネス」の編集・記者を担当後、エムスリーなどを経て2017年にステラ・メディックスを設立。ヘルスケア分野を中心に取材・発信を続ける。獣医師。

ARCHIVE

新着記事

関連する病気から探す

カテゴリーから探す

あなたの立場から探す

あなたの関心から探す